挫折や回り道ウェルカム! 人生にはムダなことは何一つないことを教えてくれる対談本
2011/02/13 10:42
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
2008年度のノーベル物理学賞を受賞した益川博士と、生命科学の分野ではノーベル賞間違いなしといわれている山中博士の超ビッグ対談。これがほんとうに面白い。
科学の最先端分野でほんとうにスゴイことをやっている人たちが、胸襟(きょうきん)を開いてホンネで語り合う姿はすがすがしい。そしてまた、このような頭脳を持ち合わせない一般ピープルである私のような読者にとっても、得るところはきわめて多い。内容の濃い対談である。
1940年生まれの益川博士の好奇心の広さと深さには、ほんとうに驚かされる。好奇心に充ち満ちた益川博士が、22年後輩にあたる1962年生まれの山中博士に次から次へと質問していくという、インタビューのような形になっているのもまた面白い。現在の生命科学が、基本的に生物物理学であることからだろうか、理論物理学者のアタマのなかの一部を見ることができたような気がする。
益川博士がアルキメデスではないが、風呂から上がった瞬間にひらめいた話などのエピソードも興味深い。このほか発想のヒントも具体的に語られており、科学者ではなくても参考になるものが多い。
「仮説検証」という科学の基本について、いわゆる「セレンディピティ」はあくまでも考え続けたからこそ遭遇することができるということ、結果としていろんなことをやってきたフラフラ病(?)、「いっけん無駄なものに豊かなものが隠されている」という教訓などなど。
とくに若い人が読めば、科学の道を志していなくても、「人生というのは失敗してもいいんだ、挫折してもいいんだよ」というメッセージが伝わるものと思う。
知的探求の喜びと苦しみ、研究者として生きざまなど、研究生活もまたその他の職業と同じく、きわめて人間的なものなのだと気づかせてくれる元気のでる対談本である。ぜひ多くの人に薦めたい一冊だ。
ノーベル賞コンビの考え方
2012/10/20 05:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こぶたとともに - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル賞を受賞した、2人の京都大学教授(益川氏は名誉教授)による対談集。自身の生い立ち・研究略歴・勉強法・研究内容の簡単なアウトライン・研究者としての資質・人生観まで、幅広い議論が展開される。
研究者の道に進んだわけでない自分にも、有用な指摘が非常に多く、対談内容に考えさせられた。 研究者を志す学生だけでなく、社会人や高校生にも是非オススメの1冊。
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21世紀の生命科学を代表する山中伸弥氏と20世紀の物理学の巨匠益川敏英氏による対談の書。それぞれが自分の考え方、思いを分け隔てなく話されており、また、各々の性格や人柄もところどころに顕在しているといった感じがした。印象的だったのは、周囲に対しておもねらないその態度と芯の強さが御二人には見られるということ。また、いいアイデアを思いつくのが、風呂に入っている時や散歩をしている時など、脳がリラックスをしている状態の時だということに関しては、まさに昨今の脳科学ブームに照らし合わせてみても然りといったところだろう。最近の流れとしては、知識欲よりも金銭欲に目がいくといった傾向が国内だけでなく、海外でも見られるなど、自然科学の地位が低下している向きがあるが、こと生きるということに関して言えば、こんな面白い探究分野も他にないだろうと一読者としては思ってしまう。
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ノーベル受賞者益川氏とノーベル賞最有力候補の山中教授との対談集である。非常に読みやすい。二人のざっくばらんな性格も好感が持てる。
日本でトップクラスの科学者とあって、まさしくエリート中のエリートと思っていたが、結構苦労しているし、順風満帆の人生でもなかつたようだ。
科学者という仕事は決して格好いい仕事ではなくて、職人のようにこつこつと実験し、その結果を積み上げて行かなくてはならず、意外に地味な仕事なのである。ノーベル賞とか、とれれば一躍脚光を浴びるが、そうでない人は、大勢いるのだ。
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2011/1/29 メトロ書店御影クラッセ店にて購入
2011/2/8〜2/13
ノーベル物理学賞受賞者の益川先生とノーベル賞間違いなしといわれている山中先生の対談。
同じ理系の人間として、首肯するところ多数。実験は思い通りにならないところが面白いんだよなぁ。
物理系の益川先生と生物科学系の山中先生ではかなり思考法が違うのも面白い。自分も昔物理を目指していたが、どちらかといえば山中先生の思考法に近いかな。足りないのは実績ということか ( ̄Д ̄;;
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I confirmed that both Dr. Masukawa and Dr. Yamanaka are smart.
"God" for scientists is "nature". Masukawa doesn't believe in God.
I admire Yamanaka's earnest passion to help the sick and the injured.
I feel affinity with Yamanaka's clinician's days, and realize what made a difference between him and me: cleverness, diligence and aggressiveness.
I think that Mr. Masukawsa is a genius. He enjoys solving difficult questions. He solves difficult mathematical fomulas by heart!
On the other hand, Yamanaka is a person of genius as well as endeavor. He had a time when he had difficulty searching for good position and revenue for his reseaech.
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非常にオモシロい。
ノーベル賞取る人達はブレない信念があり、それに耐える力がある。
研究者が何を考えているか、少し分かる。
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iPS細胞の山中先生とノーベル賞を受賞した益川先生の対談本。
多分に自分もこの分野に関わることになることを予感しているからか、研究者の方々の文章を読んでいると、「ワクワク」している自分を発見する。特に山中先生がiPS細胞の応用について語っている部分なんていろんな想像や妄想が膨らんで楽しくてしょうがなかった。
何らかの形で研究に携わる人は純粋に楽しめるし、そうでない人は人生論としてお二人から学ぶべきところがあるのではないかと。
プレゼンテーションの重要性、「この研究は具体的にどんな役に立ちますか?」という問の無意味性、わからないことはわからないまま気に留めておくことの大切さは、直前に読んでいた『プレゼンテーションZEN』『街場の教育論』『治らない時代の医療者心得術』とも相通ずる部分があり、そういった意味でも楽しめた。
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【新歓企画】ブックリスト:「大学1年生のときに読んでおきたい本たち」
ノーベル物理学賞受賞者の益川俊英氏と先端医療研究者の山中伸弥氏の対談集。話題は自身の研究テーマから日常の勉強法まで多岐にわたり、学問の最先端を走る研究者の生い立ちがわかる一冊。早稲田の授業が難しくても気にしない! どんなに高名な学者だって、最初はただの大学生だったんですから。【K.H.】
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"よくまとまっていて、それでいて面白い!!"
【選書理由】
本屋でレジ待ちのときに、近くにあったから。
【感想】
これは買ってよかった。大当たりでした。
まず、読みやすい。そして得るものが多い。
山中・益川両氏の歴史から、悩んだときの思考法。
学生時代の"解けなかった問題"や座右の銘など。
対話式になっているので、返しの言葉も面白かった。
(特に益川先生かな)
「科学者の仕事」と同様、理系学生の必読書。
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2008年のノーベル物理学賞を受賞した益川先生、iPS細胞を発見した山中先生の対談本。
物理学と生物学とお互いの専攻こそ違い、素人的視点から話を楽しめるが、一方で二人がサイエンティストとして共有している点も多いと感じる。
実績だけに注目されがちだが、実績を残すまでには二方ともかなりの苦労をされていることがわかる。サイエンスに対する二方の考え方など、勉強になる部分が多い。
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研究者の端くれ中の端くれでも、
研究者として学ぶことが多かった。
納得できるし、
こうやって、一流の研究者が作られていくんだと思った。
特に後半の人生観の部分が秀逸。
自分も回り道をしてきたし、
それを乗り越えた人間は、強いと思った。
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(2011.04.19読了)(2011.04.15借入)
*山中伸弥さん、2012年度ノーベル医学・生理学賞受賞*
物質を構成する最小の単位である素粒子の研究でノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんと動物細胞の発生時のiPS細胞の研究をしている山中伸弥さんの対談を収録した本です。
重点は、iPS細胞の山中伸弥さんの方にあるような感じです。僕の興味もiPS細胞のほうなのでそう感じるのかもしれません。
章立ては以下の通りです。
第一章、大発見はコロンブスの卵から
第二章、「無駄」が僕たちをつくった
第三章、考えるとは感動することだ
第四章、やっぱり一番じゃなきゃダメ
第五章、うつと天才
終章、神はいるのか
●iPS細胞は「万能細胞」(15頁)
なぜ「万能」なのかといいますと、体中のあらゆる細胞に変化できる能力を持った細胞だからです。私たちの身体は、神経、骨、筋肉、皮膚など二百種類以上の器官からできています。iPS細胞は、こういった器官を作るためのあらゆる細胞に変化する可能性を持っているんです。
●細胞の時計の針を巻き戻す(17頁)
哺乳類の場合、いったん分化して臓器や組織に成長した体細胞は、もう二度と受精卵のような未分化の状態には戻れないと考えられてきましたが、1996年にイギリスで世界初の体細胞クローン羊ドリーが誕生したことで、その常識は覆されました。
一度分化した体細胞が時間をさかのぼり、未分化の状態に戻れることがわかった。私達が作り出したiPS細胞は、一度分化した体細胞を、未分化の状態に戻した細胞なのです。
●すべての細胞に同じ遺伝子が(20頁)
ヒトの遺伝子の数は、だいたい三万個ぐらいだといわれています。ヒトの身体の約六十兆個の細胞すべてが、それぞれに約三万ページある同じ設計図を持っているわけです。
設計図が同じなのに、なぜ、見た目も機能も異なる細胞ができるのか?それは、読まれるページが細胞によって違うからです。
「どのページを読め」という指令は、遺伝子の中の「転写因子」と呼ばれる一群のタンパク質が指示します。
●ヤマナカファクター(24頁)
マウスの皮膚の細胞に特定の四つの遺伝子を放り込んだら、それだけで細胞が初期化されてしまったのです。この四つの遺伝子をヤマナカファクターと呼んでいます。
●初期化遺伝子の予想(25頁)
京都大学の多田高先生たちの実験結果から、「ES細胞の中には細胞を初期化する遺伝子が存在し、その遺伝子は分化した細胞では働いていないのではないか」と考えました。
●初期化遺伝子の絞り込み(26頁)
理研の林崎良英先生のデータベースをもとに、マウスのES細胞で働いていて分化した細胞では働いていない遺伝子のリスト抽出し、何万個もあった遺伝子から、約百個の遺伝子に絞り込むことができました。
その後、ノックアウトマウスという特定の遺伝子を破壊した実験用マウスを使って、その遺伝子がどんな働きをしているのかを一つ一つ調べて行き、結果を見て重要そうだと判断されたものを候補に残しました。研究を始めてから四年目の2004年には、候補遺伝子を24個まで絞り込むことができました。24個の遺伝子を一つずつマウスの皮膚細胞に導入して��胞が初期化されるかどうか検証した結果、どの遺伝子も、単独では初期化することができませんでした。24個の遺伝子をまとめて細胞に導入してみたら、iPS細胞ができることが確認できたんです。そこから先は、「24個の中から、遺伝子を一個ずつ減らしてみる」ことにしました。実務作業担当の高橋和利君の提案でした。その結果、一年で、細胞の初期化に必要な四個の遺伝子を特定することができました。それらの遺伝子は、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの四つ。
●益川さんのノーベル物理学賞受賞理由(31頁)
「クォークが自然界に少なくとも三世代(六種類)以上あることを予言する、CP対称性の破れの起原の発見」
●CP対称性の破れ(31頁)
「約137億年前、ビッグバンによる高温で、粒子と反粒子が同じ数だけ作られました。粒子というのは、物質を形作る基本構造です。反粒子というのは、粒子と正反対の性質を持っています。粒子と反粒子は、ぶつかると光になって消えて行きますが、ほんの少しだけ、光にならずに消え残った粒子がありました。宇宙も、地球も、人間も、その消え残った粒子から生まれたものなのです。」
●山中さんの軌跡(77頁)
振り返ってみると、そもそも整形外科医だったのが、ノックアウトマウスを使って動脈硬化の研究をするためにアメリカに留学し、気が付いたら向こうでは癌の研究をしていましたし、癌の研究をしていたはずが日本に帰ってきたら今度は万能細胞を研究していました。
●思考の攪拌作用(120頁)
紅茶の中に角砂糖を入れて、そのまま放っておいても溶けて行かないけれど、軽く一回だけスプーンで回すと、すーっと溶けて行く。それと同じように、ディスカッションを通じて自分以外の人が関わってくると、それまで自分の思考回路の閉じた部分でクルクル回っていた考えが、すーっと外に流れて行ってくれる。僕(益川)はそれを「思考の攪拌作用」と呼んでいます。人と話すことは、とても重要です。
●研究者として成功するための条件(164頁)
「Vision & Hard Work」「明確なビジョンを持ち、それに向かって一生懸命に努力すること」
●今西進化論(187頁)
ダーウィンの「進化論」では、個体に生じるランダムな突然変異によって生物は進化した、とされていますが、京都学派の文化人類学者、今西錦司先生は、「種は進化に対して主体性を持っている」という説を展開しました。つまり、生物は「変わろう」と思ったときに変わった、主体的に変わったのだというのです。
●iPS細胞を使った臨床応用の可能性(194頁)
一つは、病気の原因解明と創薬です。
病気の方から、皮膚の細胞を少しいただいてiPS細胞を作る。その細胞が病気になる過程を観察することで病気の原因解明に役立てることができます。同時に、その過程の進行を抑える薬の開発もできますし、開発した薬をiPS細胞から作った細胞で試すこともできるので、副作用の危険を排除することも可能になります。
もう一つは再生医療です。
心筋梗塞や心筋症では、本人由来のiPS細胞から元気な心筋細胞を作って、心臓移植のかわりに心筋の損傷部位に細胞移植することが可能でしょう。
益川さんは、実に好奇心旺盛な方です。山中さんは、柔軟に方向を変えることのできる方です。なかなか知的好奇心を満足させてくれる本でした。
(2011年4月29日・記)
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タイトルと内容が一致しないのが残念.と言うか,タイトルで想像するよりずっと充実した内容で,さまざまな点に触れていた.
面白かったのは,益川さんが子供たちの発見クラブに対して「研究っていうのはこんなもんじゃない」って言うところ.ああいうことを言える人はなかなかいない.現在の“アウトリーチ”とか“サイエンスコミュニケーション”とか呼ばれるものの問題点を,鋭く突いていると思う.
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ノーベル賞受賞者二人の対談。
人柄、苦労話、考え方などがわかって面白い。
逆に、それ以上の話は無いように思えるからそこに興味ない人には特に魅力が無い本。
これらの会話から自分の中の考え方に対して何かを得られる人なら、科学的な考え方がインストール出来るかもしれない。
基本的に娯楽系の読み物。