悪霊 別巻~「スタヴローギンの告白」異稿~
世界初、3つの「告白」を同時収録! 「スタヴローギンの告白」として知られる『悪霊』第2巻「チーホンのもとで」には、3つの異稿が残されている。本書ではそのすべてを訳出した。...
悪霊 別巻~「スタヴローギンの告白」異稿~
商品説明
世界初、3つの「告白」を同時収録! 「スタヴローギンの告白」として知られる『悪霊』第2巻「チーホンのもとで」には、3つの異稿が残されている。本書ではそのすべてを訳出した。さらに近年のドストエフスキー研究のいちじるしい進化=深化をふまえ、精密で画期的な解説を加えた。テクストのちがいが示すものは何か? ドストエフスキーがめざした“究極の作品”を読み解くための特別編。
著者紹介
ドストエフスキー
- 略歴
- 1821~81年。モスクワ生まれ。小説家。著書に「罪と罰」「白痴」「悪霊」など。
亀山郁夫 (訳)
- 略歴
- 1949年栃木県生まれ。ロシア文学者。名古屋外国語大学学長。「磔のロシア」で大佛次郎賞、「謎とき『悪霊』」で読売文学賞を受賞。
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ドストエフスキーの思考を追体験する
2012/03/12 10:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1871年1月より、家庭向けの雑誌「ロシア報知」に連載されていた「悪霊」。その第2部9章に予定されていた「スタヴローギンの告白」は、その少女凌辱というショッキングな内容から、社会的な影響と検閲に対する配慮により編集部の意向で、掲載差し止めになった。
本書では1906年に一部が発表され、1921年にふたつの異稿が発見されたこの「スタヴローギンの告白」を3つ載せている。この3つを読むことによって、我々はドストエフスキーの思考の過程を追体験できる。本書にあるようにこれを併せて読むことで二つの意味を理解できる。ひとつは「ロシア報知」の編集人の意に沿えるように改作することであり、ふたつめは作者自身による純粋に芸術的な見地からのブラッシュアップである。
ドストエフスキーが表現上どこにどんな言葉を入れ、または削るかを考え、悩んだあとを知ることができるのは物書きを目指すものにとって、この上のないぜいたくであり、第一級の資料である。
たとえば最後にチーホンがスタヴローギンに呼びかける場面。初校版では「あなたは、もう出口を求めるみたいに、新しい犯罪に身をなげだしてしまう。」が、ドストエフスキー校版では、「おまえは、もう出口を求めるみたいに、新しい犯罪に身をなげだしてしまう。」となっている。「あなた」を「おまえ」に変えるだけでずいぶん印象がちがってくる。
また、アンナ版だけに見られる、象牙の磔像を真っ二つに割る場面。ドストエフスキーがなぜこのエピソードを挿入したのか、想像するのもおもしろい。
ただ内容が重いだけに続けて3つを読むと、精神的にどっと疲れる。