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門
著者 夏目漱石 (作)
横町の奥の崖下にある暗い家で世間に背をむけてひっそりと生きる宗助と御米.「彼らは自業自得で,彼らの未来を塗抹した」が,一度犯した罪はどこまでも追って来る.彼らをおそう「運...
門
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門 改版 (岩波文庫)
商品説明
横町の奥の崖下にある暗い家で世間に背をむけてひっそりと生きる宗助と御米.「彼らは自業自得で,彼らの未来を塗抹した」が,一度犯した罪はどこまでも追って来る.彼らをおそう「運命の力」が全篇を通じて徹底した〈映像=言語〉で描かれる.『三四郎』『それから』につづく三部作の終篇. (解説 辻 邦生・注 石崎 等)
目次
- 目 次
- 門
- 解 説(辻 邦 生)
- 注 (石 崎 等)
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紙の本
『それから』の後?
2024/04/21 23:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る
『それから』の代助のその後が宗助とは思わない。物語的起伏もなくわびしい生活感、孤独感、閉塞感にずっと浸されていて、前作の息苦しさは諦念と化している。しかしお見事。漱石のこの地味な小説は素晴らしい。
紙の本
ハッピーエンド?ではない
2018/06/25 17:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:けんたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
宗助は,友人から女性・御米(およね)を奪い結婚していた。
一番ヒヤリとさせられたのは,運命のイタズラで,その友人に鉢合わせになりそうになったこと。
結局セーフで,ほっとした。
吹き荒れていた勤務先の役所のリストラも免れた。
しかし,決してハッピーエンドという読後感は無く,宗助と御米の罪の意識が消える時はないのであろう。
紙の本
人間という井戸に深くつるべをたれ、他者との関係という糸をどこまでも巻き上げるような味わい−−読むにふさわしい時期が来るのを待って
2001/01/01 00:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
児童書で「対象年齢がないと不便」「同じ小学校低学年でも個人差があるから対象年齢はナンセンス」云々という議論がある。
この漱石の『門』については、夫に続いて私が読み終わり、ふたりで話をした折に、「読むにふさわしい年齢がある。若い時だったら味わえなかった」というのが共通の見解であった。
「欲情の交歓を経たあとの夫婦」とでもいうのか。あるいは、プルタルコスの『愛をめぐる対話』に、「健全な理性を働かせ自分を抑制して、恋からその狂おしい、それこそ火のような要素を取り除くならば心の中に残るのは光と輝きと温かさで、(中略)そうなれば、愛する者は愛される者の肉体を素通りして、相手の内部に入り込み性格に触れるようになる」とあるらしいが、必ずしも夫婦でなくとも、そのような思いを経た男女が、歳月を重ねたあとに読むにふさわしい、いや、読むべき一冊と思えた。
読みやすい文字組、本文233ページの文庫本は手頃な分量である。内容も、複雑な情況設定やプロットがあるわけではない。
しかし、夫も私も、似たようなペースでこの本を読んだ。一気には読めなかった。一日に20ページぐらいずつ−−2週間近くかけて、ゆっくり舌の先でお酒を転がすように読み進めた。
何を味わったか。「うまし」は、やはり文体である。
「人はいかに生くべきか」「書くとは、文学とは何であるか」という哲学的思索に立った上で、漱石は『文学論』に提示した公式[認識的要素(F)+情緒的要素(f)]に基づき、作品を書き続けた。観念的なものに引きずられながら、しかし、著された作品は、100年近い時をこえた今でも平易な言葉でわかりやすい。衒学的でなく語彙が豊富で、淀みのない美しい言い回しである。
同じテーマを書いたとしても、その人の文体いかんにより、きっと文学か否かが分かれるのだろうという気にさせられる。
「苦し」味わいは、『門』に象徴されるテーマであった。言ってみれば、「運命の裁き」である。
「この世に生きているのは私どもふたりだけ」といった印象の宗助と御米という夫婦が、寄りそって睦まじく静かに生きている。
静かに…そう、私だったら『サイレント・ライフ』というタイトルをつけたいぐらい静けさが身にしみた。
それが、小さな家に宗助の弟の小六が同居しなくてはいけなくなり、家主の坂井宅に泥棒が入った一件が縁で、宗助と坂井に交流ができ、御米が小六との生活のストレスで体調を崩していくことなど変化が起こり、夫婦の静けさが過去の大きな災厄のあとに得られたものであることが次第に明らかにされていく。
ふたりは、道ならぬ恋の結果結ばれたが、それにより一人の友人を破滅させ、家族や縁者との真っ当なつきあいから外れなくてはいけなくなった。その上、因果応報、ふたりの間にできた子どもはむごたらしい死産か流産で、いわば明るい将来展望を絶たれたかのような裁きに殉じている−−それが静かな生活の実体なのである。ふたりの運命が、門というタイトルに象徴されている。
読んでしまうと数週間引きずる。読んでよかったのかと思うような引きずり方である。しばらくその答えは出そうにない。しかしきっと、何年かのちに、あの適齢期に出会えず何も考えなかったら、さぞかし残念だったに違いないと思えるのではないかと、そんな気がする一冊でなのである。
この岩波文庫は、註が丁寧で、漱石の足跡が追えるのでいいということも付け加えておきたい。