仄暗く、ひそやかで、不可思議で、つい覗いてみたくなる。
2012/01/27 11:42
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アヴォカド - この投稿者のレビュー一覧を見る
「好奇心は猫を滅ぼす」というけれど、人間だって同じだ。
穴があったら覗いてみたいと思うし、怖いものは、怖いのに(怖いからこそ)見てみたくもなる。
恐怖にもいろいろあるけれど、この人の恐怖譚は、驚かすだけだったりえげつなかったりというものではない。
ジム・ショートハウスを主人公とする11本。
怖さというより、どちらかというと不思議感や薄気味わるさ。時には詩的と感じられるほどの。
芥川龍之介や江戸川乱歩が絶賛したというのも、さもありなん。
「秘書奇譚」など、なるほど芥川「魔術」への影響を感じる。
異世界を堪能できる傑作集
2020/10/11 11:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どの編から読んでも面白いのが短編集のよさ。パッとページを開いて当たった物語から読んだ。最初は『スミスの滅亡』。遠い場所に映し出された燃え盛る街。逃げ惑う人々の阿鼻叫喚。翌日の電信がつたえた事実は…。超常現象ミステリー。
『約束』も強く印象に残った。試験に落ちれば落第が確定。猛勉強中の医学生の元に、旧友が訪ねてくる。時は真夜中。やつれ果てた友の異様な有り様。翌朝目が覚めると友の姿はなく、医学生の脳裏をよぎったある約束の記憶とは…。哀愁漂う怪奇譚。
霊感を持つジム・ショートハウスを主人公とした怪奇冒険譚も面白い。このショートハウス君、とかくの噂がある家に敢えて乗り込むのである。人狼屋敷で明かす恐怖の一夜。死者の怨念が宿る幽霊屋敷の冒険。下宿屋で再現される父と子の悲劇。
怪奇現象とは、人間の心に潜む恐怖と不安を映し出す鏡か。超常現象とは、科学を盲信しようとする人間への自然の抵抗か。
どれもこれも魅力的
2016/05/16 23:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
「空家」が一番好きですが、他の作品もブラックウッドらしい美しくもの悲しい雰囲気の中、恐怖や不思議が絶妙に描かれています。
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ジム・ショートハウスもの11本。
怖さというより、どちらかというと、不思議だったり薄気味わるかったり。
芥川龍之介や江戸川乱歩が絶賛したというのも、さもありなん。
「秘書奇譚」など、芥川「魔術」への影響を感じる。
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最近、寝しなに読んでいます。この作家は神智学協会員でもあって、心霊的現象の詳細な描写がいかにもという感じ。
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乱歩が早くから紹介していたブラックウッドの短編集。光文社の古典文庫で、新しく翻訳されて読みやすい。作品も、幽霊話あり心霊現象ありサイコ系ありバラエティに富んでいて、読み飽きません。
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・私がアルジャノン・ブラックウッドですぐに思ひ出すのは短編「柳」である。これは超のつく有名作で、ブラックウッドにつ いて書く時には、誰もが必ずといつて良いほど言及する作品である。あの自然の怪異と畏怖には圧倒的なものがあり、一読讃歎、彼の代表作と いふにふさはしいと思ふ。同じく、「古い魔術」も彼の代表作であり、実に多くの人がこれに言及してゐる。もしかしたら猫好きな人には愛憎 半ばする物語かもしれないが、あの紛れ込んだ世界の実在感もまた圧倒的である。ブラックウッドは多くの怪奇幻想小説を書いた。この2作以 外にも優れた作品が多い。生まれは1869年、日本では明治元年になるのであらうか。30代終はりに作家となつた。イギリスの怪奇小説黄 金時代を生きた人である。そんな人だから、優れた怪奇幻想小説を書いてゐるのは当然であらう。ブラックウッド「秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集」(光 文社古典新訳文庫)には11の短編を収める。いづれもそんな時代を彷彿とさせ、そんな雰囲気を 堪能させてくれる正統的な短編である。更に、本書のポイントはショートハウス物すべてを収めるといふ点にある。この人物はジョン・サイレ ンスほど有名ではないし、登場する作品は4作しかないが、それをここに収めてあるのである。「彼の性格は作品によって多少違いますが、若 き日の作者の分身である」(「解説」346頁)とか。ブラックウッドは若い頃、様々な仕事を経た後に金持ちの秘書を務めた(同前333 頁)。このあたりを言ふのであらう。
・その表題作「秘書綺譚」、やはり大金持ちの秘書として務めた仕事の話である。主人の命で、主人のかつての盟友の家を、古い契約書の件で 尋ねる。そこは田舎家、奉公人のユダヤ人との二人住まひ、普段は尋ねてくる人とてない寂しい生活を送つてゐる。歓待され、依頼された仕事 は無事終了、さて帰らうとすると……お決まりの如くに、既に最終列車の時間には遅くなつてゐる。そこでやむなくショートハウスは泊まるこ とにする。さうして、後は恐怖の一夜が待つてゐる……本当に型通りの見事な展開である。この先はどうなのであらう。その家の雇ひ人がいさ さか不気味な男であつたり、主人が生肉しか食はなかつたりで、早々に部屋に入れば、そこは「まことに気持ちの良い素敵な部屋だったが、 ショートハウスは(中略)神経が発する警告を無視できなかった」(174頁)。これもまたなかなかのお膳立てである。さうして最後に事が 起きるが彼は難を逃れて帰着、務めを果たしたゆゑに主人は「給料を上げてくれたばかりでなく、帽子と外套を新調しろ、勘定書はこちらへま わせ、と言ってくれたのだった。」(189頁)実際、この物語は綺譚である。単なる怪奇、恐怖小説とは違ふ。その意味では、先の「柳」と は全くタイプの違ふ作品である。これに対して、冒頭の「空屋」「壁に耳あり」は幽霊譚である。「空家」は伯母との幽霊屋敷探検である。こ れは屋敷の様子とそれに対する二人の反応が中心である。「壁に」はその部屋に取り憑いた霊の出現の物語である。最後にその事情が明らかに される。幽霊譚でも律儀なとでもつきさうなのが、ショートハウス物��はないが、「約束」である。日本ならさしづめ○○の契りとでも題され さうな内容である。要するに、ある男がかつての約束を守つて友のところに幽霊として出現するのである。どちらもよくありさうな物語である し、現代ではかういふのは書かれないであらうとも思ふ。古典的である。イギリス怪奇小説の黄金時代を思はせる作品である。他に、変種の吸 血鬼譚もある。代表作ではなくとも、楽しめる作品集である。
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表題作他10編の、英国式古典的怪談集。
蝋燭の仄明かりを頼りに暗がりを進んで行くと、
フッと何者かの顔が視界に飛び込み、
またすぐに消えた……が、
それが何だったのか、説明がつかないまま終了――とか。
このモヤモヤ感が堪らない。
本体が死すとき、
その分身(投影、あるいは副産物)も共に滅びる、
という「スミスの滅亡」や、
牙を剥いて生き血を啜る典型的なタイプではない吸血鬼の話
「転移」が特に面白かった。
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ショートハウスが出てくる作品を主に集めた短編集。
ゴーストが主だけど、人狼的なもの、吸血鬼的なもの、バラエティに飛んでいて面白く、すぐに読み終わってしまった。何度でも読み返したい本。
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全編面白かった!
100年前の作品なのに、全てやりきっている。ジム・ショートハウスを主人公とした短編が全て入っていたのがありがたい。この本には収録されていないが、ジョン・サイレンスを主人公にした作品の方が有名らしいので、それも読んでみたいと思った。
が、果たして翻訳されてるのか…?
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幽霊譚など怪奇幻想もの。小説の構造として奇妙なものも多いんだけど、文章の密度というか、ビジョンというか、雰囲気がすごく良くて、怖いというよりも、物語がしみじみ心にしみてくる感じ。
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百年前の作品なんて信じられないです。
最近は妙に凝った作風のものが多いせいか、こうあっさりとしたプロットなんだけど文章力で勝負! ていう作品がひどく新鮮でした。
本当に面白い。
じっくりと読みたいって思っていたのに、この後どうなる? で、どんどんページをめくってしまい、すぐに読み終えてしまいました。
古典文学に分類される作品ですが、新訳だからか読みやすかったです。
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「幻想怪奇」という言葉に惹かれて。
一つ一つの話が「アレは何だったんだろう?」という後味の悪さを残して終わっていく。特に表題作「秘書綺譚」のアレは何だったろう?感が凄い。こういう引っかかる感じが、本読みにはたまらない。
確かに幻想怪奇な傑作が詰まった素晴らしき1冊。江戸川乱歩が絶賛しただけあるなぁ…。
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スタンダードな幽霊譚や幻想的な「転移」「野火」。どれも恐ろしい感じはしないのだけど、不思議と登場人物の表情や暗い風景がありありと浮かぶ。とりあえず、ジム・ショートハウスは怖い思いし過ぎだと思います。
単純に私の感覚的な問題かもしれないけど「ホラー」という言葉には日本の小説がしっくりきて、「怪談」は欧米の古い作品がしっくりくる。
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幻想怪奇小説好きだけど幽霊ものはあまり読みたくない小心者、でも光文社古典新訳文庫の南條氏訳のは全部読みたい好奇心。というわけでやっと秘書綺譚を手に取った。幽霊譚でも<約束>はわりと好き。他は<スミス―下宿屋の出来事><小鬼のコレクション><転移>が好みだった。幻想・怪奇・神秘・恐怖小説を程よく楽しめる、ブラックウッド入門になる一冊だった。