- 販売開始日: 2012/07/20
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-331941-2
昭和の特別な一日
著者 杉山隆男 (著)
そのとき、日本人はみな発展と成長を信じて、上を向いて歩いていた――。五輪開会式の空を飛んだもう一人のパイロット秘話、銀座から都電が消えた日ドキュメント、中野にオープンした...
昭和の特別な一日
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商品説明
そのとき、日本人はみな発展と成長を信じて、上を向いて歩いていた――。五輪開会式の空を飛んだもう一人のパイロット秘話、銀座から都電が消えた日ドキュメント、中野にオープンした〈東洋一〉のブロードウェイ!……二度と戻らない日々の忘れられない物語。昭和の愛惜の光景を、静謐な筆致で描き出す、美しきノンフィクション作品。
著者紹介
杉山隆男 (著)
- 略歴
- 1952年東京生まれ。一橋大学社会学部卒業。読売新聞社を経て著作活動に入る。「メディアの興亡」で大宅壮一ノンフィクション賞、「兵士に聞け」で新潮学芸賞受賞。
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掴めるものはわずか
2012/03/21 08:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「鉄仮面」の愛称で親しまれた初代のぞみN300系新幹線が、2012年3月16日、20年の役目を終え引退した。駅のホームに群がった鉄道ファンの姿を見ていると、この日はこの人たちにとって「特別な一日」なんだろうなあ、と思ってしまう。
「特別な一日」は、人それぞれに違う。母を亡くした日、父とさよならした日、初恋の人と再会した日、卒業式で校歌を歌った日、現役を終えた日、・・・。さまざまな場面が、その人なりの思い出のアルバムに収められているはずだ。
そして、これからやってくる、「特別な一日」のための、白紙のページがつづく。
本書は「昭和」という時代の中から、東京・神田で育って著者の「特別な一日」が四編収められている。
ひとつは、昭和39年10月10日の東京オリンピックの日。この日を「昭和」の「特別な一日」として記憶している人は多い。9歳だった私も記憶に残っている。
二つめは、昭和42年12月9日の、銀座から都電が引退した日。
三つ目は、昭和38年4月12日の、東京・日本橋の上の高速道路工事が始まった日。
そして、本書に収められた最後の「特別な一日」は昭和41年10月29日の、東京・中野に「ブロードウェイセンター」がオープンした日。
昭和という激動の時代をわずか四つの「特別な一日」で描くのはいささか無理があるし、日本全国で「特別な一日」を探し出せばそれも山とでてくるだろうが、それはそれでやむをえない。
著者は、自身の育った環境を中心にして円を描くことで、おそらく半分は自分史的な作品をこしらえたといえる。もちろん、これは個人的な作品ではないので、これらの土地が持っている歴史や風土を描いているのも事実だが、わずか四つの「特別な一日」を見せられても、不燃焼な気分が残って仕方がない。
まして、「昭和」という時代が、そしてそれも戦後の高度成長期の時代と限定してもいいが、「特別な一日」を境にして何を手にいれ、何を失くしてきたのかを、もう少し読みたかった。もっとも、それは一冊の本で読めるものでもないだろうが。
「高度成長の上り坂を日本という国がひたすら走りつづける中で、両手いっぱいに何かを掴みとろうとすれば、いま手の内にあるものを捨てていくしかない」と著者は本書の中に記しているが、それは「昭和」という時代を表現しながら、この作品のことも表しているような気がする。
掴めるものなど、わずかでしかない。