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電子書籍
夜宵
著者 柴村仁 (著)
大晦日までの僅かな期間にだけ立つ「細蟹(ささがに)の市」。そこで手に入らないものはないという。 ある者は薬を。ある者は行方不明の少女を。ある者はこの世ならぬ色を求めて、細...
夜宵
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夜宵 (講談社文庫)
商品説明
大晦日までの僅かな期間にだけ立つ「細蟹(ささがに)の市」。そこで手に入らないものはないという。 ある者は薬を。ある者は行方不明の少女を。ある者はこの世ならぬ色を求めて、細蟹の市へと迷い込む。 異形の者たちが跋扈(ばっこ)する市で、市守りのサザが助けたのは記憶を喪った身元不明の少年・カンナだった。呪われた双子の少女は唄う。「ああ、不吉だ、不吉だ」「おまえがもたらす流れ、その循環は、混沌を呼ぶわ」……
目次
- 一ノ経 チョコレートスープ
- 一ノ緯 マドウジ
- 二ノ経 ヒナちゃん
- 二ノ緯 エフェメラの苗床
- 三ノ経 雪客衆
- 三ノ緯 曼殊沙華
- 四ノ経 サザ
- 四ノ緯 カンナ
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紙の本
橋の向こうに捕らわれた者たち
2015/08/25 13:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
橋を渡った先には、街とは違うルールで運営される市がある。それが細蟹の市だ。全ての者が仮面をかぶり、ゆえに人間ではないとして、人倫にもとる行為も許される。商品は、薬、人、色と何でもありだ。
そんな市で仮面をしていない者は、マドウジだけ。マドウジとは、市のことを何も知らずに街から入り込んで来た人間のことだ。そんなマドウジを保護する役目を担っているのが赤腹衆。手枷をされ、しかし値札がないので商品でもないはずのカンナは、それまでの記憶を失っていたところを、赤腹衆のサザによって拾われる。
章題にある経緯は、織物の縦糸と横糸のことだろう。縦が現在のこと、横が過去のこと。それぞれの糸を並べて見ただけではつながりが分からないことが、重なることによってひとつの物語を織りなすということの暗喩なのかもしれない。
橋を渡った先は異界。わずかなルールを除いては、欲望のままにふるまうことが許される。しかし逆にいえば、そんな世界であれ、その世界のルールは順守される。その頸木から逃げ出すことは、意外に難しい。
破壊と創造というが、破壊の先に来るのが常に創造とは限らない。ただ混沌が残るだけという恐れもある。ゆえに破壊をする際には、必ず、混沌が訪れない様に、先手を打つ必要があるのだ。しかし残念ながら、サザにまだその力はない。
紙の本
恒川ファンにもご吟味あれ
2013/10/30 15:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:iogimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
オコノギくんシリーズの可愛く不気味な日常が好きで、今回の短編集にもトライしました。よくできている、と思います(我ながら何をえらそうに・・・)。しかし、私が大ファンである恒川氏の『夜市』と比べてしまうと深みとパワーが足りないように思いました。恒川ファン、どうぞご吟味あれ。
電子書籍
崩落の危機が迫る細蟹の市
2018/12/20 03:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとかのお稲荷様とかいう駄作を書いていた頃からすると、文章・構成とも飛躍的に成長したものである。
本書の舞台は市街から隔絶された「細蟹(ささがに)の市」。意外にも現代日本である。だからカタカナ語も普通に飛び交うのだが。
市で売り交わされるモノは合法・非合法から、超自然としか形容できないものまで。
その市でただ一人自警を担う赤腹集のサザ、その彼が保護した赤毛の少年。
来歴も生い立ちも不明、なにもかもを忘れた少年はサザの元で育ち、そして同じように記憶を失ったと称する少女に出会う。
ひかれ合う二人だが、成長とともに疎遠になっていく。
少年の成長を瑞々しく時に悲哀混じりに描きながら、「チョコレートスープ」「ヒナちゃん」と可愛らしい副題の短編は、グロテスクを正面から描いている。
ありきたりな人物だが、壊れた人間の情動には中々の読み応えがある。
唐突に現れた謎の殺し屋、なすすべなく混迷する市、徐々に明かされる細蟹と織女の正体。
ちなみに"赤腹"衆は、自警の市守(いもり)=井守りというダジャレ、雪客衆も龍笛、篳篥とあまりヒネリはない…。