紙の本
知られざる生物の感覚器の進化について学べるとっても興味深い一冊です!
2020/02/20 11:13
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、生物にとっては生きていく上で欠かせない各種の感覚器について、生物の進化とともに、これらの感覚器官も進化してきた経過を丁寧に解説してくれる一冊です。図解で分かりやすく説明されてるので、見ているだけでも楽しめる書となっています。同書を読まれることで、どんな感覚を感知するかは、どんな刺激があるかではなくどんな感覚器があるかによって決まる、とか、「眼」は無脊椎動物では皮膚からつくられ、脊椎動物では脳からつくられる、とか、動物が水から陸に上がるとき、呼吸器と嗅覚器は一つになり「鼻」となった等の面白い事実を知ることができます。ぜひとも、多くの方々に読んでいただきたい絶対に興味深い一冊です!
紙の本
生物学にあまり関心のない人にも気軽に読める本
2011/03/26 20:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
進化の過程や発生の過程も簡単に解説しながら、いろいろな動物の感覚器の構造について紹介している。一般向けの手ごろな解説書になっている。
五感といわれる感覚の各受容器、すなわち視覚器、味覚器、嗅覚器、平衡・聴覚器(電気受容気を含む)、体性感覚器(触覚、温覚と冷覚、痛覚、赤外線受容器)について、紹介している。特に一章を設けて、水中から陸上に上がり再度水中生活に戻ったクジラの感覚器について、進化の過程で各感覚器がどのように変容してきたのかについて、述べている。
感覚器の構造の絶妙な仕組みが解るとともに、環境との相互作用でその構造がどのように変化発達してきたのかが解る。生物学にあまり関心のない人にも気軽に読める本である。
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難しいけれど、豊富な図で説得力を充分にもたせている。クジラについての話は目から鱗。ダイナミックで読み応えもあり、余韻の残る名著、
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特定の感覚に特化した本は多い。また人間に関する感覚に関して横断的に網羅した本も少なくない。しかし生物であれば無脊椎動物まで、進化史であればカンブリア紀まで網羅したものとなると一般書ではなかなかお目にかかれない。専門書では、なおのこと。
その一つが、脊椎動物の眼の「設計ミス」。脊椎動物の眼は反転眼と呼ばれる。神経が視細胞の上を通っているからだ。要するにセンサーの上を配線が通っているということだ。これでは配線が邪魔だし、配線を下に通すための穴も開けなくてはならない。これが、文字通りの盲点となる。この言葉、比喩ではなく解剖学用語なのだ。ちなみにイカの眼はそんなアホな設計になっていない。配線はきちんと裏を通っている。イカの眼に盲点はないのだ。
しかし、そんなアホな設計でも、十分役に立つ。
十分役立つのであれば、「そのへん」のもので「間に合わせる」し、間に合わせることしか出来ないのが生物というものであり、それをどう間に合わせて来たのかというのが進化である
その点で本書が秀逸なのが、クジラの感覚器を最終章に持って来たところ。水中に適応した感覚器を地上向けに間に合わせるのはなかなかの難事業だったはずなのに、今度はそれをまた水中に再適応させなければならなかった彼らは一体どうしたのか。彼らがどうしたのかを知ることは、進化がどのように進むかということを理解することでもある。
それにしても「感じる」はいつ「知る」になったのだろう。そもそもヒト以外の動物たちは世界をどう感じているのだろう。この設問は残念ながら「感じる」ことは出来ない。「錐体」したヒトの眼では、トリの眼に何が映っているかは絶対に見えないのだから。しかし考えることは出来る。感覚できなくとも感動することが出来る。そんな感動を本書から得て欲しい。40億年の時を経て、感じるを超えて考えられるようになったあなたには。
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この本を読み終わるのに二週間以上掛かった。
なぜなら、
本書を読んだら10分ほどで、
空恐ろしいほどの眠気に襲われ、
夢の中へ行ってみたくなってしまうためである。
眠れない夜のお供にどうぞ。
冗談はさておき、
眠くなってしまう理由は、
専門用語が乱立しているからだと思われる。
もちろん、
その意味は懇切丁寧に説明されているのではあるが、
いかんせん、理解の及ばない言葉の羅列というものの睡眠有引力は侮りがたい。
かといって、
面白くないかと問われれば、
やにわに「否」と答えるだろう。
それぞれの感覚器をつまびらかにしていくと、
生物がいかに生活環境(他の生物がいる状況も含め)に左右されていくのかがわかり、
人間の行動が社会環境(枠組み)によって決定されていく様に似ていて興味深かった。
聴覚や体制感覚に基本要素がないのは、
化学物質を受容しないから理解できるのだけれど、
嗅覚に基本要素がない(発見されていないだけ?)のはなぜだろうかと考えた。
…すぐやめたが。
と、
なんだかレビューではなく日記のようだと思いつつ、
キーボードから手を放す次第。
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視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚といった感覚がどのように進化していったのかを、さまざまな生物を比較しながら辿ってゆく内容。
それぞれの代表的な感覚器官(主に五感)ごとに章だてされ、解説も専門用語がかなり出てくるが、丁寧に説明されているのでわかりやすい。
全部読み終えると、ヒトとは各刺激に反応するセンサーと、それを脳まで結ぶケーブルで構成され、体はそれらを守る被覆菅のようなものに過ぎないのではないかと思えてしまった。そこには風景を見て美しいとか、音楽を聴いて感動するといった感覚は一切無い。いかに敵から身を守り、環境に合わせる/耐えるかといったような、生き残るための感覚の進化史が豊富な図版で描写されている。
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視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚の仕組みと、進化の過程について解りやすく書かれている。図も多く、理解しやすい。
人としての自分が感じている感覚は他の生物の持つ感覚とはまた違ったものであろうし、そうなると世界のあり方も違ったものになるのだろうと思う。
内容的には、2章の視覚器と、7章のクジラの感覚器が興味深かった。
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動物の感覚器はどのように作られてきたのか。視覚,味覚,嗅覚,平衡・聴覚,体性感覚の五感について,無脊椎動物から哺乳類まで,くわしく見ていく。
動物にとって感覚器は,外界の様子をキャッチして,適切な行動をとるために不可欠の器官だ。視覚器は周囲の状況を光で感知し,味覚器は摂取する物体が安全か危険かを判断するなど。ただ人間の味覚など,毒見というよりは美味を堪能する文化的な機能のウェイトが大きくなっていることも興味深い。
感覚器からの情報が脳に伝わると「感覚」が起き,それに強さや時間的経過が加味されて「知覚」になり,さらにそれが経験に基づいて解釈されて「認知」となる。
刺戟と感覚器のどちらが欠けても「感覚」はありえない。またどんな感覚が起こるかは,刺戟の種類でなく感覚器の種類で決まる。例えば視細胞は光だけでなく機械刺戟にも反応するが,その機械刺戟で生ずる感覚は光を見た感覚になる。視細胞からの信号は視覚中枢に送られるからだ。
進化の過程で感覚器がどう変化してきたかというのも大変面白い。視覚器ははじめ体表に分布した明暗を識別する程度のものだったが,それが次第に集まり,凹みをつくるようになって,光の来る方向を識別できるようになる。そして入口が狭くなって,ピンホールカメラのようになり,それでは光量が不足するのでレンズができて,さらに明暗に対応するため絞り(虹彩)ができた。無脊椎動物の視覚器は皮膚由来,脊椎動物では脳由来だが,両者の進化が結局は似たような構造に落ち着いている(収斂)のも興味深い。哺乳類の視覚器など,カメラとそっくりで,収斂現象は生物の進化の範疇にとどまらないかのよう。すごい。また,進化の過程で使われなくなった感覚器は退化する。典型的なのは,光の届かない地中や深海,洞窟で暮らす生物が視覚器を失っていること。
ただ,どんな動物にも共通する感覚器がある。それは平衡覚器で,重力の方向を感知し,体の傾きを知る。面白かったのが,ザリガニの平衡覚器。平衡覚器の中央には小さな石があり,その偏りによって重力を感知している。普通はその石は体内で自前で作るのだがザリガニは違う。ザリガニは水底の砂を自分で平衡覚器に入れて,その偏りで重力の方向を感知する。脱皮のたびに砂は排出されるので,ザリガニを砂のない水槽で飼うと,脱皮後に平衡感覚を失って転げてしまうという。さらにザリガニを砂鉄を敷いた水槽で飼うと,脱皮の後に砂鉄を平衡覚器に入れてしまい,磁石を近付けると,そちらが下の方向と勘違いして奇妙な動きをするそうだ。へえ,初耳だ。
体性感覚とは,皮膚や筋肉で感じる感覚。皮膚の方は触覚,温覚・冷覚,痛覚とおなじみだが,筋肉で感じる「固有感覚」は知らなかった。腕がどのくらい曲がっているか,とか,どれだけ力を出しているか,というのを無意識に自覚して動作をしているが,それが固有感覚。
最後の章は,まとめとしてクジラの感覚器について。「進化は後戻りできない」の例として,陸へ上がった後再び水中へ帰ったクジラの感覚器を見ていく。結構盛りだくさんで楽しめる本だった。
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クジラはどのようにして水棲出来る形に進化したのか、という問いの答えがここにある。
ヒトの耳小骨のうちツチ骨とキヌタ骨はサメのような硬骨魚類でいう顎の骨に相当するようだが、クジラはさらに、通常の哺乳類における下顎骨の一部を切り離して中耳骨の役割を果たす骨に作り替えている。
「いちど進化の過程で失ったものを再び作りだすことはできない」が、同じ方向の進化をもう一段階起こしていることには驚きである。
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心理学に興味を持ち、色々本を読みあさっていてたどり着いた1冊。この本は生物の持つ感覚器について、(1)その仕組み、構造、(2)進化の過程という2つの観点で説明している。
(仕組み・構造は、細かな部位の名称が多く出てきてややこしく、さらっと読み飛ばした。タイトルに"図解"とあるが、感覚器の構造を図解している。自分は文字を読む方が面白かった。)
この本は、無脊椎動物、水棲脊椎動物、陸棲脊椎動物、そしてヒトに至る進化の過程で、生物がどのように環境に適応し、進化してきたかという形で感覚器について説明している。最後に、陸に上がったにも関わらず、再び水に戻っていったクジラをあげて総括といった感じ。水から陸へ、またその逆も、体の仕組みを大きく変えなければならない。生物の涙ぐましいほどの環境への適応の繰り返しが、これほど精巧な器官を作ったのかと考えると感動を覚える。
一眼レフのカメラを触った時も、似たようなことを考えた。絞り、感度、シャッタースピードといった設定を少し変えるだけで出来上がる写真がまったく違ったものになる。なかなか思い通りの仕上がりにならない。人間の目はこれだけの調整を意識せずに行っている。
『どんな感覚を感知するかは、「どんな刺激があるか」ではなく「どんな感覚器があるか」で決まる。』とある。普段私たちが感じている物事も、物理的には感覚器の発する電位変化から脳が作り出したものだ。そこからなぜ、喜怒哀楽といった感情が生まれ、環境の変化に一喜一憂するのか?そんなことを考えてしまう。
細かな雑学も知ることができて、面白かった。
・現生生物の多くでは退化した「頭頂眼」。脳内の松果体として残る。三つ目がとおるの話との絡みが面白かった。
・味物質の相互作用、嗅覚との関連。おいしいものは、なぜおいしいと感じるのか?
・視覚には色の3原色、味覚には5つの基本味。それらに相当する嗅覚の「原臭」はまだ明らかになっていない。
他にも色々。
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「読売新聞」(2014年4月13日付朝刊)で、
池谷裕二先生が紹介しています。
(2014年4月13日)
アマゾンに注文しました。
(2014年6月26日)
届きました。
(2014年6月28日)
読み始めました。
(2014年7月9日)
どんな感覚を感知するかは
「どんな刺激があるか」ではなく
「どんな感覚器があるか」によって決まる。
(15ページ)
「眼」は無脊椎動物では皮膚からつくられる。
脊椎動物では脳からつくられる。
(23ページ)
この世界を最初に感じた、
最も原始的な感覚器は「舌」の先祖だった。
(76ページ)
【この言葉、悠久の時間への夢想に誘われる】
(2014年7月11日)
ヒントとアイデアの宝庫です。
(2014年8月5日)
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「図解 内蔵の進化」が面白かったので、この本も購入。
これまたえ~、へぇ~の連続でした。
身体に興味ある人にとっては、刺激的な本。
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餌を探すため、繁殖相手を見つけるため、感覚器は動物に欠かせない。ミミズの原始的な「眼」からクジラの絶妙な「耳」まで、壮大な進化の物語!
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進化って凄まじいな。
まさにダーウィンさんが言った“struggle for existence”!
生き残るためのあがきである。
Mahalo
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筆者の後著『内蔵の進化』が名著すぎたせいか、同じ感動は得られず。
そもそも外から見える感覚器は、それぞれの種族の役割に応じて大きく形を変えているが、中身としては感覚細胞で得られた微細反応が神経線維を通して脳に伝えられるという構造は変わらない。
内蔵のときに感じた、段階的に機能とともに形状が進化していく過程感はなく、結果としてのそれぞれの種族の違いを語られているように感じてしまい"進化"の醍醐味は薄い。
とはいえもちろん、その他の雑学本とは一線を画して面白いのは間違いない。
視覚器一つとっても、
・脳からつくられる眼と、皮膚からつくられる眼
・かつて祖先にあった頭頂眼が退化し体内時計を司ることとなった松果体
・魚眼レンズ、瞬膜、退化した眼球に残る痕跡
などなど、進化の過程で得たもの、失われたものがわかりやすく学べる。
なぜモグラの視覚は失われ、なぜフクロウの耳は左右の位置が違うのか。
形態の理由は研究者でなくとも想像することはできるが、
どのように進化し、どのように退化してきたのかはわからない。
今、見えないもの、失われたものを考えるという感覚は、おそらく人間にしか備わっていないものだろう。
ただ、これを使うか使わないかは、それぞれの人間次第とも言える。
普段使わない器官が衰えているならば、本書で活性化させることができるだろう。