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子犬のように、君を飼う
著者 大石圭 (著)
悦楽の街マカオ。小説家は束(つか)の間の自由な時間を楽しんでいた。カジノで大勝している時、日本語で声をかけてきた美しい中国人の少女。娼婦を買ったことなど一度もなかった彼は...
子犬のように、君を飼う
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商品説明
悦楽の街マカオ。小説家は束(つか)の間の自由な時間を楽しんでいた。カジノで大勝している時、日本語で声をかけてきた美しい中国人の少女。娼婦を買ったことなど一度もなかった彼は、魅入(みい)られたようにホテルへと連れ帰ってしまう。それは、甘美な地獄への入口だったのか――。30歳も年下の少女との蜜月の先に待っていた運命とは? 異端の純愛を描いた、究極の恋愛小説。
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紙の本
リアルというフラグをまとう、古典的な題材の物語
2009/03/22 16:41
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説家である主人公は、マカオのカジノで中国人の娼婦と出会う。
主人公は、30歳以上も年下の少女にのめりこんでいく。
本の帯には「異端の純愛を描く究極の恋愛小説」とある。
そして、娼婦との恋愛は古今東西、物語の題材になってきたことだ。その使い古されたようなテーマに、大石圭はリアルというフラグを入れることで、「異端」なものに仕上げている。
娼婦は娼婦であるゆえに、自我の一部を失っていく。娼婦であっても純粋などというのは、理想でしかない。「履き忘れた片方の靴」でもそうだったが、大石圭は男性にありがちな女性への盲目的な理想や幻想を、軽く打破してしまう。
それが、大石圭を読む快楽につながっているのだろうかと、今回ふと気づいた。
とはいえ、この少女娼婦はステレオタイプの域を出てはいない。
特異なのは、主人公である小説家だ。
自分の人生を失敗ばかりだったと振り返り、だからといって何も努力もしてこなかった彼は、妻の勧めで小説家になり、小説家として成功したのち、理由のわからぬまま妻から離婚された。その後、小説が書きあがるとマカオに来てギャンブルに没頭する、そんな生活をしている。
彼も、娼婦も、自分の存在理由を失っているといえるだろう。
そして、安穏と生きていくことはできる彼の方が、その喪失は大きいように感じる。
物語の結末は決して苦いものではない。
けれど、その背後に暗いものを感じるのは、決して間違いではないだろう。
幸福を手に入れるために必要なスキルが、少なくともあの少女との幸福を手にするための自我が主人公には足りない。
それとも、この出会いで、二人の重ねた時間が、彼を変えたのだろうか。
続編を読みたいように感じるけれど、多分「言わぬが花」なのだろう。