召抱 奥右筆秘帳(九)
著者 上田秀人 (著)
復権を狙う松平定信は、奥右筆潰しを画策。しがない武家の次男、柊衛悟にありえない新規召し抱えの話が。併右衛門の一人娘瑞紀との婚約もこれで消滅してしまうのか。筆を武器とする奥...
召抱 奥右筆秘帳(九)
商品説明
復権を狙う松平定信は、奥右筆潰しを画策。しがない武家の次男、柊衛悟にありえない新規召し抱えの話が。併右衛門の一人娘瑞紀との婚約もこれで消滅してしまうのか。筆を武器とする奥右筆の虚を衝かれてしまった併右衛門に、幕府転覆を企てる闇の僧兵らも襲いかかる! 人気爆発シリーズ、波瀾の第九巻! <文庫書下ろし> (講談社文庫)
目次
- 第一章 過去の亡霊/第二章 栄光の残滓/第三章 白刃の閃/第四章 禍福の縄/第五章 権への妄執/第六章 墨の威力
著者紹介
上田秀人 (著)
- 略歴
- 1959年大阪生まれ。大阪歯科大学卒。97年小説CLUB新人賞佳作。「孤闘」で中山義秀文学賞を受賞。ほかの著書に「天主信長」「日輪にあらず」など。
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時代小説・長寿シリーズの真価が味わえる
2012/01/08 21:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、上田秀人の時代小説『奥右筆秘帳』シリーズの第9弾で「召抱」というタイトルである。シリーズ9作目ともなると、幕府の官僚たる奥右筆組頭である立花併右衛門にも上下左右に敵だらけである。奥右筆憎しで、幕閣、御三卿、大寺院、朝廷などが忍びの者、僧兵などを使って組頭を襲う。
この時代、すなわち徳川家斉が征夷大将軍であった時代では、武に力のあるものは評価されない。それよりも政治力のある者が天下をとっているのである。したがって、奥右筆組頭も襲われれば一溜りもなく、自分で自分の身を護ることはできない。そこで隣家の次男坊である柊衛悟が登場する。この衛悟は町の道場の師範代を務める腕前で、実戦経験豊富な凄腕剣士である。立花は衛悟に護衛を依頼している。
今回のエピソードは、白河松平家の出で将軍にはなれなかったが、吉宗の孫であり、老中筆頭を務めた松平定信が野心に燃えて画策を行うところからストーリーが始まる。老中時代の松平定信は、寛政の改革を成し遂げて幕府財政を立て直した功労者である。しかし、倹約の度が過ぎて老中を退任させられた。
それにしても、一旦退いた元老中で野心を燃やしたところで、復活などあろうはずがない。そこが小説の面白いところであるし、上田の目の付け所が面白いのである。それが大筋であるが、今回は将軍の鷹狩りが登場する。これはブラタモリでも紹介されていたが、もう諸大名の力がなくなってきた時代なので、形式に過ぎなくなってきたが、軍事演習に近いものである。
古くは源頼朝の時代に富士の巻狩りは、まさに軍事演習であって、守旧派の御家人がこれに紛れてクーデターを起こしたが、鎮圧されたという歴史もある。鷹狩りにことよせて将軍の命を狙うなどはこの時代では考えられなかったであろう。そこも小説ならではで、本書の真骨頂たる所以であろう。
いよいよ話は煮詰まってきたが、御三卿、大寺院などの勢力争いは佳境に入ってくる。柊衛悟は立花の身を守りつつ、自らの栄達はどう展開していくか。次の第十作が楽しみである。