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28件
月光条例
著者 藤田 和日郎
ある月の青い夜。月光と演劇部の前に、おとぎばなしの住人・鉢かづき姫が、いきなり本の中から現れた。彼女は、不思議な月光でねじれてしまった「おとぎばなし」の世界をもとに戻すべく、「月光条例」を執行する人間を求めてやって来た使者だった。偶然、条例の<極印>を授かり執行者になってしまった月光は…!?
月光条例 29
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月光条例 14 (少年サンデーコミックス)
2011/07/26 22:35
藤田和日郎の描きたかったドラマはココに在る
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:muneyuki - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕は藤田和日郎さんの漫画が大好きで、
全て名作だと思うのです。
其れは全ての作品に熱い思いがあって、信念があって。
単純なエンターテイメントとして続きが読みたい、と思わせる以上に、込められたメッセージが読者に生きる力を与えてくれる作品だと思えるからです。
無論『月光条例』も藤田和日郎作品として、立派に「名作」だと思うのですが、
どうもうしとら、からくりほどの評価は得てない。
いや、僕自身、うーんこれちょっと微妙だなー、と思ってました。
思って「ました」。
『月光条例』13巻・14巻においては、主人公の過去が描かれます。
主人公・岩崎月光は青い鳥の主人公の一人「チルチル」です。
で、過去月光は、いやチルチルは、おとぎ話界の住人として「狂ってしまう」のです。
その際、チルチルは思いました。
「悲しい結末を迎える主人公の、運命を変えてやりたい」
そして、彼は『マッチ売りの少女』と出会い、
彼女の運命を、死の運命を変えることを決意するのです。
ここで、気になる作者の発言を一つ。
「マッチ売りの少女」が気に入らなかった。
なんでかわいそうな女の子がかわいそうなコトになっちまうんだよ!!
だけど本のさし絵に正拳を叩き込んでもムナしいだけだ。
だから僕はそのパンチを代理のヤツにぶちかましてもらうことにした。
うしおととら、こいつらはつまり・・・
そういうヤツらなんだ。
(小学館「うしおととら」1巻 作者コメント)
もひとつ、どん。
かわいそうな「マッチ売りの少女」が嫌いで、僕はこいつらを生み出した。
少女を助けて戦うヤツら。でも。
少女を助けるヒーローなんざ、要らないのかもしれない。
7年間、こいつらに戦ってもらってようやくわかった。
だって。少女が戦わなきゃ。
ただ雪の中、手に息を吹きかけて泣いてちゃ、だれもふりむいちゃくれないもの。
戦わなきゃ。しんどくても辛くても、自分でやんなきゃ。(まんが描くのもね。)
ああ、ああ、そういうことか。
だから自分は、「マッチ売りの少女」が嫌いだったんだ。
-背中をまるめてマッチなんてすってるんじゃねえ。-
(小学館「うしおととら」33巻 作者コメント)
藤田先生はこれまでの漫画の中で、「不条理」と「無変化」に対する怒りを叫び続けて来たのではないでしょうか。
だからこそ、同じ怒りを抱えた少年達に共感と救いがあった。
『月光条例』のこれまでの展開は、藤田漫画の伝統に沿って、そうした怒りを爆発させてきました。
でもちょっと余裕のある怒りだった。
それ故に熱さが足りないようにも見えた。
しかし、それはこの物語の本質が「怒り」ではないから。
この「マッチ売りの少女の話」が描きたかったためではないでしょうか。
ここまでの『月光条例』は、平気で感情のままに、怒りのままに、物語の大筋を変更して来たにも拘らず、
「マッチ売りの少女の話」になった途端、物語の大筋は安易に変更すべきではない、という命題が提示されます。
話が違うじゃないか!
と怒りたくなるのですが、
きちんとそれについて説明付けがされます。
それを伝え終わると、マッチ売りの少女は悲しい悲しい自分の物語の中へ帰ってしまいます。
傍から見れば、どんなに不条理で、どんなに苦しい場所にも、それなりの意味がある。
その意味が取るに足らないものか、命に代えても守るべきものなのかは当事者にしか分かりません。
物事を一義的に否定してはならない、ただ怒れば良い訳ではない、のです。
そして、チルチル=月光が天の邪鬼である事、満月を苦手とする事の理由が明かされ、
終局へと幕開けが始まります。
未だ全ての謎は明かされ切っていません。
でも、一つだけ。
この漫画はこれまでの藤田漫画と同じ様に、完結した後、一度に読み通せるようになってようやく名作として評価される。
と予言しておきます。
月光条例 17 (少年サンデーコミックス)
2012/04/28 23:03
30ページの、「下ノ畑ニ居リマス」に絶句です!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、おとぎばなしの登場人物が現実世界に現れて、本来のストーリーとは違った行動を見せる。という流れで物語が動くので、今までにもアンデルセンなど、物語の「サクシャ」が登場してはいました。でも今回は、表紙の、月光条例を執行する「センセイ」を見て、思わず「なんて掟破りな!」と思ってしまった。「月夜のでんしんばしら」、ならぬ月夜のせんせいですか。これまで古今東西のおとぎばなしを作品に取り入れながら、とうとう来ましたか。物語好きのヨワいところをぐいぐいと突いてきます。そういえば、物語が好きな人で、かのセンセイの作品を嫌い、という人には会った事が無い気がします。(本好きの友人とは、ザネリとか、あめゆきとてちて等のフレーズだけで通じるくらい)私もあまりにも思い入れがありすぎて、これ以上センセイの事を語るのは割愛したいところです。
作者の藤田さんは、デビュー初期から童話への熱い思いを語っておられ、短編の数々でもおとぎばなしや伝承への愛を表現していたし、作者あとがきなどのコメントでも、常々、名作童話とされる物語についての考察を語っていました。以前の連載作品「黒博物館スプリンガルド」でも、おとぎばなしのような伝承にからんだ少年少女の活躍を描いていて、キュレーター(学芸員)さんの造形なども本書と繋がる部分がある気がします。
そんな流れでのセンセイの登場だったので、満を持してという展開に読み手のこちらのテンションもあがってしまうのでした。更に今回登場するのは白雪姫と、謎の女性高勢露さん。白雪姫の狂気を宿した瞳が怖い。ちょっと、日本橋ヨヲコさんが描くキャラの瞳に似ている気が・・・。(関係ないけど、日本橋さんの作品「少女ファイト」の各話のタイトルにも、童話や民話が使われています。)謎の美女、ツユさんの瞳もまた印象的で、たくさんの絶望や歴史を見てきたと言う表情が怖くもあり、美しくもあり底知れない闇も感じるのでした。
赤ずきんや、シンデレラ、はだかの王様などおなじみのメンバーやエンゲキのその後も気になりますが、とりあえず今は、次の18巻でのセンセイとツユさんの行方を見守りたいと思います。
月光条例 22 (少年サンデーコミックス)
2013/05/23 22:06
月光条例の謎に迫る
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カンパチ3号 - この投稿者のレビュー一覧を見る
終章に突入したことで、富士鷹クオリティ全開です。
月光条例は読者アンケートでは低迷との事ですが、それはゴーロン星人の陰謀なので迷っている方は気にせずに1巻から(ここが重要!)最新刊までを読んでみてください。
本巻で、主人公の岩崎月光は月(厳密にいえばちょっと違うが…)に向かいます。
月ですよ!月!!
かつて、ウルトラマンAの南夕子も旅立っていったし、ドラゴンボールの兎人参化も月においてかれたし、怪獣のモチロンだって存在する月ですよ!!
私も若い頃は、ゼロムス(FF4)を倒しに月に行ったもんです…。
と訳のわからないレビューになったが、オススメします。