紙の本
倫理とは・・・
2006/02/12 02:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:本の虫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最新医療とは、倫理とは、実は本当にこんな病院があるのではないか?と何年か前に読んだ臓器農場を思い出す内容でした。両方ともかなり衝撃的な内容だと思います。
紙の本
終わりをどこにしましょうか
2012/10/16 15:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おこめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういう行為をしないと戦後の事を考えても医学の進歩は成り立たないのかもしれません。
そう思って最後まで主人公の動向を見守っていました。
そこから先は、読者のみなさんにゆだねますっといった最終章に、すごく「にくいことをするな」、とニヤリとしてしまいました。
きっと普通のお話なら天罰などがあったりするのでしょう。
ここでは、すべて彼は自分のエネルギーに換えて前進していきます。
今まで描いてきたお医者さんとは相対する位置のの医者の登場は、作家なら反対側も描いてみたいという気持ちの表れかもしれません。
主人公はどうなっていくのか、その先は想像するだけでも湧き上がるものがある作品でした。さらっとしているところがなんとも…。
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2005/11/13 読了(小説)
とびぬけた技術と知識を要する産婦人科医・岸川が人の生死にも関わる異常な医療行為を行っていく小説の下巻。
上巻からの勢いが続き、下巻の中盤まではぐいぐい引き込まれたけれど、後半にかかると若干読者を引き込む勢いがなくなった感はある。実話でなく小説なのであれば、もう少し最後をぴしっと決めるか、その後をもっとイメージさせるような終わり方をしてもらいたかったかなぁ。でも作者の他の本をもっと読んでみたいと思いました。
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私の読書感想文を読んでくださる方がいらっしゃるとしたら、おそらく、こんな感想を抱くのではないでしょうか・・しかし、何でもあり、だなぁ・・・って。
結構、多岐に渡って、色んなジャンルに興味があります。
本屋さんでも題名や過去に読んだ作家さんモノ、ただなんとなく惹かれる系、など手に取る本は様々です。
なので、今回の本のような内容も、ある意味SFチックで興味がある分野とも言えます。
もっとも神へと近づいた医師。
患者に人気の天才産婦人科医・岸川は、その裏で異常な試みを進めていた。男性の妊娠実験、培養した胎児からの臓器移植…彼が目指すものは何なのか。医療の極限を描く問題作。 (Amazonのレビューより)
この本は以前に読んだマリアプロジェクトと似た恐怖を感じさせます。
楡 周平
マリア・プロジェクト
ともに生まれる前の胎児がキーワードとして出てきます。
なので、お身内に妊婦さんのいらっしゃる方、ご自身が妊婦さんの方は、もっとずっと後に読まれた方がいいでしょう。
世の中、需要があるから供給がある。
その需要にいくらでもお金を費やせる人がいるから、アンダーグラウンドな商売が成り立つ。
その陰で、無下に葬られる命があったりする。
人の価値は同じはずなのに、その価値にランクが出来る。
求めれば得られる人、求めたくても得られない人・・・
以前に、ある作家さんの本を読んだ。
その作家さんの半ば自伝的な”愛”の物語が話題を呼び、映画化までされた。
私はその本を読んで、ああ、間違った・・と思いつつ読了した。
文中に、愛する人の病を助ける為に、ありとあらゆるコネを使った。そして遠くアメリカの医療を受けさせるに及ぶ、とあった。
最後、病の人は亡くなるのだけど、新しく宿った命に対して3人の名前をプレゼントする。この3人が自分の代わりに、守ってくれるだろう、と・・・
世の中には”特権”と云う言葉がある。
地位のある人、お金のある人、知名度のある人などが持ちがちだ。
が、この特権は表沙汰にしてはいけない、と言うルールがあると思う。
何故なら、誰でも出来るもの、得られるものではないから・・
特権を使って出来たことは、御簾の陰の出来事ではないだろうか・・・
ある時、新聞紙上で知名度の高いある人の、同じような思いを感じさせる”愛”の物語を読んだ。
病に臥せる妻を介護する闘病記だ。
彼も特権のある人だ。
彼だから得られた助力を紙上掲載されて、一般の同じ病を持つお身内がどのような気持ちで読むか、考えないのだろうか・・と思ってしまった。
得られた助力に対する彼の感謝や、それでいかに妻が心地良い環境を得られたかはわかった。
だけど、それは●●と言う本は▲▲書店に売っています、と言う情報とは違う。
読者に”あれがあ���ば、愛する人の命をたすけられるのに”と言う無念を残すだけなのではないだろうか・・と懸念してしまった。
一言、嫌なら読まなければいい、と云う問題なのだろうか・・・・
私は作り物の小説が好きだ。
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イロイロと考えながら。印象的だったのが、主人公の彼のスタンス。ただ優越感を感じていたいだけなのだろうかとか考えてみたり。しかしこういう病院が本当に存在すれば、救われる女性はとても多いだろうと思う。
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ミステリーではないですね。
これは、現代の生殖医療はこんなことまでできますよっていう小説です。
うーん、微妙。
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まずミステリーとして見るならば、全体を貫くストーリーや様々な仕掛けと呼ぶに値する伏線などは秀逸だと思うし、早く先の展開を読み進めたくなる気持ちははやるばかりなんだけど、肝心なところの多くが明かされぬまま、おそらくは意図的に曖昧なまま置いて小説は閉幕しているので、何だかかゆいところに手が届かないような、指に刺さった棘がなかなか抜けないようなモヤーっとしたものが残る。
ただ、あえてそんな不満点から述べてしまったけれど、この小説の最大にして唯一のテーマはそういった類のものではないので、謎の多くが明文化して示されていないというモヤモヤ感を打ち消して余りある満足を読後は得ることができた。
じゃあそのテーマとは一体何なのかと問われても一言では言い表せられないのがもどかしくもあり、自分の知識、語彙の至らなさが嘆かわしくもあるのだが、とにかく、21世紀の最先端生殖医療とはここまでのものなのか、と素直に驚いたし、また非常に陳腐で月並みな表現なんだけど、生命発生のメカニズムというものに人の手を加えることについての是非なんかに関しても、どんな読者だってこれを読めば少なからず考えを及ばさざるをえない、そんな圧倒的で根源的な問い掛けを大いに感じた。
「自然」という言葉は、たとえば木の枝を集めて巣を作るビーヴァーにも、山を削り木を伐ってビルディングを建てる人間にも等しく用いられるべきである、という考えを私は持っているんだけど、その延長線上、とまで言えるのかどうかは分からないが、作中に登場する“生殖活動に人為的に手を加えることを背徳的というのならば、自然な生命の終焉を阻害するすべての医療行為はあまねく認められないことになる”という主旨の表現には強く共感を覚える。
本当にそうだと思う。
できる限り病や怪我や死というものを遠ざけよう遠ざけようとしているすべての医療行為は、広義で言えば“神の意志”に反している。
癌を早期発見して外科手術によって根治させるのは推奨するけれど、たとえ患者の望みであっても受精のメカニズムをいたずらに人の手が左右することはあってはならない、と勝手にどこかでラインを引いてしまい、あたかも人間が神の意志を代弁しているかのように振る舞うことこそが、最も背徳的なのかもしれない。
それにしたってこの作品の主人公のように、一方では不特定の患者たちの幸福を実現するためという信念で以って既成の倫理を無視する先端治療を行い、他方では邪魔になった人間の命を虫けらのごとく消し去るなどという完全乖離したアイデンティティの持ち主なんているわけないよ、それ以外の部分では極めて常識的かつ聡明な人格と知性を備えながらさあ、と読者に思わせてしまうところがほんの少しだけ残念。
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サンビーチ病院院長の岸川。不妊治療によって200人を超える自分の子供を
人工授精児として作り出し一方では胎児を利用しつくす。
中絶、不妊、移植、再生医療、における本質的問題を真正面から取り上げて科学の進歩と社会の変化についていけない政府の無策ぶりを鋭くつく。
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もし、全て医療とは自然の摂理に反する行為だと割り切ってしまうのであれば、そこに限界など存在しないことになる。
しかし、仮に医療とは自然の摂理に反するものではないというのであれば、その根拠と限界を示さなければならない。それは非常に困難な作業だろう。ただ、その困難さを乗り越えないかぎり、最先端医学の暴走を止めることはできない。
「暴走」と決めつけること自体、ひとつのとらわれた思考ではある。ただ、暴走でないと言い切る勇気は自分にはない。
結論は見えない。考え続けることしか、今はできない。
現代の最先端医療を舞台にした『ペスト』といったところか。
最後のシーンは、作者のただものではない部分を思い知らされる。
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インターセックスから読んでしまったので、スターウォーズ的な感じになりました。
岸川の技術で人生が救われる人もいれば、簡単に命をとられてしまう胎児。
これは簡単に善悪の判断ができないなーと思った。僕の意見は学会に来ていた日本人の医師たちに似ていると思った。倫理とかを話合うべきなのではと。
まだ子供を持ちたいと思ったことないし、身近に想像できないガキだからそう思うのかな。身近な問題の人にとって話合いなんて待ってられないだろうな。
親と見ていたテレビの番組で、先天的な治療しないと命にかかわる難病にかかった幼児が、痛みで泣きじゃくっている姿を見た自分の親が、
「あんなに苦しい思いをさせるくらいなら、寿命だと思った方がいいんじゃないか」
俺がもしそうだったら簡単に見捨てるのかな~と思ってしまった。
悲しくなったからこの問題を自分の中でどう解釈すればいいのか余計わからなくなった。
みんながどう感じているのか話し合ってみたい、そんな気持ちにさせてくれる本でした。
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年間120万人の新生児が誕生する日本だが、堕胎は同じ数、またはそれ以上にあるらしい。相反して、出産を望む夫婦の10組に1組は、赤ちゃんが授からず産婦人科に足しげく通う。その費用は保険も利用できず、若い夫婦にはものすごく負担になる。
障害も持たず、出産した我が子を虐待死させる親が世の中を騒がせる。その親にとっては出産があまりにも当然と考え、お手軽なものだったからなのだと、作者は岸川を通して語らせる。小説としてはいまいちだったが、実に多くの事を考えさせるテーマだ。
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天才産婦人科医師の話。
天才ゆえに極端な研究へ進んでしまい、人を助ける為に人を殺してしまう主人公。
そんな彼は正しいのか間違っているのか。
読み進めるうちに生命とは何なのか分からなくなってしまった。
不妊に悩み人工授精を行う人もいれば簡単に堕胎する人もいる。
色々と考えさせられる作品。
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「男性の妊娠」研究を国際学会で発表し、各国の賞賛を浴びた岸川。彼の高度な医療水準に、アメリカで不妊治療をビジネス展開する大企業が目をつける。最先端の技術と情報を盗むため、巨大組織が仕掛けた卑劣な罠。そして、それに対して岸川がとった恐るべき反撃策とは。岸川の持つ闇が徐々に暴走し始める…。生殖医療の暗部を鋭くえぐり、進みすぎた生命科学が犯す罪を描き出した戦慄の長編小説。
重いテーマを扱っているのに、何故か暖かいのが、帚木さんのすごいところ。やっぱり好きだなあ。
最後まで岸川先生の人物像がイメージできないのは私の未熟さゆえだろうか・・・
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借本。
上巻程サクサク読めず、躓きっぱなしでした。
読んでて気分が悪くなるような感じ。
個人的に、内容だけに考えすぎたのかもしれない。
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下巻に入ると、モナコ学会での成功に目をつけたアメリカの企業からの魔の手が伸びてくるなどして事件が多発。テンポもあがって一気読みです。主人公・岸川院長の考えは全くぶれず、基本的に「患者のため」「患者の要望を叶える」。その姿勢は正しいが、「患者のため」を理由に何をしてもいいのかというと、当然そんなことはない。岸川院長の評価が難しいのは、通常の小説やドラマなら、悪役の医者は自分の利権(主にお金、名誉)を追い求めるので分かりやすいのだが、岸川院長は単純な利権にしがみついているわけではないところだ。上巻からずっと主人公視点で書かれているのでずっと読んでいると、正しいことをしているような感覚になる。やはり岸川院長は神に近づきすぎたのではないだろうか。やっていることは明らかに人間の領分を超えていると思う。実際の産婦人科医学がどの程度なのか知らないが、もしかしたら大部分は夢や想像の世界ではなく、この本に書かれているようなことが現実に実現しているのかもしれない。そう思うと恐ろしくもあり、ひとりひとりが考えておく課題のような気がする。