二の悲劇
著者 法月綸太郎
顔を焼かれたOLの死体が都内のマンションで発見された。三角関係にあった同居の女は逃亡。単純な怨恨殺人と見られたが、被害者の胃から見つかった鍵が複雑な迷宮への扉を開けていく...
二の悲劇

商品説明
顔を焼かれたOLの死体が都内のマンションで発見された。三角関係にあった同居の女は逃亡。単純な怨恨殺人と見られたが、被害者の胃から見つかった鍵が複雑な迷宮への扉を開けていく。殺されたのは誰だ?名探偵法月綸太郎は絡みあう謎が解けるのか?悲劇シリーズ第二弾!
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青春時代と中年時代の中間でないと書けない話
2001/01/23 10:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:愛・蔵太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
法月綸太郎の小説は、実は私的には毎度泣かされはするのですが(出来のひどさではなく話のテーマに。もちろん感動の涙です)、今回のこの話は、特に痛い話でありました。法月氏と「卒業写真」をデュエットしたい気分です。こういう話は、中年になりかかっている、というか、青春時代と中年時代の、うすぼんやりとした特定の時期にしか書けないような、回顧的青春小説です。メイン登場人物の二人に増して、背後に立っている「真犯人(というのかな)」の業の重さときたら、これはもう。最初の章の最後のフレーズと、最後の章のあれ。こんないい話を、ただの本格バカが書いていいものでしょうか(法月はただの本格バカではない、という意味を込めての修辞的疑問)。
もちろん、本格ミステリの基本とも言える「ありがちな推理とそれがたやすく崩されるけれどもまた別の謎が生じる」という仕掛けも豊富で、推理の楽しみもこの話にはあります。冒頭の、ものすごくダメ感が漂う二人称とか、堪忍してよ、とココロの中で叫びたくなる「女子高生なみのヘタクソな日記」(「なんだかすごく乙女チックな書き方。仕事ではこんなセンチな文章はきっとボツにしてしまうのに。」云々はないだろう)もある種すごいものがありますが、実はこれは巧妙に仕掛けられた叙述トリック(みたいなもの)です。我慢して読んでみてください。この「きみ」の正体は、ちょっと想像がつかないぐらいびっくりするモノなので、覚悟しておくことも必要です。
(初出:「仮装日記」2000年11月16日)
「きみ」と「うそ」の物語。限りなく切なく、そして哀しい。
2011/12/26 11:23
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
探偵・法月綸太郎シリーズの一作。
複数の出版社から刊行されているため
シリーズの何作目に当たるのかは定かではない。
法月綸太郎シリーズを読むのは
『生首に聞いてみろ』、
『頼子のために』、
『雪密室』、
に続きこれで4作目。
今回は少し趣向が変わっていて、
法月綸太郎部分の他に、
「きみ」という二人称に宛てた、
或いは多用した日記部分が登場する。
この日記を書いたのは誰か。
そして「きみ」は誰か。
よくわからないまま読者は事件に巻き込まれていく。
その事件とは、
都内で起ったOL殺人事件。
しかも顔を焼かれるという凄惨さの上に、
被害者の胃の中から鍵が発見されるという不可解さ。
キーワードはおそらく…
「きみ」と「嘘」。
それもとびきり切なくそして哀しい嘘。
切なすぎた。
そして哀しすぎた。
簡単に言ってしまえば、悲劇。
法月綸太郎シリーズにはなぜか暗さがつきまとう。
まぁ、それがこのシリーズの味であり色なんだろうけれど。
ただ、今回は切なさを生かしきれていない気がして残念だ。
「二の悲劇」というトリックが前面に出てきていて、
ドラマ部分に感情移入がしづらい。
ドラマかトリックか、どちらかに絞った方がよかったのではないかな、
というのが率直な感想。
余談だけれど、
各章のタイトルの横に、
松任谷由美の『卒業』の歌詞が
数行並べられているのだけれど、
これは効果的で、切なかった(よかった)。
祥伝社文庫では『一の悲劇』も刊行されている。
そちらも本書と似たりよったりなのかな。
手が出しづらいけれど、いつか読む。
それほど遠くないうちに。