紙の本
現場の強さがあるとしたら、そこには「現場のリーダーシップ」が必ずあるはずである
2011/09/24 21:43
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「夜間飛行」の新訳が出た。旧訳の本書が実に面白かったので、直ぐに購入した。旧訳は詩人の堀口大學であり、言葉は綺麗ながらも現在から見ると古い。新訳の方が今の僕らには読みやすいと思った。
本書を再読して、改めて、この作品の主人公リヴィエールの造形に感じ入った。僕も主人公と同じく中年であり、組織でいくばくかの部下を抱えて働いている。その立場に立って見ると、主人公の見せるリーダーシップの難しさということが分かる。
僕の仕事は、部下に死の危険を強いるようなものではない。一方、夜間飛行を強いる主人公の仕事は部下の命を危険にさらす厳しいものだ。その厳しさの中から、主人公の並はずれた自制心と、自他共に律する厳格さが産まれてきたのであろう。著者のサン=テグジュペリ自身がパイロットであり、最後は地中海で撃墜された程の危険な任務についていたこともあり、本書に描かれる業務の危険性には非常に説得力がある。その上での主人公の造形だ。
ここからはいささか想像力をたくましくしたい。
福島第一原発では3月以来、既に半年もの間、非常に危険な部署で多くの人が今なお懸命な作業を続けておられる。死の危険に晒されながらも、作業を進める姿には世界からも称賛の声が寄せられている。その中で、どのようなリーダーシップが発揮されてきているのだろうかということだ。聞くところでは、本社からの指示を無視して、注水を続けたリーダーもいらしたという。指示を無視した点の是非は議論の余地は十分あるわけだが、そこにはいくばくかのリーダーシップ論もあるような気がしている。
日本の強みは本社ではなく現場だと言われることは多い。そんな現場の強さがあるとしたら、そこには「現場のリーダーシップ」が必ずあるはずである。リーダーシップというと、どちらかというと日本人はそれに欠けていると言われがちかもしれないが、おそらくそれは間違っているはずだ。そうでないと現場の強さが説明つかない。
リヴィエールの見せる現場でのリーダーシップもその一つの例である。僕自身も現在はいわば現場勤務であるだけに、余計に本書に引き込まれるのかもしれない。
紙の本
上空と地上のドラマ
2020/02/16 11:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
果敢に任務に挑みながら、帰ることのなかったファビアンには胸が痛みます。不測の事態にも屈することのない、リヴィエールの強い意思も伝わってきました。
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南米大陸で、夜間郵便飛行事業に挑む人々の一夜の物語。激しい嵐の中、仕事にかける男たちをクールに、夜の静けさと恐ろしさ、そして美しさを描く。まさにハードボイルド。
随分昔に新潮文庫版を買っていたような気がするのだが見つからず。
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サン・テグジュペリの物語は優しさで溢れている。
それは、
厳格さという姿だったり、
妻の愛という姿だったり、
すべてを包み込む星空だったりする。
雲ひとつない星空と嵐の吹き荒れる暗天。
厳格な指示を出す社長と、帰りを待つ妻。
通信室の戦いと、空の上での戦い。
対立したものが意味するものは、
同じものなのかもしれない。
全ては優しさが溢れている。
美しい描写の中で、
かくも儚く戦う人たちの姿を思い描かずにはいられない。
そこにあるロマンを感じて、
ワクワクドキドキしながら悲嘆にくれて、
それでも前に進む力をもらった本でした。
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2010.8.18
すごい透明感。
リヴィエールに対して批判的に入ったんだけど、解説を読んで、ちょっと見方が変わった。
また旅に行きたくなった。
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夜間飛行がまだ冒険的な事業だった頃のお話。
夜の描写が美しい。あの内気で繊細なタッチが作品から実感できる。
パイロットかっこいい!って思わず思ってしまう作品。
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20世紀初頭、南米と欧州を結ぶエアメールを運ぶ夜間郵便飛行という事業に挑む男たちがいた。
パタゴニア、チリ、パラグアイから飛んで来る3機は、ブエノスアイレスを目指していた。突発的な暴風雨と闘うチリ便のペルラン。パタゴニア便のファビアンも、また激しい嵐に襲われ懸命に飛び続けようとする若きパイロットたち。彼らを地上で支援する監督官・ロビノー、老いた現場主任・ルルー、指示を与える冷徹にして不屈な心をもつ社長・リヴィエール。危機に瀕した一夜の状況を命を賭けて任務を全うしようとする気高き男の姿が描かれていく物語。
もう1つの名作『星の王子さま』は、大人になってから読んだ(-_-#)これも予てから読みたいと思ってた。新訳が出たので、早速読んだ。「翼で挨拶を送る」とか「空は金魚鉢の水のようになめらか」など、描写が詩的あると同時に、深く考えさせられる。巻末の訳者解説(p164)に、「この夜間飛行の挑戦的相手は三つある。自然の脅威・人為的過誤・政治的雑音である。リヴィエールはそれぞれに全力で挑み、克服しようと最善を尽くしてきた。しかしそれでもなお犠牲が生じてしまう。」と書かれている。いかなる困難をも可能と成らしめるもの、それは勇気、ネバー・ギブアップ!だと思う。作者の実体験に基づいて書かれたと云う多くの示唆に富んだ物語、心して読みたい作品だ!
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南米の夜空を飛ぶ飛行機パイロットと雇い主の郵便会社の話です。この話の何よりの魅力は、情景描写が美しいこと! 一晩中飛び続けた後、眼下に一軒だけぬるやかな時間に身を置く家が見えたり、高原に光がたまっていたり、自然と機上から眺めている気分になりました。すごすぎる……。
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南米大陸での夜間郵便飛行の新しいビジネスに挑戦する人々。嵐がやって来て、それに遭遇する操縦士。地上でそれをサポートする人々。操縦士の帰りを待ちわびる妻。各々の立場でストーリーは展開していく。不屈の闘志で、新しい仕事に挑戦している人たちの気持ちが伝わってくる一冊。
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サン=テグジュペリの
人をみつめる目
大好き。
透明なのに
たしかなもので
みたされている。
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夜間飛行による郵便事業という、1930年代の先進的事業をパイロットとして従事する側と、様々な反発を抑え事業として遂行する側、短い時間軸の中にそれぞれの使命感や思いが描かれていて、道を切り開く人々の崇高さを感じる作品でした。
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乱気流に巻き込まれるパイロットと地上で冷徹に支持を出す社長ののクールかつ熱いストーリー。風景が見えます。
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図書館で借りた。
最近、読みやすい本ばかり読んでたんで、余計なモノを一切削ぎ落とした本書は、読み応えがあった。
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光文社古典新訳文庫、は新しい感じがして読みたくなる。
新しい本とはあまり縁がないから素直に嬉しい。
だけど内容は古典、というのはなじみがあって安心だ。
というわけで、図書館で借りて読んだ。
最初、登場人物たちのあまりの聖人さ、のような印象に、
導入部分ではのってこなかった。
だって甘ったれ自己中、ナルシストみたいな登場人物が出てくる物語ばかりに最近は馴染んでいたら。
でもこの本はとても薄い。
1/3はジョットの序文と訳者解説でしめている。
なので、ノらない気分を無視して越したら…
やっぱり面白かった。
ハードボイルドなのね。
自然と人間と機械と文明、お金。
そういう要素の対立や関係を含みながらも、
アンデス山脈や南米の大地を
小さな2人乗りの郵便プロペラ機が飛んでいく。
幌もないんだよ。
夜の闇に、計器は見えず、頼るのは短波無線での
のろしのような、メッセージの伝達リレー。
現在位置だってすぐにわからなくなる。
孤独。
そして孤高。
訳者あとがきが研究論文みたいに長くって
なんだか拍子抜けしちゃって
書くことが思い当たらないけど、
要は、人の生の営みの光は、なんて頼りないものなんだ、
だけど高貴でかけがえがなく、夜の暗闇に瞬いている…
うーーん。。
人の魂の存在というか、営みの愛おしさを、
はかなく、夜の闇に消えていくような苦しさを伴って
気高くみつめている??
詩的な文章に私の文章もなんだか気持ち悪いね。
訳者が書いているように、宮沢賢治と通じるような
そんな、えーっと、、
語彙が出ない。
思い出したら書きます。
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「星の王子様」の作者サン=テグジュペリのもう一つの名作。
童話ではなく、中小企業の経営者、中間管理職、平社員などの苦悩が描かれた大人の小説。その苦悩は現在まで、そのまま続いている。