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ワシさんのレビュー一覧

投稿者:ワシ

195 件中 1 件~ 15 件を表示

電子書籍

朝鮮紀行

電子書籍朝鮮紀行

2019/08/28 00:51

20年ぶりの再読

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

初めてお目にかかったのは学校の図書館だったような。
当時は「風変わりな人もいたんだなぁ」といった程度、読みかけで投げ出しましたが、電子版が刊行されているのを知り再読してみました。
“婦人““旅行記“といったキーワードが並んでいますが、実際の著者は地位も知識もあり胆力と行動力を兼ね備えた、まさに女傑です。
なぜ高位の人々が大小の助力を重ねてまで、彼女を動乱さなかのキナ臭い日清・朝鮮半島へ(まるで狙い澄ましたかのように)送り込んだのかは本文をご覧頂ければお分かり頂けるはずです。

時に叙情的に見たままの情景をつづりますが、その態度はあくまで科学的。
気温、距離、貨幣価値といった数値は漏らさず客観的に記す一方、人物や造形といった数値化が難しいものは、好悪の印象をためらわずに書いています。なにより動植物から建築にまで造詣が深く、その知識は圧巻そのものです。
現代まで残ったのも、こうした科学的な接し方があったからこそでしょう。残念ながら食べ物と料理に関しては、元祖メシマズ国の本領を存分に発揮しておりアテになりませんが。(ほぼカレーだけで済ませている)

触れずにいられないのが、朝鮮王朝と国府そして官吏のすさまじい腐敗と停滞です。行政も経済も完全にマヒしているが、大衆にもなにかを起こす気力も胆力もない。ことを興すのはいつも日本人か清国人。
脱力してしまうのは、この紀行が書かれたのはほんの百年ほどの昔という事実があるからでしょうか。

さて、著者は当時の朝鮮王・高宗(その後には大韓帝国皇帝に)とも数度の面会の機会を得ています。
面会した印象に限れば、一見気弱で温厚そうな人物ですが、実際の政治は優柔不断で逃げ腰、公私の分別が付かず無益な処刑を乱発したりと、とても為政者の器とは言えません。
こうした印象だけに全てを語らせない点も非常に説得力があります。
国王自身、そして臣下も国民の誰もが不幸としか書きようがないのですが。

巻末で筆者はある結論に達しますが、それは現代にも通ずる、いや現代の勢力図そのものを予言しているような気もします。
英国の知識人が南京虫と戦い、身体を張って書いた力作。
殺伐とした時代の中ですが、時に笑えて心温まる描写もあり、肩ひじを張らずに読んでみるのも良さそうです。

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電子書籍

【期間限定価格】イザベラ・バードの日本紀行 合本版

英国女傑の観察眼

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

上下巻を合わせて合計一千ページを超す、まさに大作です。
これだけの情報と紀行文をまとめ上げた筆者、そして訳者の時岡氏に惜しみない讃辞を送りたいと思います。

さて、本書では横浜から上陸し、東海道~日光街道を抜け函館に至るおよそ一千キロの道程を踏破し、現地やその道すがらで目にした様々な体験が綴られています。
なにがしかの命を受けていたか、あるいは女史自身の知的欲求がさせたのか明瞭に語られることはありません。
我々が知りうるのは、文物から風俗から人々とのやり取りまで、点描に過ぎないものの相当程度に正確に綴られ、事実を留めることに誠実であろうしたのだろう、それだけです。
本章は大まかに、著者自身の見分による時系列を追う書き付け、そして著者とその妹との間で交わされた私信をとりまとめた体裁で構成されています。
紀行と私信との差異も、口語・文語表現をふんだんに取り入れた分かりやすい訳です。軽妙な言い回しながら遠慮なしに辛辣な皮肉を加える事も。

読了には相当時間が掛かるでしょう。
もっとも私の場合、じっくり腰を据えて読んだのではなく全体をざっくり斜めに読み、現地を訪ねた折りに細部を再読(主に移動中の列車で)といった妙な読み方をしていたからですが。

大小の齟齬や認識不足、取り違えこそあるものの裏付や取材を欠かさず、他国の類例とも比較しつつ、科学的・合理的な態度を崩そうとしない姿勢にはただ敬意を覚えるばかり。
そして、当時わが国の為政者や指導者に、冷徹な達眼を持つ士がどれほどいたのか。その事実に改めて驚かされます。もちろん、人の成す事であり八方万事がうまくいくこともないのですが…。

時折り差し込まれる流麗な挿し絵、写真、スケッチも実に魅力的です。(残念ながら電子版では解像度が低くボケていますが)
著者本人の描写、同伴した日本人の案内人、時に車夫が描いたと思われるものも あり興味が尽きません。

昨年はちょうど明治百五十年に当たります。維新がもたらしたものには当然ながら光陰も功罪も多々あります。
時代の流れの中で破壊されていく文物や文化風俗にも触れられています。本文ではすぐ手の届く距離なのに、現代の私達には永遠に届かなくなったものも少なくありません。

時に美しく叙情的で流麗な筆致で語られ(訳者の国語表現の美しさもありますが)、他方では堅くいかめしい数字や官職の羅列も論文然として扱い、失われたものに心を痛め、発展の余地に心を躍らせつつ、どこか里心や郷愁をゆすられる、なんとも不思議な学術文庫です。

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電子書籍

テコンダー朴

電子書籍テコンダー朴

2019/07/20 03:15

日本は反省しる!!!

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

華麗な格闘技、特に世界が注目するテコンドーを題材にしたマンガだが、大型の本屋でもどこに置いてあるのかすら分からない!
これは悪辣な日帝が仕組んだ陰湿かつ執拗な計略である!
だが!しかし大韓民国の先進技チュは電子本を実現させ、市民万人が閲覧することはおろか、無知蒙昧な日本人の啓蒙をも可能とした!!
金同志・文閣下の功績として長く伝えられるべき偉業である!!

本書は紀元前から脈々と続く輝かしい歴史!その端緒を切り取ったものに過ぎない!
あらゆる文化・芸能・工芸の祖であり、起源でもある大韓民国!
一時は大日本帝国の圧政で無残に破壊され収奪されたが、植民地から解放され再び世界一の国にかえり咲いた大韓民国!
両手に持つのはガラガラでなく投擲弾!爆薬も爆弾も韓国起源である事は明白!
本書をお手に取れば、ノーベル財団が大韓民国へ賞を授与するなど畏れ多いと感じているか、その断面もお分かり頂けるはず!

二十一世紀になっても、日本帝国主義の侵略の野望は未だ衰えを知らず、日本を統べる覇皇は世界征服の機会を虎視眈々と狙っている!
日本にはびこる在日朝鮮人・韓国人への無法と差別!
そして韓国起源にも関わらず、さも日本発の文物であるように僭称する卑劣な日本!

そこへ現れたニューヒーロー!まさに新英傑の朴星日(ぼくせいじつ・パクスンイル)!!
世界中の格闘技の源流であるテコンドーを極めた朴は並みいる敵を片っ端から打ち倒す!

テコンドーの秘奥義を手にした彼にもはや敵はない!!
強きを助け弱きをくじく世界最高民族「大韓民族」!その本懐の血がうずく!
戦え!戦うのだ朴!
全てを奪い踏みにじった日帝とチョッパリに今こそに正義の鉄槌を下せ!!!日本は反省しる!!

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電子書籍

呪(しゅ)の血脈

電子書籍呪(しゅ)の血脈

2019/08/12 02:13

すべての意味を解いた時につながるモノ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

早くに父を亡くし、母と妹の暮らす小さな家庭を支える高藤正哉。
生来の口べた、自覚するほどのぶっきらぼうさで、仕事にも社会にもなじめない正哉。帰るべき家庭はとうに行き詰まっていた。

このところ正哉は凄惨な事故死の現場を目撃してばかりだ。
繁華街ではギャングまがいの少年達が「缶蹴り」と称して周囲を無差別に巻き込むゲームに興じる。
事故の連鎖、増える一方の悪漢、どうにも物騒きわまりない。

一方、大学で民俗学を学ぶ宮地紀之。
大学や学会の”政治”に身を置けない彼は、自説を確立し名を挙げるべく諏訪信仰のフィールドワークに熱を上げていた。
しかし鎌木村で犯した禁忌が住民に「祭り」の催行を余儀なくしてしまう。
村で出会った少女がささやく「なにがあっても知らないから」。

まだインターネットが世間に普及し始めた時勢、だが冒頭から往時のランドマークが登場し、力点も別のところにある。
その甲斐もあり十数年が過ぎた現在でも違和感なく読める。
コンピュータがまだまだマニアやオタクのおもちゃだった時代、心霊・怪異とネットとの相性が抜群である事を見抜いていた作家は少ない。
ネットの向こうにも人がいる。知能こそ人に及ばないスクリプト群、物理的に接点を持つことが難しい異常な人々は多い。慧眼である。

そのネット上に忽然と姿を現した『天音』(あまね)。占い師か新興宗教か。
『天音』の正体を調べるうち、高藤が鎌木村の神官の家系と偶然に知り高藤家を訪ねた宮地。
PCを通じて梓へ唐突に降ってわいた『お言葉』。
梓はお言葉と断片的な事実だけを持ち、なにかを悟ったように行方をくらましてしまう。正哉と宮地は梓を捜索しつつ、「祭り」を完遂させるため急きょ長野へと旅立つ。

めったに感情を出さず、黙りこくってなにを考えているか分からない、時折車内で紫煙をくゆらすだけの主人公。
考えがないわけではない、がさつだが乱暴をするわけでもない。
殺伐とした居心地の悪さは読んでいても息が詰まる。この演出は文章でしかなしえないものだ。

本書で特記したいのは「裏の祭り」「表の祭り」と奇怪さを前面に出しつつ、名前や音に隠された意図を読者から巧妙に隠している点だ。
土着信仰や神事がもつ真の意味、ある意味ではだ洒落、掛詞や縁語の類なのだが、それを解くと多くの忌み事や荒ぶる神の正体が隠されている。
どうして我々がそれら忌み詞を今でも避けるのか。なぜ同一のモノ・物にいくつもの名前を冠するのか、その理由と具体的な手法を作中で見事にまとめている。作者の本領発揮である。

畳みかけるような展開で、立ち止まることも逡巡することも許されず、次々に決断を迫られる正哉とどうにか追いすがろうとする宮地。
綿密な知識で構成され、その断片同士をわずかにずらす事で読者に違和感を与え謎へ引き込んでいく。
新たな神、一柱を立てようと画策する新興企業。
正哉が持つもの、早世した父を惑わした正体、祭りの本懐、終盤の惨劇でそれらが「一本の柱」としてつながってしまう…。

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電子書籍

今、韓国で起こっていること

電子書籍今、韓国で起こっていること

2019/09/08 04:54

カルト宗教・洗脳からの脱却

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昨今の韓国の動きがどうにもよく分からなかったのだ。
反日を含め、反○×など所詮は根無し草にすぎない、にも関わらず、独立国家の基盤が「日本なしに成り立たない」などあり得る事なのか!?と。
確かにわが国は、文化・経済・歴史・技術とさまざまな点で他国よりも恵まれているのは間違いない、都合八年ほど海外で起居しただけだが、それは確信を持って言える。
それを踏まえても「日本の全否定と反発だけで国が成り立つものか?」前から不思議だった。
そこまで日本は偉大な国だったか!?とも思えないのだ。

確かに著者の主張する通り、日本では和を重んじる。
ただ小国や諸大名の乱立、社寺が荘園に僧兵・山伏を抱え、実力で権勢を誇っていたキナ臭い時代が圧倒的に長く、その前には土着の人々も文化も、蝦夷だの土蜘蛛だのと散々な呼ばれ方をして滅ぼされてしまった。
家や氏族を守るために戦い、数百年続いた白人一強の世界秩序を逆転させた。
温和なように見えて苛烈な戦いも辞さない、どちらも間違いなく日本人の特性である。
西洋より不定形で揺らぎが大きく、これぞ日本、と一言であらわせるようなモノがない、戦は忌み嫌ってもそこから逃げ回る事はしないからだ。
是々非々が基本の日本、その対極だけで国を作ってしまったら…足下は覚束ないだろう。
だからこそ朝韓では二重どころではなく、凄まじい数の基準が目まぐるしく入れ替わっていく。

南北朝鮮では反日は国是を通り越して、“国教”であり“共通観念”と捉えるのが適切だろう。
何の事はない、北は金一族を、南は慰安婦魔像を崇めるカルト宗教を押し戴いているのだ。故に戦後が昔になっても謝罪・賠償の声は衰えない。
(どうせなら日帝三十六年でなく百年くらいに盛ってみるのもありだろう)

彼らは単に教義=謝罪要求を忠実に守っているだけであろう。荒唐無稽だが現実の話である。
著者自身は「反日を脱した」と書くが、ある意味でカルト宗教にハマった信者が教義を捨てた、と書いても通じるのだ(もっともそれ以前に“反日”には大小の違和感を覚えていたようだ)。

これは実に貴重な証言である。
なにかにつけて「韓国の現地では反日は感じられなかった」といった物言いをする、自称文化人は多い。
何の事はない、生活の隅々、土台が反日だから知覚できないだけなのだ。
高山に登るか水にでも落ちないと、空気の有り難さを知ることは難しい。
(釜山に十ヶ月ほど滞在した折、反日感情の高ぶりに危険を感じ父を残して帰国した記憶は鮮明である)
この下りは崔碩栄の著作に詳しい。

現在進行中の戦略物資密輸出(疑いではあるが)、北朝鮮への追従、GSOMIAの協定破棄など、我々には頭の痛い問題ばかりである。
著者の書く通り韓国人は「日本にはなにをしても良い」と考えるゆえだろう。
裏を返せば「いざという時は日本に甘えれば良い」と考えているとも言える。
南北間の諍いや小競り合い、それ以前に経済苦境に耐えかね国を捨てる韓国人が急増する可能性は大いにあるのだが果たして・・・。

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電子書籍

日本人だけが知らない 世界から絶賛される日本人

史実と決断の重み

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

叙情的でなく淡々と書かれているのですが、かえってそこに史実の重みが感じられて、一気に読んでしまいました。
全体的に硬めの文章ですが、単なる羅列でもなくうまくまとめられていて、全く読みにくいとは感じさせません。
むしろ硬質の文章からは、激動の当時の危うさ、そして人物の真面目さ実直さ、なにより強い意志が伝わってくる気がしました。
著者が元台湾人というのも、ある意味でポイント。
あえて挙げるとすれば、西暦で表記が統一されているので、事件や事象によっては時系列を把握しづらい部分がある事でしょうか?

困難な時期にあっても、己の信念をまげず職責に忠実であろうとした人々のお話し、我々は同じように強く真っすぐに生きられるのか、短い挿話ながらも魂を揺さぶらる思いです。

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電子書籍

【期間限定価格】滅びの園

電子書籍【期間限定価格】滅びの園

2019/01/06 00:38

細かいミスかなぁ?

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

酒田へは新潟へ出て羽越線回りでないと行かれないんだけどね。
あれだけほろぼろになっても陸羽西線は残ってたのかなぁ?
企業活動や鉄道網やプーニー化の影響で虫食い的に寸断されていく様、残されたところは一見つつがなく生活しているのが妙に生々しい。

耐性を持つ人が普通の人間に見えて、凄まじい胆力の持ち主であるところも面白い。
理剣が女も知らないまま突入させられなかったのは、珍しく作者なりのやさしさなのか…。

しかし最終幕、浜辺に残された誠一が見たのは、自身の内に残された希望だったのかなぁ。地球外生命体にふたたび活力を与えるようなものだったのか。
彼が死の寸前に見た、ただの白昼夢や臨死体験的なものに過ぎないことを願う。

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電子書籍

おしろい蝶々

電子書籍おしろい蝶々

2018/12/09 02:45

美しく儚い恋の物語

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

源平の盛衰から少し昔の東京まで、いくつもの時代の人並み外れた恋を描いた短篇集。
ただ美しい左手に見惚れた老人、自身を蛇の化身と語る少年に思いを寄せる青年、
負け戦を戦い主君を守るため鬼となった従者、生来より光を失い都を放逐され琵琶を携え幽鬼と語らう先帝、
画才に惚れ嫉妬に狂い彼自身を手にかける青年、菩薩の声の美しさに酔い廃仏毀釈に抗う僧侶。
その恋は時に人相手でなく対等でもなく、決して成就する事はない。

それぞれの章段はわずかなページ数でも、古典和歌漢籍に通じる作者だけあって非常に密度が濃い。
洗練された簡潔で美しく響く文体は、もの悲しくもありその余韻が耳を去らない。

陰惨で息苦しい奇譚ばかりだが、気味の悪さや恐ろしさは感じさせない。
ときに闇からくるもの達は、現世を生きる人々よりも温かく、そしてやさしい。
人の世をうまく生きられなかった人々を抱擁し慈しんでくれる。

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電子書籍

かくしごと(2)

電子書籍かくしごと(2)

2016/10/31 22:22

久米田康治の真骨頂

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

漫画制作のの舞台裏を見ているような、虚実ない混ぜの世界。
時折、世相をイジるようなダジャレが挟まれるけども、トンチがきいてて結構うなってしまう。
巻頭と巻末は恐らく物語終盤につながるのだろうが、乾いた寂寞とした感じがする。
とにかく情報量も細かな知識も凄まじい。

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紙の本

金色機械

紙の本金色機械

2019/09/08 15:53

神仙妖と対をなす金色様

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

柴本厳信は縄の名手、神業とも称される捕縛術の使い手である。
両差(りゃんこ)から怪力の大男、島田髷の花魁まで、縄一本でたちどころに縛り上げるその妙技は、舞柳遊郭の老若男女をたちまち虜にし、好事家の間で大いに語り継がれるのだが、この下ネタは完全にウソの物語である。


神話からファンタジーあるいはホラー作に至るまで、神仙に属する人物(もちろん人ではないのだが)や眷属には寿命という概念がない。
さて金色様は、現代の我々にも再現がおぼつかないほど高度に発展した科学技術の産物だ。
自己修復ができ、半永久的なエネルギー供給も可能、それら行き過ぎた技術ゆえに天人は滅びたのかも知れない。
天の船が爆発した時、船の構造は天人にも理解が及ばないものに進化していたのだろう。
天人が自身に仕掛けた呪詛のようにも思えてしまう。

とにかく時代劇に燦然と現れた存在、文字通り金ぴかで目くらましもさることながら、恐ろしい程に不均衡でもある。
実は本当に恐ろしいのは遥香の左手なのだが…。
大物の鹿も安寧のうちに死に追いやり、抱いていた猫もいつのまにか殺してしまう。
終盤では怒りにかられた遥香が、手をかざすだけで次々に大から小まで大人を即死させている。
金色様が大馬力で虐殺を働くので相対的に薄められ一読しただけでは分かりにくいのだが。

金色様の本質は、神仙妖そのものでもあり眷属やウィザードの類とも変わらない、あるいは両者を兼ね備えた存在でもある。
神仏に呼びかけるには祝詞や経、あるいは祭文や加持文が用いられるが、それがマシン語やアセンブラの命令文、文法違いの別言語に変わったようなものである。
言語インターフェイスはあるから会話は成立するし、神仙妖よりも人の理に近く聞き分けも良い。使い魔や式よりも忠実かつ馬鹿力で長持ちと様々な利点を持つ。
ゆえに金色様は死を望み、しかしそれは叶わず長い時をさまよう。
遥香という存在に出会えたことで物理的に機能停止し、金色様は永遠の眠りにつく。
有機無機を問わずに営みを止めてしまう遥香の左手の恐ろしさよ…。
人智を超越した理解不能な存在に人は神を見出すか。

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電子書籍

無貌の神 (角川ebook)

電子書籍無貌の神 (角川ebook)

2019/08/21 10:05

そして世界は閉じられる

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

時折り現れる、断崖の集落と対岸をつなぐ「赤い橋」。
外界から訪れる人も、脱出を願う人も橋を渡らずにはどこにも行かれない。
そして、橋が出現してもなおそこに留まることを願う人々。
橋の気まぐれで幽閉されたのである。そこに理由や必然性はない。

世界の理と、道の気まぐれに翻弄される人々。
他作にも見られるこの構造は、恒川作品に普遍的なものだ。
本当の主人公とはあるいは…。

そして、廃墟団地で”ハーヴ栽培”に血道を上げる桑田。
読んで頂いた通りの「人間のクズ」なのだが、実にこの手のイカレた弱い人物を描くのが実にうまい。
トバムネキ・英語教師の韮崎・沸点の分からない宗岡。そして、そうした壊れた人物になぜか魅了されてしまう人々。
だからこそ、ラートリーのように強く人徳をそなえた人物も描けるのかも知れない。
「おいでラートリー!」
「およびですかカイムルさま!」(違

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常世桜 地神盲僧、妖ヲ謡フ

電子書籍常世桜 地神盲僧、妖ヲ謡フ

2019/08/12 02:35

輪廻はめぐる

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

桜の古木の下に小さな堂宇を構えるは地神盲僧(じしんもうそう)・清玄(せいげん)。
連れ合いの琵琶・十六夜(いざよい)を携え、その音曲は天仙地神、神霊精霊、悪鬼怨霊、様々なものを鎮め、人との仲立ちをする。
この頃はすっかり訪れる人も絶えた堂宇、そこへ唐突に現れた少年。住みかを追われたという少年の正体は人か妖か。
やがて、清玄の記憶をたどる、遠大な彼の昔語が始まる。数多の戦と人の生き死にを前にし、遠く平安へ至るより昔からいつしか平成へ。

人の思いは強く、しかしあまりに命は儚く、忘却に支配されている。
やがて果てた命は新たな魂の器を求める。
鮮やかに咲き誇る桜の古木、その下で清玄が寿歌を奏でる、土の恵みのもとこの世に幸多かれと。
星の光ほど微かな琵琶歌、その音声と音色は誰の心に届いただろうか。
光を失った清弦の双眸は現世の明かりを写さない。文中に明示される事はないが、どうにも夜桜の香りと気配がたまらない哀しくも心温まる物語。

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赫眼(あかまなこ)

電子書籍赫眼(あかまなこ)

2019/08/03 23:26

これぞホラー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

心霊でもあり、偶然でもあり、精神世界でもあるが不合理そのもの。
どうとでも解釈できるのに、しかしどの解釈も的外れでしかない、因果もその後の判然としない。
それこそ、ホラーや奇談としか呼びようのない、これぞホラーと呼ぶにふさわしい短編ばかりである。

それぞれの挿話はコンパクトだが、行間の緊張感・切迫感はすさまじい。文章は各々のペースで読めるから余計に増幅してくるのである。

各章からその後につながるお話も多い。もっとも断片的な重なりを見せるだけで、たどり着く先は異なるのだが。

『赫眼』がお気に召したら『ついてくるもの』『凶宅』を、
『怪奇写真作家』『旧家の祟り』『見下ろす家』がお気に召したら『わざと忌み家を建てて棲む』を、
『原因』がお気に召したら『怪談のテープ起こし』を、
『よなかのでんわ』『合わせ鏡の地獄』がお気に召したら『七人の鬼ごっこ』を、
『灰蛾男の恐怖』がお気に召したら『魔邸』を、
『後ろ小路の町家』がお気に召したら『蛇棺葬』と『百蛇堂〈怪談作家の語る話〉』を、
『喫茶店の客』がお気に召したら『どこの家にも怖いものはいる』を、

ざっと思いついた順に書き連ねてみたが、いかがだろうか。
読了後になにが起きても責は負いかねるが。

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祝山(いわいやま)

電子書籍祝山(いわいやま)

2019/07/28 23:15

少しずつ日常が崩れていく恐怖

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最近では小野不由美等も書くようになったモキュメンタリーの形式である。
地図に当たることで、大まかな地理は特定が可能だ。
埼玉・東京の一地方で生まれ育った方には「位牌山」なる名をお聞きになったことのある方もおられるかもしれない。

きっかけは、誰かが言い出した肝試し。その後も関係した人が徐々に狂い始めていく。
どの出来事も特段説明するほどではなく、むしろ怪異だの心霊だのを結びつけて説明する方が難しい。だが事象同士をつなげて俯瞰すれば明らかに「おかしい」。
この変遷の過程と移り変わりを実に丁寧に書いている。日常が壊れていく、しかしそのおかしさが一言では表現できない、その様が実に怖い。

最後の旅の朝、彼らとその勤務先の荒廃ぶりが描写されている。
その荒み方もそうだが、荒んでいることすら自覚できない当事者の摩耗ぶりには、戦慄を覚えるばかり。

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電子書籍

環蛇銭

電子書籍環蛇銭

2019/07/19 02:10

くじけた心を糧にする物の怪の贄となる

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

曲がったことが嫌いと書けば格好良いが、感情任せで直情径行、そんな性格が災いして学校も勤務先でも衝突の絶えない修(オサム)。
そんな修の友人である裕一。定職に就かず古墳発掘のボランティアに精を出すが、ある現場で凄惨な事故を目撃、直後にわずか29歳で夭折してしまう。

荼毘に付された裕一は骨の一片も残さず煙のように消え、怪異が始まる。
葬儀からしばらく、修のアパートに浮浪者じみた老人が訪れる。幼なじみの裕一を名乗って。
科学的・合理的判断と常識、しかし老人が裕一でしかあり得ない現実の狭間で修は行きつ戻りつする。
やがて出会った古銭となにかを知る古銭商、誰かを待ち続ける未亡人。

古銭商を通じて語られる、古今東西の伝承や故事、冶金や文化に関する知識はすさまじいの一言。
それを断片としたサスペンス・ミステリーとしても良質なできばえ。
しかしながら古銭商の行っていた常識外れな研究が、先人が見いだした神秘性をまざまざと読者に見せつけてくれる。
まさに目からウロコが落ちる思いだ。あれ!?目からウロコって事は私も人魚…?

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