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【全1-5セット】善悪の屑

著者 渡邊ダイスケ

善悪の屑の全1-5をセットにした商品です。過去を背負った2人の男が担うのは「復讐の代行」。屑には屑による制裁を!「正義」の意味を問う問題作!

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読む側の人間性も試される内容と考え込んでしまう読後感

2019/03/01 07:26

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る

実写映画化に関連する騒動をニュースで知る中で、「カモ役が復讐される側になっていてどうする」といいうニュースへのコメントを読んで気になり、原作が読みたくなったのですが、有害図書認定ということで紙本が入手できず、やむを得ず電子で購入。
有害認定されたのは4巻のみらしいのですが、自主規制団体の有害認定理由を読んだとき、レビュータイトルの通り、描かれる残虐性をどう解釈するかで、その人の人間性も推し量れてしまうのではないかと空恐ろしく感じてしまう内容でした。

依頼人が主人公に依頼するに至った事件は、どれも実際に起こった事件を彷彿とさせるもので、復讐を依頼したくなる気持ちが分からないでもないと思いながら各エピソードを読み始めるのですが、カモたちが復讐の代行を終えたあと、どの依頼人も決して「爽快」ではないのです…。
もちろん、解放感を抱く依頼人もいましたが、カモの「(自ら手を下すことに対して)一生背負うことになるよ」という忠告で、依頼者に迷いや葛藤が生まれるというシーンもありました。
読者も依頼人と一緒に考えこんでしまうシーンの1つでした。
加害者に復讐をする(=代行してもらう)までは、恨みで悲しみをごまかすことができていた部分もあったのに、大切な人を失った悲しみや、二度と被害に遭う前の自分に戻れない絶望と向き合うしかなくなってしまう。
それでも、加害者の人権ばかりが保護されてのうのうと人生をエンジョイしているのが赦せない、という負のスパイラルからも逃げ出せなくて…という被害者や被害者遺族/家族の悲壮感が作品全体に漂っていると感じ、決して読後感はよくありません。

また、中盤を過ぎたあたりで同業者が登場します。その同業者の女性・加世子とカモは、自身も被害者(加世子)・被害者遺族(カモ)という背景があり、それゆえに「自らの手で復讐」と「復讐の代行」という方針の違いがあるように感じられました。
加世子がカモに発した「いかにも被害者“遺族”の発想ね」という言葉にも読み手は考えさせられてしまいます。
遺族は被害当事者ではなく、被害者の遺族であって、被害者の気持ちは想像できても知ることは絶対にできないだろうし…みたいな模索が始まってしまいました。

読み返すほどに答えがなかなか見つからない迷路に迷い込んでしまったような感覚を味わう作品です。
残虐性にばかり注目してしまうと見落としてしまう部分が多々あるんじゃないか、と思われる人の心の機微が描かれている素晴らしい作品だと思うので、有害図書認定を非常に残念に思いました。

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