- 販売開始日: 2013/05/15
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-146722-1
私の嫌いな10の言葉
著者 中島義道 (著)
「相手の気持ちを考えろよ! 人間はひとりで生きてるんじゃない。こんな大事なことは、おまえのためを思って言ってるんだ。依怙地にならないで素直になれよ。相手に一度頭を下げれば...
私の嫌いな10の言葉
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商品説明
「相手の気持ちを考えろよ! 人間はひとりで生きてるんじゃない。こんな大事なことは、おまえのためを思って言ってるんだ。依怙地にならないで素直になれよ。相手に一度頭を下げれば済むじゃないか! 弁解するな。おまえが言い訳すると、みんなが厭な気分になるぞ」。こんなもっともらしい言葉をのたまう大人が、吐気がするほど嫌いだ! 精神のマイノリティに放つ反日本人論。
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今だから言えます。私もその言葉、嫌いです。
2003/05/25 02:14
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:綾瀬良太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ数年の中島先生の活躍ぶりには目を見張るものがある。変人が多い哲学者の中にあって、中島先生は異彩を放っている。追随を許さないほど“筋金入りの変人”である。その瞳には、世間で「普通」に見えていることが「異常」に映っているのである。「人生を半分降りる」ことの啓蒙者であり、独自の「不幸論」を展開し、「ぐれる!」ことを推進する戦う哲学者は、自身が認めているように、かなり偏屈である。普通の社会人が交わすつきあいを嫌い、駅のアナウンスに抗議をする。私はそんな中島先生の屈折した、かたくなさに好感を抱く。自身の弱さを認め、積極的に孤独と向き合い、しゃぶりつくすように孤独を楽しむ先生の生き方に、したたかな「強さ」を感じる。
同書は「もっと素直になれよ!」とか「ひとりで生きてるんじゃないからな!」といった「嫌いな言葉」を公表するスタイルを取っているが、実は「言葉」につっかかっているだけでない。言葉に文句を言ったり、因縁をつけているのではない。中島先生はその言葉の背景にあるマイノリティーの感性に異論を投げかけているのである。私たちは子供の頃から、日本人の美徳とされる「言葉」に縛られて生きてきた。時には「相手の気持ちを考えろ!」と説教され、「もっと素直になれよ!」と促されてきた。私はそういった言葉を聞くたびに、「うざったい」思いを抱き、どこか嘘っぽいと感じてきた。耳から入ってくるたびにイライラした。それらの言葉は、どこか居心地が悪かった。なじめなかった。そんな理不尽なことを言わないでほしい、と感じていても私には反論する言葉がなかった。多くの子供、少年少女は私と同じように「善良」な大人の発するものわかりのいい台詞に調教されてきたのである。
しかし、中島先生は長年に及ぶ個人的な戦いを経て、そういった現実を批判するだけの言葉を手に入れたのである。先生は「善良」な大人があびせかける言葉が個人語を根こそぎ奪っていると追究する。さらに「個人の言語を潰す日本文化」に嫌悪感をあらわす。言葉で戦うことができず、真剣に考えることができなくなった日本人に向かって、中島先生は苛立っているのだ。そう言えば「相手の気持ちを考えろ!」と叱責されると、正論だけに文句が言えなかった。でも、美徳という援軍を従えた正論だけど、どこかうさんくさいと感じてきたことは確かだ。中島先生はそんなわだかまりをスッキリ解決してくれた。反対から読めば、本書は「そんな善良な人たちの、美徳らしき言葉に惑わされずに、自分の言葉を養え、自分の精神を鍛えろ」と促す哲学者のメッセージなのである。ぬるま湯のように居心地のよい世界から抜け出し、ボロボロになってもいいから戦え、と。読み終えたら、新しい自分に出会った。いや、受け止め方が変わった自分を発見していた。今だから言えます。私も中島先生が嫌いな言葉を、とても嫌っていました。先生が公言してくれたので、私も「カミングアウト」します。そして「私もその言葉、嫌いです」と語れる自分が好きです。こっちのほうが居心地がいいんです、中島先生。口火を切って下さって、どうもありがとうございました。えっ? あっ、そうか、中島先生はそういう言葉もお嫌いでした、ね。
はっきり語ること、それを文字通り信じること
2004/01/18 17:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
『孤独について』を読んで以来、怒れる哲学者(イカれた哲学者ではない)中島さんのエッセイのファンになった。中島さんは押しつけがましい「共同体」を嫌う。言葉がまともに通用しない「世間」や「集団主義」を断固拒否する。「私ははっきり語ること、それを文字通り信じることに(大げさに言えば)命を懸けたいのです」。本書に出てくるこの言葉は、かつて『哲学の教科書』で示された哲学の定義──「あくまでも自分固有の人生に対する実感に忠実に、しかもあたかもそこに普遍性が成り立ちうるかのように、精確な言語によるコミュニケーションを求め続ける営み」──にぴったりと重なり合っている。つまり、哲学的問題と格闘することは、人生に対する態度の変更・決定の試みにほかならないということだ。(でも、こんな生き方は疲れるだろうし、周囲の人間はたまったものじゃないだろうな。)本書には、中野翠さんや塩野七生さんへの、まるで女神を敬うような純情なまでの賞讃の言葉や、含羞の人(?)中島義道の言い淀みがいっぱい出てきて、とてもいい。宮崎哲弥さんの「解説」もいい。
自分と違う価値観を受け入れられる器を持っているのかを問う本
2016/01/03 09:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jkoba - この投稿者のレビュー一覧を見る
結局、100人いたら100通りの価値観があるということなんだなと、つくづく思いました。自分が好きな言葉でも、相手にとっては嫌いな言葉かもしれないし、そのまた逆も然りです。
正しさへと向かう勇気
2004/02/18 22:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:バンドウメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
嫌いというネガティブな感情に向き合う。考えることを拒否せず、逃げ出すことなく。あえて突き詰める。著者の探究心はとどまることを知らない。夢中になって私も文章を追いかけた。
日本という島国。そこに宿る精神のなんと狭いことか。笑顔という仮面をかぶり、体面を重んじる。集団は何よりも優先。相手に対してストレートに異議を唱えることを避け、通じないとわかればバッサリ切り捨てる。
この文化は問題を抱えつつもそのことにすら気づけない社会を作り上げた。気づいているごく一部の人間も場の和を崩壊させないがために、真実を胸の奥へしまう。本当にこのままでいいのだろうか。中島さんは一個人の意見を絶対的な意思にすることは望まないだろう。しかし、この本は力強く私たちに問題を投げかけている。いや、投げつけている。まずは初めの一歩。自分の言葉を臆することなくさらけ出す。そして、互いに深く傷つけあうことを覚悟して本質へ迫ろう。勇気を出して。