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探偵はひとりぼっち
著者 東 直己
みんなに愛されていたオカマの友人が、めった打ちにされて殺された。若いころに愛人同士だった代議士が、スキャンダルを恐れて殺したのではないかという噂が流れはじめる。周囲が口を...
探偵はひとりぼっち
探偵はひとりぼっち (ハヤカワ文庫 JA ススキノ探偵シリーズ)
商品説明
みんなに愛されていたオカマの友人が、めった打ちにされて殺された。若いころに愛人同士だった代議士が、スキャンダルを恐れて殺したのではないかという噂が流れはじめる。周囲が口を閉ざすなか、〈俺〉は調査に乗り出すが、やがて身辺で怪しげな事件が……軽快な筆致がさえるハードボイルド・シリーズ第四作。
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紙の本
とても面白く魅力的な一作
2016/09/10 14:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
ススキノ探偵シリーズで読んだのはこれで4作目ですが、その中では一番好きかな。
タイトルにもある「ひとりぼっち」の状態になった時に、周りにおもねるのでも、媚びるのでもなく自分の信じる生き方を続けるというのは、本当に大変なことだと思うし、他人から見たら単なる自己満足野郎なのかもしれませんが、私は魅かれます。
作者の東直己さんの生き方や考え方が強烈に発散された作品ですが、決して押し付けがましくなく、とても面白く魅力的な一作でした。
紙の本
すすきのをねじろにする何でも屋<俺>の孤独な戦い。
2002/07/01 20:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くろねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
<俺>のキャラが、なんともユニーク。
定職にはつかず、ギャンブルで儲けたり、便利屋のようなことをして毎日を過ごし、
夜は、行き付けのバー「ケラー」に。
友人は、北大の大学院に在籍する武道の得意な高田や、暴力団幹部の桐原。
意気に感じると、とことん突き進んじゃう。
周りに制止されても、事件に首をつっこんでは、危ない目にもあってしまう。
そういう奴だから、事件が政治家がらみらしくて、警察も触らぬ神にたたりなしに
なっちゃってる事件だって、放っておきません。
孤軍奮闘。四面楚歌。
夜の世界の住人たちが、活き活きしている世界でもあります。
バーテンや、呼び込み屋。ゲイバーの方たち。
札幌の、特にすすきのの風景も、さすが、実際に住んで書いていると違います。
被害者となってしまった「マサコちゃん」
素人のマジック・コンテストでの大活躍。
喜びの最中になんてこと。
もみ消されてはたまりません。
なぜ、捜査が消極的になったのかを調べたら、政治家がらみとあってはなおさら。
あらゆる方面から、妨害・襲撃を受けながらでも、手を引いたりしません。
そういう<俺>だから、ひとりぼっちに見えても、ちゃんと味方はついています。
もう、危機一髪というところを危うくすりぬけられるのは、そのおかげ。
無粋なかっこよさと言っていいかもしれません。
紙の本
やさしい『一人ぼっち』
2002/07/10 19:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あさの - この投稿者のレビュー一覧を見る
いいなぁ、バクチで生活費稼げて、いいなぁ、朝からサンドイッチとウィスキーで、毎晩酒場で酒のめていいなー(訂正・『飲む金があって』)、とか、そんなことを考えてるんではナイ。絶対ナイ。(嘘)
だけどもなんともうらやましい探偵が主人公。
人はこんなふうにされたら悔しいだろう。正当であるかないかじゃなくてこんな時に人を殺したいだろう。怒りの出所は明確なのに、全体の物語の中ではたいしたことないはずの理由で、人は人を殺すし、実際に殺さないまでも殺意を持つ。そして殺意を相手に抱くことで感情を静めることもある。殴られただけで人を殺すことだって人間にはあるし、それは殴られないまでも、厳しく叱責されたり謗られたりするだけでもある。『いばりやがってこのやろう』とそれだけで人をなぶり殺しにする人間もいるだ。恐怖とか、自分の痛みとか、プライドを含めて自分の存在を脅かされた時に他人を殺す。
犯人が捕まったところで殺された人間は戻りはしないし、もちろんそんなことを書いている物語ではない。
けれど、その『殺す』という感情が、なんとも悲しい。多分犯人そのものよりも。
一人一人が立っている場所から見える世界はみんな違って、みんな等しく美しく、そしてそこに介入することはたとえ恋人でも親友でもできない。けれど相手が立っている世界を尊重することはできる。
ラストに行くにしたがって、探偵は自分が『ひとりぼっち』なのはみんなが彼を愛しているからだと知る。
そしてほんとうに探偵はひとりぼっちではなくなってしまうのだ。