人気シリーズ第三弾
2016/04/18 01:00
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投稿者:色鳥鳥 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シンポジウム形式にて(あとがきによると「雑談」形式にて)、小難しい概念や思想なんかを、ごく簡単に紹介・説明する良書、の第三弾です。
このたびのテーマは、「行為の限界」「意志の限界」「存在の限界」とのことですが、これではわかりにくい。
「愛とは何か」「自由とは何か」「死とは何か」のほうが、しっくりくる内容です。
前著『理性の限界』『知性の限界』と比べると、とっつきやすいテーマが多いので、これらを難しそう・・・、と敬遠していた読者には、本書『感性の限界』から読んでみるのも、良いと思います。
「感性」について、というタイトルから想像される「美について」とか、そもそも感性とは何ぞや、といった点には、ほとんど触れられていませんし、他にもあらゆるテーマが眠っていそうで、期待してしまいます。
第四弾、第五弾と、続くことを期待しております。
読む前に、ある程度、基本的な哲学・科学的な知識は、あったほうが楽しいかと思いますので、高校生以上の読者におすすめのシリーズです。
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理性、知性に続く限界ディベートの3作目。行動経済学、ドーキンスの利己的な遺伝子論、意識、無意識と意識の関係に始まる存在の議論などについて。特に難解なテーマを扱っているわけではないので、少し物足りない。個人的には、それらの分野の本を何冊かまとめて寄せ集めたもの、という印象を受ける。『理性の限界』では、数学的には難しい不完全性定理などを扱い、多くの入門書は数式を用いるところ、簡単に数式なしで説明するところが魅力的であった。ただ、2作目以降は、自分でその分野の本を読めばいい、と思うような内容になってしまっていて残念。軽い入門書だという風に考えて読めばそこそこ面白いかも。
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限界シリーズはこれで完結かな?シンポジウムでのテンポ良い雑談形式で,不合理で不自由な意志決定,そして「死」から逃れられない人間存在の制約を見事にまとめている。
前々作『理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性』では,選択の限界・科学の限界・知識の限界を,前作『知性の限界――不可測性・不確実性・不可知性』では,言語の限界・予測の限界・思考の限界を,全く同形式で噛み砕いて解説。知的好奇心を存分に満足させてくれる。
本書では行為の限界・意志の限界・存在の限界がテーマ。とっつきにくい哲学話がかるーく読めるから,ぜひ三冊セットで読みたい。よくこれほど綺麗にまとめられるものだなぁ。ただ,著者もあとがきで言っているように,議論に飛躍や漏れもあるので参考文献でより深く学んでほしいとのこと。
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理性の限界、知性の限界に続く三冊目です。
感性の限界では、「行為の限界」「意志の限界」「存在の限界」に分けてそれぞれをディスカッション形式で楽しく述べています。
行為の限界:
知覚因果説、行動の心理学・行動学立場からのコントロール、感情の化学的叙述、カーネマン「不確実な状況下での判断」、アンカリング効果、二重過程理論(分析的システムと自律的システム)、認知的不協和、フレーミング効果
意志の限界:
マズローの「自己実現理論」、環境決定論、ミルグラム実験(電流実験)、ドーキンスの利己的遺伝子、珈琲(アルカロイド)を好む分析システム、自由意志の進化、決定論・非決定論
存在の限界:
ミーム(遺伝子ではなく生存情報を残すこと)、サルトルの実存は本質に先立つ、カミュの生死の不条理に対する(自殺、哲学的自殺、形而上学的反抗)、テロリズム、意識と無意識、バナールの宇宙・肉体・悪魔
これらは非常に面白い内容ですが、個人的には前二作に比べたらインパクトが足りませんでした。ここら辺の話は小難しいゲームなんかをやってると良く出てくる話で、割りと知ってたことが原因かもしれませんが…。
意志の限界に関しては、人生観に拘って生きている人に取っては割りと常識かと思います。カミュの哲学的自殺、形而上学的反抗は私がよくツイッターでつぶやいていることと全く同じなので驚きました。自殺に関してはなるほど、確かにその選択肢もあるなと感じましたが。
まぁ全体としてやはり非常に面白いので、三作ともオススメです。
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限界シリーズの3冊目。今回は「愛」と「自由」と「死」という概念についてシンポジウム形式で本書は進む。
本書の面白いところは、「疑問」が随所に提示されることだ。シンポジウム形式で書かれているので、登場人物の一人が、例えばこんな風に疑問を呈する。
「私がすごく不思議なのは、少なくとも一度はすごく愛し合って、だからこそ結婚したような二人が、どうして後になってから、すごく憎しみあうようになったり、ついには離婚するようなことになってしまうのかということです」
「そこまで人間が環境に左右されるんだったら、「自由意志」はそんざいしないのでしょうか?」
「そもそも、なぜホロコーストのような異常事態が生じたのか?」
「なぜヒトは、こんなに簡単に服従してしまうのか?」
こういう疑問がところどころに出てくるので、自分のQも整理される。
それにしても、カーネマンとトヴェルスキーの行動経済学から、人は得をするフレームではリスクを避け、損をするフレームではリスクを冒そうとする傾向がある、フレーミング効果から、行為の限界の説明。
リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子を、「分析的システム」と「自立的システム」の2つのシステムで捉える二重過程理論で説明し、「個体」対「遺伝子」の意味を再考する意思の限界の説明。
アルベール・カミュの『異邦人』を例に引いて「本質」と「実存」の対比を行い、世界の「意味」について考える。人はどうしても世界に意味を求めようとする。だから、多くの人々はこの世界に意味を持っていると勝手に思っている。だが、それは根本的に間違っているかもしれない訳で、それは誰にも分からない。つまり、世界には生々しい「実存」が優先してあり、「本質」は後付けだから、「不条理」なのであるというあたりは考えさせられる。
こういう疑問に、古くからのアプローチだけでなく、最近の事例もたくさん引いているので興味が尽きない。例えば、自爆テロリストの研究によると、多くの人は結婚をしていて子どもも要る。さらに、信仰心も一般より特に高いわけでもなく、非宗教的で、無心論者さえいる。どうして、こういう人たちが自爆テロを引き起こすのか? 最近の研究では、「小集団の論理」にあるのではないかという。「信仰」や「信条」などという観念的な理想よりも、むしろ「共感」や「排他」といった感情的な結合にあると。なるほどと思う。情報が多ければ多いほど、逆に限定した情報だけしか見なくなる傾向があるという点も納得する。
著者はあくまで科学者だ。その科学者の視線から、疑問を提示している。「なぜ、人間は「空気」に支配されやすいのだろうか?」
「なぜ、理性的であるはずの人間が、このような「愚かな」集団行動を取るのだろうか?」
「理性や知性、つまり論理や情報とは別の、感性によるアプローチとはいったいなんなのだろうか?」
こういう疑問から本書を書き始めたとあとがきにあった。
疑問を大切にしながら、その疑問を解き明かすアプローチの多様性も視野に入れる。知的好奇心を満たす一冊���と思う。
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限界シリーズ第3弾。
難しいテーマを取り上げているにもかかわらず、あいかわらず面白くてわかりやすい。
自らの遺伝子を残すために、我々は生きている。
と、当たり前のことのように考えていたのだが、
有性生殖の場合、子に受け継がれるの遺伝子は半分。孫なら1/4だ。
8世代目には1/256でしかない。
これでは自らの遺伝子を残していると言えない、という疑問。
つまりは「自ら」ではなく「種」の遺伝子を残そうとしているに過ぎない。
個体は所詮、遺伝子の乗り物でしかないのだろうか?
一方、大腸菌などの無性生殖の方が、自らの遺伝子を残すという意味では優秀だ。
自らをそのまま複製し続けるのだから。そのシステムは至ってシンプル。
複製の速度は早く、膨大な数を生み出す。
ならなぜ、有性生殖などというシステムができたのか?、その答えは多様性。
環境の変化に対応し続ける多様性、バリエーションと質の向上による生存戦略。
一見、有性生殖が高度で優れたシステムに思える。
だが、大腸菌のような無性生殖の生命は、ヒトや動物の体内に棲みつき存在し続けている。
それは、自らの進化ではなく、乗り物である有性生殖の生命に、環境への対応を丸投げすることで、繁栄し続けているとは言えないだろうか?
こちらのほうが、合理的かつ高度な生存戦略なのではないだろうか?
生命、存在、あるいはヒトの謎はつきることはない。
まるで、ミステリー小説を読むように、謎が謎を呼ぶ。
だから科学は面白い。
興味深いキーワードはまだまだある。
・利己的遺伝子
・ミーム(meme , 非遺伝的な複製子)
・スタノヴィッチの二重過程理論
だが、収集がつかなくなりそうなので、今日はこの辺にしておこう。
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この本をどのカテゴリーに分けるかで少し悩んでしまった。「限界」、「不合理性」とタイトルにあるし、著者も哲学者なので一応哲学とする。しかし本書は哲学に限らず、行動経済学、認知科学、進化生物学を横断的に用いて、人間の自由意志の限界に迫る一冊である。
自分の意思で決定したことが実は遺伝子や、周りから得る意思決定には無関係だと考えている情報に操作されているかもしれないというのは興味深い。特に行動経済学のアンカリング効果は、ランダムな情報ですら意思決定に影響を与えるという点で特に面白い(国連実験)。
タイトルからものすごい難しい文章が書いてあると思われがちだが、中は架空のディスカッション形式で行われグイグイよめる。登場人物には行動経済学者などの専門家から、我々の目線に立つ大学生や会社員、話を横見にそらす急進的フェミニスト、議論をまとめる司会者といろいろなキャラがいて、それぞれのキャラが一貫しているので愛着が持てる。
タイトルに敬遠せずにぜひ読んだほうがいいと思う。
アタマの体操になる。
*ちなみにカント主義者は今回も健在であった。彼の話は司会者によく流されてしまうが、司会者は限界3部作を通じてどれだけの話題を別の機会にお願いしたのだろうか。それだけでシンポジウム2回は開けそうである。
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大変面白かったです。
世の中こういう入門書的な本がもっともっと増えれば良い。
「理性の限界」「知性の限界」に続くシリーズ第三弾だけれど、今回は前2冊と比べるとかなり簡単で、その分理解しやすかったと思う。
人に勧めるならまずこの巻からが良いかな。
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『理性の限界』『知性の限界』に続く限界シリーズ第三弾。
大学生や会社員、行動経済学者や生理学者などなど、ユニークなキャラクターが登場しシンポジウムを繰り広げる形は変わらず、今回は「愛」や「自由」「死」について考えていくことになる。
恋愛について、相手のことで頭がいっぱいになって胸が高鳴り、いてもたってもいられない気持ちを、神経生理学者は「軽い躁鬱症と強迫神経症の合体した一種の中毒症状」だと言い切る。
様々な専門家が各々の観点から極端とも言える意見をぶつけ合うのは、この本の楽しさの一つ。
著者が「楽しみながら考えていただくという趣旨を優先している」というように、今回も知的好奇心をくすぐる内容になっている。
「『限界シリーズ』の最初に挙げたのは、オリンピックの百メートル走で、ヒトがあらゆる局面でベストを尽くして走ったとしても、永遠に九秒の壁は越えられないだろうという限界値の話だった。(…)こうして並べると、壮観なネガティブの山のように映るが、逆に言うと、どれほど果敢に限界に挑戦し続けていることか、信じられないほどポジティブな人間の姿が見えてくるはずである」
ーおわりによりー
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行為の限界、意志の限界、存在の限界というテーマでそれぞれ「愛」「自由」「死」をキーワードに二重過程理論、自律的システムと分析的システムを併せ持つ人間の感性の限界を探る。
購買戦略や服従実験、自殺など、生物としての遺伝子に加え利己的遺伝子を持つ人間特有の行動から様々な議論がなされます。異なる思想や知識を持つ登場人物の議論の中で、新しい発見が多々あります。
科学や哲学を扱ってきた限界シリーズの中では一番読みやすい!(とか言う前に途中放棄した知性の限界を読まなきゃ…)
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人気シリーズ第三弾。第三弾となる今回は、『感性』に焦点を当て、行為・意志・存在の限界の観点から、不合理性・不自由性・不条理性を読みとくものとなっている。
今回のテーマは、一見すると文系側の側面の印象を受けるが、内容自体はしっかりと論理だてたものになっており、しっかりとした理解の上に成り立っている。また、前回と同様に会話を多方面(多くの視点)からつなげていくことで、読者に対しても一本調子で飽きさせることのないものとなっている。しっかりと読みたい人にはテーマの余韻を残し、さらっと読みたい人にはその会話を楽しめる誰に対してもお薦めしたくなる良書である。
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書店に置いてあったのを思わず衝動買いした。相変わらずわかりやすくて、面白かった。
「理性」、「知性」の限界につづいて三冊目。
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読み始めには、なんだこの変な本??と、騒々しい会議室に放り込まれたみたいで、正直ついていけなかったが、1章目を読み終わるあたりから、だんだんと「答えても答えても反証される仮説の出し合い」に楽しみを感じるようになり、最後には夢中で読み進めていた。前作2冊も読んでみたい。
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心理学に関する内容がほとんどであったと思う。そういう意味では期待していたような内容ではなかった。それでも読み物として十分に面白いし、対話形式で書いてあるせいか、すらすらと読める。
人間の行為や感性は、外部環境に強く影響を受ける―もちろん環境だけで行為などが規定されるわけではない―。常に外部環境に晒されている人間は果たして、どこからが自由意志であり、どこまでが自由意志であるのか。興味深い。
他の「理性の限界」や「知性の限界」も読んでみたくなった。
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肯定するか,否定するか,許容するか,嫌悪するか,世の中には多様な人がいる.
社会科学,特に行動認知学や行動経済学,社会心理学が近現代において発達し,社会に大きく影響を及ぼしたか,
一方で,自然科学--物理学,数学や生理学,進化学の観点からみる人間の「自由意志」や「欲求」.
それを踏まえて意志とは,認知とは,自分とは,愛とは,死とはなんなのだろうと,登場人物たちと共に思索し,
自分や人類の中にある,自立的なシステム,分析的なシステムの二項対立,そして「限界」を明らかにします.
しかし,不条理や不確定性に満ちた世の中に対してネガティブな虚無感に陥るのか,はたまた「果敢に限界に挑戦し続けている」「信じられないほどポジティブな人間の姿」を見るのか.
最後の,近代科学の功罪,全体主義のなかにある人間の歪み,冷戦に対する言及,SF的未来社会説の部分が,読み応えがありました.なぜなら,この章がこの本のなかで最も,人類の未来に関わる部分だったからです.
読みやすいですので,お勧めいたします.