紙の本
清張初期の名作のひとつです
2022/10/20 17:00
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
松本清張の『眼の壁』を書誌風に書いておく。
この作品は昭和32年(1957年)4月からその年度いっぱいにわたって、
雑誌「週刊読売」に連載され、その翌年単行本化されている。
同時期に発表された作品に松本清張の代表作ともいえる『点と線』がある。
『点と線』が社会派ミステリーの嚆矢のようにいわれることが多いし、
今に至るまで作品の評価は高い。
しかし、この『眼の壁』は『点と線』に負けないくらい面白い。
久しぶりに読みおえるまで本をおけないという、
読書の愉しみを味わった作品だった。
事件の発端は、手形詐欺。
これにひっかかった会社の会計課長が責任を感じ自殺してしまう。
この課長の下で働いていた萩崎竜雄は何故この事件は起きたのか、その謎を追いかけることになる。
竜雄は事件に美しい女性が関係しているのではないかと疑い始める。
そして、事件を追いかけるうちに、一人が凶弾に倒れ、
さらには、会社の顧問弁護士も誘拐される。
一体誰が、何のために。
警察の捜査によって、殺人犯が特定されていくが逃走先まではわからない。
その一方で、竜雄の前にまたあの女が現れて。
彼女は何者なのか、竜雄は次第に引き込まれていく自分に気づく。
この作品が面白いのは、事件の解決にどこにでもいる会社員の男を設定したことだろう。
彼の相棒には新聞記者の友人を配したとはいえ、
相手は殺人さえ辞さない大きな組織。
そういうあたりがこの作品が発表された当時、新しかったのではないだろうか。
しかも、『点と線』と同じように、鉄道の時刻表で犯人の足取りが見えてくるあたり、
清張の巧さを楽しめる作品といえる。
電子書籍
いまならば……
2022/07/11 02:05
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
令和の時代、昭和の頃のトリックが使えぬ不便さのある科学的捜査が発展していて……。でも、フィクションの小説として読めば、これは傑作だと思います。読後感は、さすが松本清張……でした
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「点と線」で推理小説作家としての注目を集めた松本清張が次に送り出した作品。
「大衆作家=松本清張」として巧いと感じるのは、導入部分。大企業の経理課長が単純な手口で手形をだまし取られ、自殺へと導かれる。そして、課長の敵討ちへと立ち上がる部下の主人公。この部分だけで重厚な短編小説ができそうだ。
このリアルな導入部分があり、一気に先を読んでしまおうという気にさせる。小説を読ませようとする、ベストセラー作家の高等テクニックだ。
物語の導入部分で観衆を引きつけることは、時代を経ても、その物語の完成度に重要だ。
と、導入部分に感動したけど、ぶっちゃけ、「眼の壁」は導入部分が一番おもしろい。
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死亡時期をごまかすことや誰が死んだかわからなくすることは、対警察のことを考えると得策ではないような気がしましたが、どうでしょうか。
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この作品は、昭和33年に刊行された年代物です。
当時、清張は「点と線」も執筆しており、次第に文壇での地位を高めていきます。
作品の内容は、手形詐欺の被害を受けた会社の若手次長と彼の友人とが、事件の真相を追うというスリリングなもので、読書の面白さを味わえる秀作です。
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気が付けば半世紀以上前の作品。餓死で思い出して久しぶりに読み返す。時代が下ると古臭くなる作品は多いが、この作品においてはあまり感じなかった。清張の特徴だろう。使われているトリックは今でも面白い。エンディングの「溶けている」というセリフが忘れられない。ひとつだけ古臭かったのは手形詐欺。最近手形自体をあまり見かけない。
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会社の金をだまし取られた上司が責任をとって自殺。その上司にかわいがられていた主人公が上司の恨みを晴らす為に独自に捜査。事件の背後には右翼のドンが関わっている事がわかる。この人物の出自は謎に包まれてていることが、知人の記者の力を借りてわかる。主人公は独自の捜査によって、右翼のドンの正体を明らかにし、追いつめる。追いつめられた右翼のドンは犯行を認め、事件で利用した重クローム酸加里の風呂に飛び込み自殺する。この自殺によって事件が幕を閉じる。
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次々と連なるトリックの内容は今も楽しめる。昭和32年の作品。新聞記者や単なる市井の人が尋ねたに関わらず、駅員さんとかがポンポンと個人情報を漏らすというところで、時代の違いに気づく。12.7.20
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ミステリー文学資料館 | 光文文化財団 | 光文社
http://www.kobunsha.com/company/scheherazade/mys-bun.html
近藤日出造 政治家の似顔絵を主とする政治風刺漫画を中心に描いた。
- Wikipedia → http://p.tl/llrZ
立教大学 旧江戸川乱歩邸
http://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/profile/facilities/edogawaranpo/
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おもしろかった。最後にこう来たか~って感じやった。仕掛けやら推理が全体的に凝られてて、読み応えあった。
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松本清張を読むと、いつも思うことがある。
物語を強引に、都合のいい方に持っていくということである。
本作でも、いくつも見受けられる。
しかし、それを感じさせない松本清張の筆力は凄いものがある。
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まだ新幹線もないし、東京駅待合室とか時代を感じるけれど、ぐいぐい読ませて引き込む力は素晴らしい。ぜんぜん古くない!
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資金にショートした民間会社。短期資金調達のために金融業者・高利貸金業者社長の口利きで相互銀行から資金調達できることになる。しかし、その実態はパクリ屋、詐欺集団の手中に落ちる。資金調達の担当者は、自殺。その真相を調べるために、その部下、部下の友人の新聞記者が奔走する。右翼団体、代議士、戦中戦後の混乱、貧村地域の悲哀、偽装殺人など徐々に真相が明らかになっていく。
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「松本清張」の長篇ミステリー作品『眼の壁』を読みました。
『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈上〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈中〉』、『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション〈下〉』に続き「松本清張」作品です。
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手形詐欺の驚くべき手口!
上司の汚名を晴らすため、ひとりの男が立ち上がった。
傑作サスペンス!
白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。
責任を一身に負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた「萩崎」は、学生時代の友人である新聞記者の応援を得て必死に手がかりを探る。
二人は事件の背後にうごめく巨大な組織悪に徒手空拳で立ち向うが、せっかくの手がかりは次々に消え去ってしまう……。
複雑怪奇な現代社会の悪の実体をあばき、鬼気迫る追及が展開する。
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「松本清張」の短篇を連続3冊読んで、久しぶりに長篇を読みたくなったので本書を選択しました。
400ページを超える長篇でしたが、面白かったので、一気に読んでしまいました、、、
昭和32年の4月~12月に『週刊読売』に連載された作品なので、それから60年近くの年月が経っていますが、現在でも十分愉しめる内容に仕上がっていますね。
昭和電業製作所の会計課長「関野徳一郎」は、つなぎの資金を調達しようとして、R相互銀行本店の会議室でパクリ屋グループによる巧妙な詐欺(篭脱け詐欺)に引っ掛かり、3,000万円(現在だと4億円くらいとか…)の手形を詐取される、、、
会社は大損害を被り、その責任を感じた「関野」は自殺、遺書により過程を知った「関野」の部下「萩崎竜雄」は、自ら真相を追跡しようと決心… 学生時代の友人で新聞記者の「田村満吉」の協力を得ながら事件の真相を探る。
この序盤の展開から物語に引き込まれましたねぇ… 「萩崎」に感情移入して読み進めました。
「萩崎」と「田村」は、「関野」が付き合いのあった高利貸の「山杉喜太郎」や、その女秘書「上崎絵津子」を探るうちに、早い時点から事件の黒幕として右翼の「舟坂英明」の存在に気付きますが、なかなか核心に迫ることができません、、、
その間に、会社からの依頼で事件の真相を探っていた顧問弁護士「瀬沼俊三郎」の部下で元警察官の「田丸利市」は、犯人グループの一味と目されるバーテンダーの「山本一夫(本名:黒池健吉)」に近付こうとして「黒池」が射殺されます… その後「瀬沼」が誘拐され長野県西筑摩郡の山中で死体(死因は餓死?)として発見され、「黒池」も同県北安曇郡の山中で白骨化した死体(死因は自殺?)として発見されます。
「瀬沼」と「黒池」の死については、静養を理由に荻窪の自宅から伊勢に移動した「舟坂」が裏で糸を引いていると思われますが、巧妙なトリックにより、なかなか真相に辿り着くことができません、、、
しかし、二人は「瀬沼」を東京から列車で運び出したトリックや山中に迷い込み餓死したと見せかけたトリック、「黒池」の死体を数日で白骨化させて死後数ヶ月と��せかけたトリックを暴き、そして「舟坂」の正体… 不明だった出生の秘密(出身地や「黒池健吉」、「上崎絵津子」との血縁関係)を解き明かして、アジトとしていた瑞浪(岐阜県)の精神病院「清華院」で追い詰めます。
そして、衝撃的な結末、、、
次に命を狙われていた「上崎絵津子」が沈められるはずだった濃クローム硫酸の風呂に自らが落ちてしまい、跡形もなく溶解… 現在の映像技術で映画化すると、かなりグロテスクなエンディングになりそうですね。
本作品、昭和33年に「佐田啓二」主演で映画化されているようです、、、
当時のことなので、エンディングシーンは、そんなにリアルに描かれていないだろうと思います… プロットや展開は面白いので、機会があれば観てみたいですねぇ。
以下、主な登場人物です。
「萩崎竜雄」
電機メーカー・昭和電業製作所の会計課次長。
本作の探偵役。
「田村満吉」
新聞社社会部の記者。
竜雄の学生時代の友人。
「関野徳一郎」
昭和電業の会計課長。
竜雄の上司。
「瀬沼俊三郎」
昭和電業の顧問弁護士。
「岩尾輝輔」
長野県選出の代議士。
「山杉喜太郎」
麻布に事務所を持つ山杉商事の社長。
「上崎絵津子」
山杉商事の女秘書。
「舟坂英明(山崎事務長)」
戦後に勢力を伸ばしてきた右翼の新鋭。
荻窪在住。
「梅井淳子」
西銀座の酒場「レッドムーン」のマダム。
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6月のWOWOWドラマ前なのでネタバレなしで。
初めて松本清張作品を拝読した。
前半のねっとりゆっくり丁寧な描写で物語の世界に惹き込まれた。
要素が集まり物語が展開し始めると非常にスピーディーで夢中になり一気に読めた。