商品説明
戦争に敗れ、アメリカ軍の占領下、日本国内では奇怪な事件が連発した。国鉄総裁が轢死体で発見された「下山事件」、民間飛行機「もく星」号の墜落後の隠蔽工作、昭電・造船汚職の二大疑獄事件、現職警部が札幌路上で射殺された「白鳥事件」、衝撃では「ゾルゲ事件」に劣らない「ラストヴォロフ事件」……こうした事件の捜査は、占領軍と日本側の権力筋の強権によって妨害された。多くの資料と小説家ならではの考察で真相解明しようとした金字塔的ノンフィクション。
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紙の本
黒い霧の中に蠢く魑魅魍魎の世界を、反骨の士・清張がえぐり出していく戦後昭和史ドキュメント
2004/12/08 19:18
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次大戦が終わり、米国の統治下に置かれるようになった日本。昭和20年代に起き、世間を震撼させた怪事件の性格と背後に潜むものを、松本清張が推理、検証した戦後昭和史ドキュメントである『日本の黒い霧』。
文庫の上巻にあたる本書には、「下山国鉄総裁謀殺論」「[もく星]号遭難事件」「二大疑獄事件」「白鳥事件」「ラストヴォロフ事件」「革命を売る男・伊藤律」が収録されています。
戦後、日本で独裁的な権力をふるったGHQ(連合国最高司令官総司令部)。その内部で繰り広げられていたG2(参謀部第二部 ※諜報、保安、検閲を行う)と、GS(民生局 ※日本の民主化政策を担当)との激しい勢力争い。共産主義の台頭に神経をとがらせ、暗躍する米国の諜報機関。対外的なPRのためにも自国の権益のためにも、都合の悪いことにはフタをし、事実をねじ曲げてでも横車を押そうとする米国の思惑。それに唯々諾々と従うよりほかはない日本政府の首脳部。その狭間にあって蠢く個人の金銭欲や出世欲。
そうした魑魅魍魎の闇の世界が事件の裏側に広がっていることを、関係者の著書や証言からあぶり出し、掘り起こす松本清張の鋭い検証。そこに、肌が粟立つような怖さがあり、ぞくぞくさせられました。
事件の経緯を記しつつ、その性格を探り、真相は果たして公表されたようなものだったのか、その裏に何らかの謀略があったのではないだろうか。真実を隠蔽するための工作が、そこに何かなされていたのではないだろうか。その疑問を丹念に検証していく著者の推理の、錐をもみ込むような鋭さ。人間心理の洞察の深さ。
松本清張の並々ならぬ反骨の精神、気概といったものがそこからは伝わってきて、並の推理小説を読むよりよほどスリリングで面白かったです。とりわけ、「下山国鉄総裁謀殺論」と「革命を売る男・伊藤律」の二篇に存分の読みごたえを感じ、戦慄させられました。
紙の本
真実
2019/05/18 06:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリー作家として有名な著者だがその丹念な取材姿勢から日本史への研究も造詣が深い。近代史の闇について解説した珠玉の本。
紙の本
GHQの影
2013/08/15 00:47
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まゆげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張氏は、これら事件の不可解な決着に疑問を抱き、独自に調査を開始。
下山国鉄総裁の死は、当時の警視庁で自殺で処理されていましたが、氏は徹底的な調査の結果、独自の推理をこの著書で展開します。
捜査経過の書類やGHQの動きをを入手し、様々な状況証拠を並べます。
遺体検分の医師調査報告では遺体に殆ど血が残っておらず、総裁は事故前に失血死と推理。
又、GHQによる日本統治の意向(国鉄の大規模な人員整理等)に中々従わない下山総裁に米国政府は苦々しく思っていたこと等々。
連続して起きる鉄道事件や大きな事件そして政治疑獄には、GHQの一部組織の身勝手な動きが背後にあると言わざるを得ないと断じています。
紙の本
昭和は遠くなりにけり
2014/03/02 17:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の子供の頃(40年程度前)は、まだ戦後の記憶が近かったのでしょう。下川事件や帝銀事件をはじめとした戦後の怪事件が、テレビで特集されていたのを覚えています。今、テレビで取り上げられることはなく、中学・高校の授業では素通りでしょうから、ほとんどの若い方は知らないのでは。昭和は遠くなりにけりです。
本書では、これらの戦争直後の日本暗部に、大推理小説家の松本清張氏が鋭く切り込むという趣向です。上巻では6事件(下山事件、もく星号事件、二大疑獄事件、白鳥事件、ラストヴォロフ事件、伊藤律)を扱っています。いずれもGHQ(=米国)が何らかの形で関与している謀略事件だというのが清張氏の結論です。
「黒い霧」というだけあって、真実は藪の中なのでしょうが、清張説は有力な仮説として評価できるのでしょう。
ところで半藤一利氏著作の「昭和史」の中で、本書について次のように言及していました(280ページ)。『戦後日本で起きた数々の怪事件の背後に迫った大作。GHQが陰謀の限りを尽くし暗躍する姿、一方で真相を知る術もなかった占領下の日本人を、膨大な情報と推理を駆使して描き、戦後の混乱を生々しく伝えているとされる。』この最後の「伝えているとされる」という微妙な表現は気になりますが・・・。
それにしても、清張氏の癖なのか、「このことは後で書く」という手法を多用しすぎています。行きつ戻りつする粘着質な仕上がりに、何度もデジャヴを感じながら、読むのに苦戦しました。