- 販売開始日: 2012/06/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-113405-5
五瓣の椿
著者 山本周五郎 (著)
「この世には御定法で罰することのできない罪がある」最愛の父が死んだ夜、自分が父の実子ではなく不義の子なのを知ったおしのは、淫蕩な母とその相手の男たちを、自らの手で裁く事を...
五瓣の椿
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商品説明
「この世には御定法で罰することのできない罪がある」最愛の父が死んだ夜、自分が父の実子ではなく不義の子なのを知ったおしのは、淫蕩な母とその相手の男たちを、自らの手で裁く事を決心する。おしのは、母を殺し、母の男たちの胸につぎつぎに銀のかんざしを打ちこみ、その枕もとに赤い山椿の花びらを残してゆく……。ミステリー仕立で、法と人間の掟の問題を鋭くついた異色の長編。
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立派なコピー作品
2021/10/28 10:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:imikuto - この投稿者のレビュー一覧を見る
パクリといえば聞こえが悪いので、やはりオマージュ作品というべきだろうか。
ウールリッチの「黒衣の花嫁」を真似て書いたという話は有名。
「黒衣」も読んだが、本作のほうがはるかに出来がいい、と個人的には思う。
この時代では、大作家でも、気に入れば、コピーしてしまう人は多い。島崎藤村、江戸川乱歩・・・
海外作品を日本文化に溶け込ませて完全に自分のものにして、そして読者を楽しませてくれれば、それで勝ちということか。
本作は、とにかくサスペンスフル。そしてミステリーでもある。
さらに人情物でもある。それはどうかなw
椿の花、落ちる。
2002/07/07 02:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
潔癖な心を持つ娘おしのは、自分が不義の子だと知ると、淫蕩な母を殺し、母と関係を持った男たちを誘惑して寝床に引き入れ、次々と殺してゆく。兇器は銀の平打ち簪。死体の枕元には、亡き父が好きだった山椿の花びらを残して……。
サスペンス時代小説だが、山本周五郎だけあって「法律で裁けない悪はどう裁くべきか」というようなテーマ性が感じられる。
私が初めて本書を読んだのは中学生の頃だった。その当時は潔癖なおしのに共感し、淫蕩なおしのの母を憎み、下司な男たちを憎んだ。おしのの耽美的な殺人法にも心惹かれた。だが、今改めて見直してみると、昔とは感じ方が違ってきた。勿論この作品は好きだし、おしのにも哀れを覚える。だが、今はおしのの母──おそのに以前ほどの嫌悪を抱けなくなったのだ。確かにおそのはだらしがなく、迷惑な女性である。だが、「夫が店のことを捨てても良いというくらい自分に打ち込んでくれれば、自分ももう少し夫に愛情を持てた」というおそのの台詞に、青臭い潔癖さでは割り切れない真実を感じてしまうのだ。
殺される男たちが下司ぞろいなのは、無垢な少女であるおしのに殺人を犯させる理由として必然のものだったのだろう。彼らの枕元に残された赤い椿の花びら。椿は美しいまま散ってしまう。おしのもまた椿であった。
ミステリ・ファンも読んでおくべきサスペンス時代劇
2000/09/20 07:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松谷嘉平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■サスペンスの形式で法と人間の掟の相克を描いた異色時代小説(1959年)。
▼油屋「むさし屋」の主人喜兵衛の妻「おその」は、婿養子である彼を疎み、数々の不倫を重ね、夫の危篤の際にも若い役者との逢瀬を楽しんでいた。その娘「おしの」は父の死んだ夜、母から自分が喜兵衛の子ではなく、不義の子であることを知らされる。彼女は、その時決意した。父のため、そして「人間の掟」を守るため、母とその男たちが犯した「法では罰することのできない罪」を、自らの手で償わせることを。彼女は次々に彼らの胸に銀のかんざしが打ちこみ、その側に山椿の花びらを残こしていく。
■構成は、序章と終章の間に6話が挟み込まれていて、それぞれが独立した短編のようなエピソードになっています。
■このことと、内容を読んで、気つく方もいらっしゃるでしょうが、これはコーネル・ウールリッチのサスペンス小説『黒衣の花嫁』のプロットにかなり直接的な影響を受けている作品なんです。名を偽って男たちに近づくところなんかも、そうですし、途中で刑事ならぬ与力に尻尾をつかまれて、更にサスペンスフルになるところなんかも「そのまんま」って感じもあったり。
■そうは言ってもウールリッチに比べて、殺人者の内面描写も多いですし、そこで描かれるのは「個人的な復讐」ということよりも、若い「おしの」の潔癖さに由来する観念的な動機が前面に出ているところは、かなり大きな違いだと思います。『黒衣〜』とは違って、復讐される側が読者の情けの受けようがない本当の「下司野郎」で、「必殺シリーズ」のような勧善懲悪の物語に近いところにも、そういう日本的といえばいえるかな。
■また殺害の理由がミッシング・リンクではなくて、最初から明らかになっている点では、『喪服のランデヴー』に近くて、より純粋なサスペンス。
■ちょっと結末のつけ方が弱い部分もありますが(やっぱり××をヒロインが殺すのはショッキングすぎると判断したのかな)、全編通して弛緩するところがなくて、なかなか面白い作品でした。