紙の本
タイトルが良くない。
2013/03/16 00:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルと著者のプロフィールから、せっかくの中東の諸改革に茶々をいれる内容かと思いきや、「生の」声と、善も悪もなく、混沌としたマグレブ世界の現状が見えてきた。最近の新書に多い、内容と吻合しない煽情的なタイトルは考えて欲しいモノである。
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ベイルート生まれのジャーナリスト重信メイによる中東革命の裏側。日本や欧米のマスコミは勿論、アルジャジーラですらかなり偏ったバイアスを掛けた報道をしているようです。「ジャスミン革命」に代表される、"FacebookやTwitterによって民衆が革命を起こした"という分かりやすいストーリーが様々な政治目的に利用されているのが現実。リビアやシリアのクーデターはジャスミン革命とは程遠く、内戦を煽る事でその地域での戦略的優位を確保したい欧米と露中の駆け引きにすぎないと。またバーレーン、カタール、イエメン、モロッコなどで起きた出来事はほぼ無視され続けている事も、私達がいかにアラブ世界から遠いのかを教えてくれます。報道の読み方というものはつくづく難しいですね。
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パレスチナや中東問題を専門とするジャーナリスト、重信メイが著者。ときどき、TVでも見かける美人ジャーナリストだ。だが、重信メイがなにより注目されるのは、母親が日本赤軍のリーダーだった、あの重信房子だからだろう。その特異な生い立ちは興味を惹かれるが、この本自体は中東問題を丁寧に解説していて、ボクのような中東シロウトの格好の入門書だと思う。
アラブの春は、中東の小さな国、チュニジアで始まった革命だ。実際、政権交代が起こっている。それがエジプト、リビア、イエメン、オマーン、サウジアラビアへと飛び火していく。このあたりの説明は、現地を知っている人ならではの臨場感を感じる。だが、日本人の中東感覚を理解している著者ならではの配慮だと思うが、説明はとても丁寧なものを感じる。たとえば、
リベラル派を中心として起こったチュニジアのアラブの春(ジャスミン革命)は、よりイスラム的な政治を求めるムスリム同胞団が勝利した。重信メイはこれを、「革命を起こした当事者が求めていたことが、”より自由な社会”であるとしたら、彼らの望みどおりにならない可能性が高いだろう」と冷静に分析する。このあたりは、とても冷静に判断していると思う。
また、スンニ派とシーア派をどうやって見分けるのか、また、その対立する理由はどこにあるのか? アルジャジーラの果たした役割は? そのアルジャジーラが抱えるタブーとは? など、まったくのシロートであったボクは興味深く読むことができた。
重信メイは、パレスチナ問題は宗教的な問題でも民族的な問題でもないという。それは、彼女にしてみれば「人間的な問題」であるのだと。人間として絶対に許してはいけないことがパレスチナで起こっている、そういう問題なんだと。ボク自身は、やはり宗教や民族の問題ではあると思うけど、重信メイの主張は、なるほど、その場所で生まれ育った人だからこその意見なのかもしれないとも思う。中東に住む人たちの肌感覚を教えてくれる本だと思った。
千夜千冊でも取り上げているので、URLをつけておく。
http://1000ya.isis.ne.jp/1488.html
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アラブの春。言葉だけ聞くと、そしてたまにメディアで読み聞きする浅い知識から考えると、「おお、良く分からんアラブにも民主化の波が来てるのか、ふんふん」と考えてしまう。
だがこの本は、そんな浅薄な知識を思いっきりぶち壊してくれる。
そうだ、そもそも我々は西側の、というよりアメリカの同盟国である日本の、メディアからしか情報を得て無く、そしてそのことが如何に無知と偏見を助長しているかが良く分かる。
今内戦状態に陥っているシリアのことにも触れてあるが、より良く知りたい人には元シリア大使であった国枝氏の「シリア」という本を読むことをお勧めします。
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著者は日本赤軍の重信房子の娘だそうだ。
エジプト革命が話題になったが、「アラブの春」の中では、チュニジアやエジプトと、リビアでは「革命」の性質がまったく違うと。
リビアのカダフィには「アフリカ合衆国構想」があり、金本位の地域通貨(ディナール)をつくる動きがあった。それを阻止しようとした米国・欧州によるNATO軍はインフラを空爆し、政権崩壊後の外国資本参入の素地をつくったというのだ。(カダフィのリビアは、世界最大級の福祉国家だった)
ここでもアメリカのご都合主義が見え隠れしている。
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メディアとはなんなのだろうと考えさせられる一冊。結局信じられるのは自分で見聞きして納得したものなんだなと思える。
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アラブの春でずいぶんSNSが活躍した、というようなことが伝わってきて、一方で実はそうでもないぜ、実際のところはアルジャジーラが影響大きいんだぜ、というところまでは見聞きしていた。が、アルジャジーラにはカタールの資金と思惑が入っていて、このアラブの春に関して言えば特定の視点からの報道や、意図的かと思えるような誤速報が見られたのだと。SNS上で報道機関の発表に一喜一憂してるんじゃ、釈迦の手の中だなあと改めて反省。
そして大事なことは、これらの「春」の原因が、宗教対立でも民族対立でもなく、多くは人の尊厳、権利の問題だったことだ。
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著者については他のレビューでも書かれているだろうからとくには書かない。「アラブの春」の「その後」についてのルポルタージュ。地域の状況,チリ,いろいろな名前について基礎知識がないので,一度読んだだけではわからないところもあるのだけど,一読してもっとも印象に残っているのは,各地の状況の伝えられ方,つまり,マスメディアのバイアス,ということだ。何の気なしにテレビニュースや新聞で「そうかそうか」と納得してしまうのではなく,メディア・リテラシーを鍛えなくては,とつくづく思った。
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チュニジア、エジプト、リビアで起こった民主化革命について、それぞれの国がどのように独裁政権が崩壊していったか、黒幕がどこで、どうやって情報操作が行われていたのか、現在進行形のシリア情勢が、なぜ「革命」ではなく「内戦」と評されるのか、などを正確に知りたい人は必読。
この本には、マスメディアでは絶対に語られない真実が記されています。
サウジやカタールという「金満諸国」がこの「アラブの春」にどのように関わっているのか、等についても説明されており、アラブ諸国の今を網羅的に知ることができます。
著者が中東生まれで、ここ数カ月取材で中東に滞在してたジャーナリストなので、かなり説得力ある本です。中東に行ったことある人、プロパガンダ系の情報操作の裏舞台に興味ある人にお勧めです。
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サッカー仲間のアシシ氏が推薦していたので読んでみた。
昨年秋にはじめて中東に行き、中東(アラブ)という文化に衝撃を受けた後に、この本を読んで更に中東(アラブ)の文化が知りたくなったし、また中東に行きたくなった。
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著者の重信メイ氏は、日本赤軍の重信房子とパレスチナ人の父の間に生まれたレバノン出身のジャーナリストです。日本赤軍の強烈なイメージがありますが、本書は左に大きく傾いたようなスタンスはまったくとっておらず、中東の民主化を「アラブの春」と手放しで賞賛するムードの陰に潜む政治的プロパガンダやメディアの姿などが批判的に描かれており、とても興味深い内容です。エジプト・リビア・チュニジア・イラン・イラクなどアラブ各国の動向も網羅されているので、知識をつける意味でも非常に参考になりました。
われわれは一般的にシリアのカダフィ大佐について、横暴な独裁者との報道に接し、その通り私自身も受け取っていましたが、カダフィは過去にパレスチナ解放運動に援助をしたり、インドネシア・フィリピンの民衆運動をサポートしたり、反核・反原発を推進していた人物でもあったというのは驚きでした。もっとも過去10年のカダフィは横暴な独裁者に落ちてしまいましたが、過去には27歳で1969年にクーデターに成功した革命の戦士ともてはやされた時代もあり、今でもカダフィに対する好意的な見方をもっている地域もあります。カダフィ政権下のリビアは、豊富な天然資源を背景に大学教育まで無料で行われ、医療・電気・水道料金もすべて無料というまれにみる福祉国家・社会主義国家でした。独裁者によって抑圧的な国家で苦しむ民衆が蜂起した民主化デモという側面よりも西部の有力な部族出身のカダフィに対する東部の部族が反旗をひるがえすという内戦といった側面が強かったと指摘しています。
カダフィは資本主義的経済成長に反対していたため、サウジアラビアやUAEなどの他の産油国に比べて物質的豊かさが遅れていたこと、国際社会から経済制裁を受けており、国際貿易から取り残されていたことや、カダフィを中心とした親族や官僚の腐敗といった問題などがありましたが、民主的な要素のまったくない独裁国家という一方的なレッテルはリビア政権打倒のためのプロパガンダとして、残忍で抑圧的な独裁者像が意図的に報道されていたのではないか、と疑問の声を投げかけています。
「アラブの春」の一翼をになったと賞賛されるアルジャジーラ放送局のもつタブーにも切り込んでおり、カタールが大きく設立と運営を支持しているため、当初は’’ opinion and the other opinion’’と政府・反政府軍の両方の主張を報道したり、両陣営を集めてディスカッションを報道するなどの中立的・両論併記的な姿勢が評価されましたが、支援団体であるカタール国内のデモの報道には消極的であったり、今も続くシリアの問題に関しては、アサド政権反対として、明らかな反政府サイドでの報道が目立つようになってきている、と指摘しています。アルジャジーラといった信用が高く、理性的なメディアと思っている報道機関であっても、クリティカルな姿勢で情報に接しなければいけない、ということを学びました。
この本を読んで面白く感じた部分は、官僚の汚職・腐敗、貧困、失業といったものが民衆運動のトリガーになること、です。もはや失うものがないというところまでいかなければ、民衆が動かないということです。差別や格差があっても、汚職の恩恵を間接的に受けていたり、経済的に安定した生活を過ごせている限りは自分の地位を危険にさらしてまで声をあげたり、体制の転換を求めたりすることはない。もはや失うものがないという追い込まれた状態になって初めて民衆運動が大きな力となるということでした。
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著者は、重信メイ。赤軍リーダーの重信房子がパレスチナに亡命し、現地パレスチナ人との間に生まれた娘らしい。
頭のいい人の書いた文章は、分かりやすい。中東情勢の報道に、自分なりの考えをもって臨めるようになるのが楽しい。カダフィやアサドの実情が触れられる。カタール政府から援助を受けるアルジャジーラの報道の真偽、よく考えた方がいいようだ。アサド政権やカダフィ政権は悪、なぜ早く降伏しないのだろう、と思わされていた。中国やロシアが国連で異を唱えるのも、欧米主体のメディア戦争に、自国の立場、国益がそぐわないためだった。
大切なのは、アラブの人たちだって、人間らしく住みやすい社会で生きたい、という思いに変わりは無いこと。
彼女のような良質なジャーナリストは、決して新聞やテレビではメジャーにならないのだろう。
彼女が警鐘する、メディアリテラシーを個人個人が持たなくてはいけない時代になってきているということがよく理解できた。
しかし限られた時間と労力の中で、何が正しく、何が誤りであると見極めることができるのだろうか。
そんな問いを抱きつつ、丸善を散策していると、“ブラクマティズムの作法”という本に出会った。
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その混乱は独裁者のためではなく、まして宗教や、その宗派のためでもない。そこには自分たちとそう変わりない人たちの、いたってありふれた生活があり、ごく当たり前の怒りと悲しみがある。実は、その混乱は、どちらかといえば、外側の、つまり自分たちの無知、偏見によるところが大きいのではないか。メディアの発達により、自分たちは遠く離れた多くのことを見ることが出来るようになったが、一方で、見ることによって、知らず知らず加担してしまっている。戦渦のいよいよ拡がる中、自分たちにまずできること、それがこの一冊を手に取ることである。
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アラブの春って、言葉しか知らないので、本買って読んでみた。
報道はコントロールされてること、
中東では貧しく苦しい状況があること
アメリカの余計な介入
アルジャジーラの立ち位置
とか、書いてあった。
部分的に地理に弱いし、前提知識が乏しいので、よくわからない場所もあったが、ためになった
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マニアックなイスラームの歴史や伝統でもなく、一つの町の限定された個人的な悲劇の現在でもなく、中東の今を理解できる。アラブに住む人にとっては常識なのではないだろうか。そういう基本をまず、知りたい。包括的で勉強になった。
・儲けたお金は毎年ある一定の割合(財産の2.5%)で、社会に還元しなくてはならない。それが「ザカート(喜捨)」。「ラマダン(断食)」にもセルフコントロールを学び、貧しい人の気持ちを理解できるようにという意味がある。イスラム教では一生に一度はメッカに巡礼することが好まれているが、巡礼では真っ白いシーツのみを身体に巻く。神の前では皆同じ、という考えを元にしており、社会主義的な平等精神に通じる。共産主義と宗教であるイスラムは敵対的と思うと、意外と相性が良い。
・アルジャジーラは中東のプロフェッショナルなジャーナリスト集団というイメージがあるが、そもそもはカタール国王が設立したもの。人口60万人程度のアラブでも存在感の薄い国で、隣のサウジアラビアに併呑されるのではないかとの危機感から、国際的な存在感を増すために設立されたのが始まり。
カタールも(カダフィの)リビアも天然ガス輸出国。最大輸出国はイランだが、その後を追うロシアとカタールは産出量や価格をコントロールしようと協力しており、エキセントリックなリビアを抑える利害関係があった。
・リビアのカダフィは西部の大部族のリーダーの血筋。経済の中心は東にあり、デモや暴動がおこったのも東部のキレナイカ。
・シーア派の語源は「アリー派(シーア・アリー)」。ムハンマドの娘婿アリーの血筋だけに指導者(イマーム)の地位を認めるという立場。
スンニ派の語源はムハンマドの時代の慣行(スンナ)を守る人、というもので共同体での話し合いで指導者を決めようとした人たち。