百怪祭~室町伝奇集~
著者 朝松健 (著)
《戦乱の昏き世。足利が織田が豊臣が、そして妖異の者たちが描きだす壮大な伝奇絵巻!》その男は龍にならんとする蛇か? ──琵琶法師を殺(あや)めて奪った古文書が、油売り・庄五...
百怪祭~室町伝奇集~
商品説明
《戦乱の昏き世。足利が織田が豊臣が、そして妖異の者たちが描きだす壮大な伝奇絵巻!》その男は龍にならんとする蛇か? ──琵琶法師を殺(あや)めて奪った古文書が、油売り・庄五郎の野心を烈(はげ)しく燃やす。そこに記されしは邪淫教立川流の秘儀! 天下を取り、女を抱くため、古文書にしたがい、魔物と約定を交わす庄五郎。彼が辿る凄絶な運命とは?(「魔蟲傳(まむしでん)」)
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室町時代という伝奇性
2003/02/20 19:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごんだぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前から朝松健氏の作品について感想を提出しようと思いながら、
これにしよう、あれにしよう、と悩んでいるうちに時間が過ぎてしまった。
好きな作品が多く選びがたかったのだが、考えた末にこの「百怪祭」にした。
というのも、氏の代表作としてはクトゥルー、室町伝奇、ジュブナイル……
と様々なジャンルが考えられるが、この「百怪祭」においては、室町(と
クトゥルー)の伝奇性が非常によく出ているように思われるからである。
また、短編集でパラパラに読めることからも、初心者向けとしてもお勧め
ではないかと感じたのも理由の一つである。
さて、ではどこがお勧めなのか。
第一に、緻密に考証された時代設定、それを当たり前のようにサラリと
表現されているところ。室町時代それ自体が持つ伝奇性を余すことなく
伝えている。
正直、室町時代にはとんと詳しくない私であっても、当時の雰囲気が
何となく分かるような気になるのだから、その描写力は的確だ。
第二に、その伝奇性と怪異性。どこか昔語りの匂いのする怪異譚は
それでいて新鮮である。著者が書き続けている立川流(クトゥルー)との
接点も鮮やかで見事である。
第三に虚実ないまざの妙。歴史事実と虚構を非常に巧妙にミックスさせて
あり、ふと「本当にあったのかもしれないな」と読者が信じてしまうほどの
リアリティは、確かな実証がなければ描けないだろう。
以上、思いつくままに三点を挙げた。
何度も繰り返し読み、「あっ、そこはそうだったのか」と気づくことも
あり、構成といい雰囲気といい、読み応え充分である。
氏の他の作品「一休」シリーズ、「ナチ」シリーズ他)も重厚でしっかり
したテーマと構成となっており、興味が沸いた方はぜひ何冊も目を通して
ほしいと思う。