商品説明
世界は「わからない」から美しい――。生命の本質は、必然と偶然の間に横たわる「偶有性」の領域に現れ、それはまた意識の謎へとつながる。私が「私」であるのは必然か偶然か? 我々は自由意志によって因果の壁を乗り越えられるのか? 偶有性と格闘することで進化した人類の叡智を繙き、「何が起こるかわからない」世界と対峙する覚悟を示す。
著者紹介
茂木健一郎 (著)
- 略歴
- 1962年東京生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。「脳と仮想」で小林秀雄賞受賞。
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紙の本
闇の中でこそ光は輝く
2010/09/30 20:39
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見難解な書のように思えるが、キーワードの「偶有性」とは、誰もが体得している「人生一寸先は闇」のこと。本書のテーマは、「だから、怖れずにその闇の中に飛び込め。その結果、自分の生命の光が輝くのだ」と鼓舞する点にあると思う。たしかに不安要因の多い人生で、闇の中に佇んで不安定要素を一つ一つ確認して取り除くような生き方もあれば、何はともあれ突き進む主義もあろうが、もう一つのキーワード「生命」に照らしてみれば、《私たちは、まず行動しなければならない。・・・向こう見ずにならなくてはならない》と云う著者の立場は強く後者を支持していることは明白だ。
その立場がより鮮明に主張されているのが、「第五章 バブル賛歌」。やがて破綻するとは分かっていても、過剰な希望を抱いてドキドキすることは《生命の一つのリズムの結果》であり、何度も崩壊するバブルを体験することこそ青春の象徴であって、《バブルがない人生などつまらないではないか》と、闇に対峙する覚悟を示している。
読み進むうちに、次第に闇の怖さが薄れ、自分のもつ生命力を信じようという気持ちに引き込まれる。だから、末尾の《愛し、憎め。夢を抱き、絶望せよ》という言葉が素直に胸に染み入るようだ。今後も「偶有性」について考察を進めてゆきたい(あとがき)という著者が、更にどこまで我々を導いてくれるのか―大いに期待したい。