- 販売開始日: 2011/05/13
- 出版社: 太田出版
- ISBN:978-4-7783-2020-1
虹ヶ原ホログラフ
著者 浅野いにお (著)
「虹ヶ原」という土地を舞台に、小学校の同級生たちの過去と今が交差する――。子どもたちのうわさ、トンネルの中の怪物、家族の秘密、蝶の異常発生……あらゆる糸が絡み合い織り成す...
虹ヶ原ホログラフ
商品説明
「虹ヶ原」という土地を舞台に、小学校の同級生たちの過去と今が交差する――。子どもたちのうわさ、トンネルの中の怪物、家族の秘密、蝶の異常発生……あらゆる糸が絡み合い織り成す、新世紀黙示録。こんな作品はもう描けないと思います――浅野いにお
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パンドラの箱は一人に一つずつ
2008/02/24 19:36
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は一人の少年の過去~現在を軸にしてはいるが、彼の成長や人間性をうたった物語などではけっして無い。描かれているのは 彼と彼の学校と、彼を取り巻く小さな社会と世界の住民。
一人の女性の死体の発見は、その夫、子供、子供の同級生、その人たちのその又知人たちを引き込んでいく。
少年はどんな願いも一つだけ叶えてくれる箱を見知らぬ老人に手渡される。
彼の願いは世界を滅ぼすこと。受け入れてくれない世界、馴染めぬ世界、死に切れなかった世界を、彼は破壊したかったに違いない。
彼が手にしたパンドラの箱(と私は呼んでいる)はしかし開かれなかった。
思いとどまらせたのは、単に虹ヶ原の夕日が美しかったからではあるまい。
彼はその光景を、あまりに美しいその夕日を過去に何度となく見ている。
幸せだった幼少期、かつて幸せだった記憶の象徴として美しく映える虹ヶ原の夕日。結局、大切な人との美しい思い出が世界を救ったと、そう思う。
誰もがそうした思い出を持つわけではない。
世界を一瞬で終結させるパンドラの箱があるわけも、また無い。
しかし誰もが心にパンドラの箱を持っているし、人はいつだって一瞬にして自分の「世界」を終わらせることは出来る。 だからもう少しだけ、生きてみよう。