国家ヴィジョンと戦略が明快でわかりやすい
2010/06/18 01:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mignonne - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の波頭氏が経営コンサルトをされているだけあって、問題提起だけにとどまらず、日本がとるべき国家のヴィジョンとその戦略がきちんと示されていました。日本の経済等について、各国との比較や推移などを数字やグラフを用いて示しており、非常にわかりやすかったです。
方向はただしいかもしれないが,ひっかかる点もある
2012/01/29 23:16
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の経済は成熟したのだから,経済成長をおいもとめるより分配をこそ,かんがえるべきだという. 著者はさまざまな統計をとりあげながら,そういう時期にきていることを主張する. ほかにも同様の議論をする経済の専門家はすくなくない. そのなかでは説得力のある議論をしているといえるだろう.
しかし,ところどころ,ひっかかる議論がある. 著者は医療費を無料化することを主張している. たいした病気もないひとが病院にあふれるようになってもよいというのだが,そんなコストを税金ではらっても,ゆたかになれるというのだろうか. また,平等をめざす議論のなかで,成熟した社会であれば共産主義はうまくいくかもしれないという話がでてくるのだが,これはエンゲルスの亡霊だとしかおもえない.
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
成熟した、っていってもまだまだ成長の余地はあると思うのですが……。それと、医療費の無料化はどうなんでしょうか?昔、お年よりだけ無料化していたことがありましたね。結局、色んな理由でやめましたけど。
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頭が良い人というのはこういう人のことを言うんだろう。
ここまで明快に理路整然と現在の日本の状況とあるべき姿を論じた人を知らない。
知識をひけらかすか、ためにする議論か、ちょっと難しいことを言って煙に巻くか、まったく全体像を捉えていない人が多い中。
物事をわかりやすく納得感を持って伝える能力は、人を動かす上でも最も重要な能力だと思うが、この人はその能力がずば抜けている。そしてその背景には全体から部分へ、MECEといった原則を踏まえていることにある。
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今、日本で最も求められているのが、新しい国家ビジョンである。
成熟フェーズに入った社会において強引に経済成長を促進させるために公共事業を繰り出すのは、老人に霜降りステーキを無理矢理試させるようなものである。
成長戦略はいらない。
成熟化時代に取るべき経済政策は、産業構造のシフト。具体的には2つある。1つは公共事業の減少と社会保障、福祉サービス産業の拡大と充実。杉並区では区長のビジョンの元、大幅に行政コストを省くことに成功した。その結果900億円あった負債を12年間で完済することができ、4800人いた職員を10年で1000人減らした。これでも杉並区民は75%も満足している。
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著者、波頭亮さんには、1990年代、
何度も取材でお話を聞きました。
この本の波頭さんの「成熟」ぶりには、
驚嘆しつつ、共感します。
ぜひ、お読みください。
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2010.08.16購入 8.26読了
「成長論」から「分配論」へ、といふ副題が付いてゐる。
以前から、今の日本必要なのは経済成長ではなく経済成熟ではないか、といふ漠然とした考へを持つてゐたが、この本は、その経済成熟の一つのあり方を示したものであり、大変興味深く読んだ。
バブル崩壊以降の日本が、新しい方向を打ち出せないまま漂流してゐることは、もはや定評である。変はらねばならぬ、と分つてはゐても変はることができない。あるいは、変はる必要性から眼を背ける。かうした知的な停滞には、様々な理由を挙げることができるだらうが、指導者層の知的水準の低さと労働市場の硬直性が大きな要因ではないだらうか。
その二点が、この本では明確に指摘されてゐる。1995年から2005年に高い経済成長率を実現した米国とデンマークを取上げ、両者の共通点は
1) 教育への投資が世界トップ水準で、
2) 労働者を解雇しやすいこと
だといふのだ。前者については、国家ヴィジョンの不在、「官僚のポチ」に堕したメディアといつた問題点も挙げられてゐる。後者については、デンマークでは高福祉だからこそ企業は解雇でき、解雇された側も失業手当や職業訓練が充実してゐるので困らない、といふ記述に興味を持つた。
80年代には、終身雇用が日本の強みだと言はれたものだが、大変革期の現在、それが大きな重荷であることは間違ひない。会社の経営の負担になるといふだけではなく、社会全体として見ても、有能な人材が衰退産業に留まれば、これから伸びるべき企業(それは、しばしば小さな企業なのだが)は、必要な人を採用できない。人の出入りが無いと企業が内向きとなり、率直な意見が言へなくなる。一度、有利な地位を得ると、そこにしがみ付く。日本社会のある種の息苦しさの根源だ、と言つても良からう。
「国民の誰もが、医・食・住を保障される国づくり」といふヴィジョンを実現するためには、医療・介護サービスの拡充や外貨を稼ぐ産業の育成による「産業構造のシフト」が必要であり、その際には「成長論から配分論へ」の転換や、「市場メカニズムの尊重」が重要だ、といふ指摘に止まらず、実現の鍵として、組織体制・制度・ルールの見直しが欠かせないとして、官僚機構の改革まで説き及んでゐるのは、周到である。最後に、国民が変はらなければならないことも忘れずに書かれてゐる。
個別の論点については、異論もあらうが、現在の日本が抱へる問題点と、解決の処方箋を示した書物として、広く読まれるべき本だと思ふ。
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福祉と教育を高めることによって、柔軟な雇用が可能になるとする。そのような社会を築いたデンマークは、高効率な経済運営を実現している。
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高福祉高負担型の国家モデルを提案。
医・食・住
が保証されるためには、いくら何に国家予算を割り当てるか。
また、その財源確保のために、何を削り、どう補填するのか。
データと話の展開も明瞭かつ違和感なく記載されている。
序章まとめ。
タイトルの通り、成熟した日本に、経済発展を促す様な政策は的外れ。
今の中国やブラジルには経済支援政策が効果的かもしれないが。
日本に対しては、老人にステーキを与える様なもので、その効果は期待できない。
政府が発行している不必要な割り当てに対しては、しっかり酷評している。
良いものは良い、悪いものは悪いと言い切り、かつデータに基づいてオールタナティブを提示している。
とても好感が持てるし、賢い著者だと恐れ入る。
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[ 内容 ]
日本はこれからどの方向に進んでいくのか。
政治は迷走し、国民は困惑している。
既に成熟フェーズに入った日本は必然的に国家ヴィジョンを差し替えなければならない。
そして、経済政策や政治の仕組みを再構築しなければ、社会は一層暗く沈滞していくだけである。
国民が「自分は幸せだ」と思える社会の姿と、そうした社会を目指す政策、およびその政策を実行するための戦略と新しい社会のしくみを明快に示す。
[ 目次 ]
1 二一世紀日本の国家ヴィジョン(国家ヴィジョンの不在;日本が成熟フェーズに入ったことの意味;新しい国家ヴィジョン―国民の誰もが医・食・住を保障される国づくり)
2 経済政策の転換(成長戦略は要らない;成長論から分配論へ;産業構造をシフトする二つのテーマ;この国のかたち:社会保障と市場メカニズムの両立)
3 しくみの改革(行政主導政治のしくみ;官僚機構を構築している四つのファクター;官僚機構の改革戦略;国民が変わらなければならないこと)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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経営コンサルタント波頭氏の書籍。明快な政策提言がなされており、今後の日本経済を考える上で大変有用だと感じた。
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日本は成長フェーズから成熟フェーズに入り、経済成長を促進するための政策や経済成長を前提としたシステムは機能不全に陥っている。国民の誰もが医・食・住を保証される国づくりを国家ビジョンとし、そのグランドデザインのもとで産業構造のシフトを図っていく。その道のりが具体的に示され、実行にあたっての組織・制度づくりまでコンサルタントとしての実務経験を存分にいかした良書である。政治のリーダーシップ不在が叫ばれる中、政治家はせめて日本の進むべき方向と達成しようとしている未来の姿を明快に示してほしい。
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現代日本の現状を的確に成熟国家と認識するところから始まる論にはとても共感できた。さらに高度経済成長モデルのまま失われた20年をさまよってきた日本が生まれ変わる為には新しい国家ビジョンを掲げ、国家の仕組みを分配国家モデルにするという提言は筋が通っていて、勉強になった。
しかし、これを実行しようとした前鳩山内閣は国民に対するビジョンの発信力の欠如、政権担当能力不足を国民にさらしてしまった。国家100年の計と言うべきものを実行する時を逃してしまったように思えてならない。
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日本が、国民の誰もが医食住を保障される国にするための、するどい戦略が分析的に書かれている。
まず、今の日本は成長から、成熟ステージに移行した事実を経済指標から明確にして、今後の戦略を説明している。
第一歩は、従来の成長戦略と景気対策一辺倒の公共財として経済政策からの脱却からはじまる。そして、分配論を軸にした経済政策に転換して、国民全員に手厚い社会保障を公共財として提供する。その際の財源は、富めるものへの増税で30兆円規模でおこない、同時に歪められた財政構造と非合理的な政策を正す必要がある。
経済政策は、医療介護産業の規制を緩和して伸ばすのと、外貨獲得のために、付加価値が高い産業を伸ばす必要性がある。
話しは飛ぶが、これらを実現するには、現在の官僚体制と特別会計を抜本的に見直す必要がある。
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読みやすいが、内容は手放しで共感できない。セーフティネットが重視されることは反対しない。ただし意欲的に仕事に取り組んで、グローバルな時代に独り立ちするための攻めのポイントがほとんど無いからである。これでは日本全体がじり貧になり衰退するのは間違いない。