- 販売開始日: 2012/03/30
- 出版社: 小学館
- ISBN:978-4-09-677215-7
永遠の詩05 石垣りん
著者 石垣りん (著) , 井川博年 (選・鑑賞解説)
「ひとり」を生きる、胸に迫る言葉。戦後を代表する女流詩人・石垣りん。彼女は眼前にある「家と社会の問題」に鋭く切り込み、現代人の孤独と真っ正面から向き合った詩を書いた。その...
永遠の詩05 石垣りん
商品説明
「ひとり」を生きる、胸に迫る言葉。
戦後を代表する女流詩人・石垣りん。彼女は眼前にある「家と社会の問題」に鋭く切り込み、現代人の孤独と真っ正面から向き合った詩を書いた。その表現は苛烈にして、海のような慈愛に包まれ、読者の心を根底から揺さぶる。すべての詩に、背景や言葉の意味がよくわかる鑑賞解説付き。
永遠の詩シリーズは、今日的に意義のある詩人をとりあげ、代表作を厳選しました。わかりやすい解説で、詩があなたにもっと近くなります。
著者紹介
石垣りん (著)
- 略歴
- 1920~2004年。東京生まれ。働きながら詩作を続ける。詩集に「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」など。
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
男性がひやつとなる詩集
2010/08/06 08:40
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「永遠の詩」全八巻の五巻めは、石垣りん。四十篇の詩が収められている。
巻末のエッセイは、作家の重松清が担当している。
石垣りんに「定年」という詩がある。この詩を読むと胸をぎゅっと鷲づかみにされるような気になる。
その冒頭、「ある日/会社がいった。/「あしたからこなくていいよ」」にぎゅっとなる。
石垣りんが日本興業銀行の事務見習いとして就職したのは14歳(!)の時。定年退職したのは、55歳の時。実に40年以上の歳月を銀行員として働いていた。
石垣が定年を迎えたのは1975年(昭和50年)で、まだその当時は55歳の定年があったのだろう。女子行員として働くことの厳しさを石垣は目の当たりにしてきたにちがいない。そして、家庭の事情もあって、生涯独身であった石垣だが、「生きていることの さびしさ。」(「二月の朝風呂」)も正直に詩にしている。
長年勤めたところであっても、会社はやはり「あしたからこなくていいよ」という。そのことを石垣は「定年」の最後でこう詠っている。「たしかに/はいった時から/相手は会社、だった。/人間なんていやしなかった」。
だから、石垣りんは、ひとりの女性として、一人の人間として、こう言わざるをえなかったのではないだろうか。
「石垣りん/それでよい。」(「表札」)
どんな時代であっても働くことに失望し、ときに絶望することもあるだろう。
そんな時、石垣りんの詩にふれてみるといい。
すっくとあることの素晴らしさを彼女の詩は教えてくれるにちがいない。
ちなみに、表紙の「私の目にはじめてあふれる獣の涙。」は「くらし」という詩の一節である。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でお読みいただけます。
つよい「ひとりの」やさしさ
2010/07/17 22:46
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サムシングブルー - この投稿者のレビュー一覧を見る
永遠の詩05は『石垣りん』です。
年譜を見ると、どの写真も彼女は笑っている。
石垣りんは大正9年東京・赤坂に生まれました。
4歳の時母を亡くし、高等小学校卒業後、14歳で銀行の事務見習いとして働き始め、家族6人の働き手となって定年まで勤めあげた彼女の詩は、優しさと切なさと健気さがほとばしっている人生の詩です。
第一詩集「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」 (32歳)
それはながい間/私たち女のまえに/いつも置かれてあったもの、(表題詩)
初期の代表作です。
「私は日本の女性たちの愛情と智慧と哀しみとが、炎のように燃えているのを感じた」と、鑑賞解説のなかで伊藤信吉さんは記しています。
また作品集にある『屋根』『貧乏』『家』は、家族や社会と闘っています。まるで彼女の血が噴き出ているような詩です。
第二詩集「表札など」 (48歳)
石垣りん/それでよい。(表札)
石垣りんといえば「表札」。やはりいいですね。
第三詩集「略歴」 (59歳)
ほんとうのことをいうのは/いつもはずかしい。(村)
石垣りんという、詩人に出会って良かったと思えた詩でした。
第四詩集「やさしい言葉」 (64歳)
海よ云うてはなりませぬ/空もだまっていますゆえ
あなたが誰で 私が何か/誰もまことは知りませぬ (契)
石垣りんの詩碑に刻まれている詩です。
書評タイトルにした『つよい「ひとりの」やさしさ』は、本書の最後に重松清さんが石垣りんを語っているタイトルからとりました。
重松清さんの語りはとても素晴らしかったです。
しかし詩には言葉はいらない、と思いました。
詩は感じるままに。