何度読んでもこの短編は素晴らしい
2021/06/18 07:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和22年3月に発表された太宰治屈指の短篇小説。
文庫本にしてわずか30頁ほどの作品だが、その完成度は高い。
戦争時に空襲に罹災し、生家である青森に疎開していた太宰が東京に戻るのが、戦争が終わった翌年の昭和21年の秋のこと。
そこから死の年昭和23年までほんの短い時間である。
そのわずか2年ばかりに太宰は人々の記憶に残る「晩年」を送ることになる。
この短編は、その「晩年」をまさになぞったような作品である。
なんといっても、書き出しがいい。
深夜に帰宅してなにやら探している夫。妻である私は気づいたが黙って寝たふりをしている。そこに怒鳴り込んでくる中年の夫婦。
まるで疾走するかのような物語の展開に、読者はたちまち太宰の世界に連れ込まれていくはずだ。
夫はナイフで脅してそのまま逃走。残された妻が夫婦から話を聞けば、彼らは飲み屋の夫婦で夫は彼らの店に入り浸ってお金をほとんど払っていない。しかも、今夜は店のお金まで盗んだという。
妻は翌日から彼らの店で働くことで、夫の借金を帰そうとする。
けなげな妻は、夫にどんなにひどい仕打ちを受けても、夫を待ち続けている。
これは夫婦の愛情物語ではない。
男と女の、切ない道行のような物語なのだ。しかも、妻は生きることにも貪欲なのだ。
太宰はこの妻に女性の理想を求めたのだろうか。
いや、この妻こそ太宰自身が目指した人間像だったような気がする。
投稿元:
レビューを見る
「角川文庫クラシックス」で読む。
「パンドラの匣」「トカトントン」「ヴィヨンの妻」「眉山」「グッド・バイ」
の5作品が収録されている。
「グット・バイ」は太宰の未完の絶筆である。
どれもこれも、苦悩してばかりで情けなくて弱腰で困った男ばかり・・・のように見える。
死を意識して、自らそれを引き寄せながら、
しかし飛び込むことはできない小心者。
そうした弱さを丁寧に、しかし軽やかな文体と会話文で表現していくことで
太宰は人間を描き、
読者は、軽やかさに見え隠れするその繊細さに魅かれる。
「パンドラの匣」は
結核を病んだ主人公が、療養所の生活を手紙に書く、という形態をとった作品で
これがなかなかに爽やかな物語で、良かった。
療養生活を送り、自分の存在と他者との関わり方に悩みながらも
根底は明るく前向きに仕上げている。
僕は、流れる水だ。ことごとくの岸を撫でて流れる。
僕はみんなを愛している。きざかね。(
投稿元:
レビューを見る
パンドラの匣、トカトントン、ヴィヨンの妻、眉山、グッド・バイ
どれも好きな作品。
パンドラの匣:
友人への書簡の形式になっている。書き手は結核患者であり死を感じずにはいられないが、書き手は嬉々としたり落ち込んだり苦悩したり感情豊か。彼は生きているのだ、ということが伝わってくる。
同室の登場人物も看護婦とのやりとりもなんだかさわやか、ほがらか。しかし、背景は隔離された健康道場であることを思い出すととたんに、そこは幻想で、暗い死にとつながっている感じもする。
トカトントン:
無気力になる瞬間を「トカトントン」という音であらわす。
わかる。そういう瞬間がある。
ヴィヨンの妻:夫は救いようのない残念な人間。妻は強い。その強さは狂人ではないかと畏れを抱くほど。
投稿元:
レビューを見る
松山くんカバーバージョン。
ヴィヨンの妻は映画を見ていたので内容はわかっていたけれど、
やっぱり大谷はひどいヤツ。
ひどいけれどどうしてか魅力的。
「私たちは生きていさえすればいいのよ」
グッド・バイ、続きが気になる!
どう終わらせたかったのだろう?
トカトントンがお気に入り。
投稿元:
レビューを見る
ヴィヨンの妻、グッド・バイ他計5つの作品集。「パンドラの匣」は少し長めの中編だったが、他は短編。
どの作品も「生」を主として持ってきている。作品ごとに違った視点から生と向き合っていて楽しめた。
最後のグッド・バイはとてもいいところで終わっているが、夏目漱石の「こころ」は途中でも切れのいいところだから違和感がそこまで沸かないが、これは本当に中途半端に終ってしまっている。
太宰治の作品を全部読んだわけではないが、これにはすごい新しさを感じていただけに続きが読めないのは残念。
投稿元:
レビューを見る
「パンドラのはこ」がよかった!主人公と竹さんの実らない恋が清清し。登場人物もみんな気持ちよい。ヴィヨンの妻の夫は最低ww人間やめれww眉山はなかなかよかった。ウザイけど憎めないブス。
投稿元:
レビューを見る
評価は3なんだけど
3.5くらいぶっちゃけ。
そこそこ面白いんだけど
なんだろう?
パンドラの匣が好みでなくて
っていうか
なんか苦手でー
他は短いし
内容も面白くてさくっと
読めたんだけどなー。
パンドラが・・・
なので3.5。
一番好きというか
共感してしまったのはトカトントン。
なんかあの気持ちっていうか
状態はわたし今経験してるわみたいなwwwww
なんか自分もほんと
無意識にトカトントンって音聞いてて
だからやる気でないのかもとか
色々思ったし
ほんと私あんな状態すぎて
うーん。
でもやっぱし太宰治は
興味深いなって思った!
独特の文章なんだけど
太宰治らしい文章って感じで
傾向が分かる(多分w
そして基本暗いですよね
仕方ないって分かってるけど(ーー)
投稿元:
レビューを見る
”トカトントン”を読みたくて購入。小説でしかなしえない表現、というものについてぼんやりと考えたくなります。
投稿元:
レビューを見る
「ヴィヨンの妻」(太宰 治)を読んだ。短編集。「パンドラの匣」「トカトントン」「ヴィヨンの妻」「眉山」「グッド・バイ」の5編。申し訳ないが、やっぱり太宰は好みじゃないな。纏わりついてくる不吉な香りが鬱陶しいや。(あくまでも個人的な感覚です。個人差がありますのでご注意下さい)(笑)
投稿元:
レビューを見る
パンドラの匣
大宰も一線を越えてこの境地へ行きたかったのだろうか。
トカトントン
パンドラの匣もだけど、終戦てのは人々にとってこれほどまでに虚無感でしかなかったのか。
ヴィヨンの妻
相当惨い状況にあってもそれを全く感じさせないような強い女性。女性の強さを太宰が伝えてくる。
眉山
わたしまでなんだか泣きそうな申し訳ないような気持ちになる。
グッド・バイ
もう女遊びから足を洗おうとしているのに、結局卑しく色慾を捨てきれずにキヌ子の部屋で本当にぶざまな状況に。「ぎゃっ!」という悲鳴がなんとも。
こんなこと思う分際ではないことを十分承知だけど、太宰の最後の作品にはぴったりではないかと思った。
投稿元:
レビューを見る
本当に好きだからこそ、その思いをこっそりと仕舞い込んだりするのでしょう。
宝箱に仕舞いこむようにそっと、誰にも知られないようにひっそりと。だけどその思いを押し込み過ぎたとき、その好きという感情はどうにも溢れ出てしまうのだと思う。それはあまりにも、儚くて切なくて美しい。
この一冊を通して、それを学んだ。
投稿元:
レビューを見る
太宰治といえば暗い印象ですが、最初に収録されている「パンドラの匣」はドンヨリしてなくて好き。
個性豊かな登場人物(特にかっぽれ)は現代のアニメにも出てきそうだし、読後の爽快感というか、読みきったときのすっきり感がとても心地よかった。
投稿元:
レビューを見る
死や破滅思考・行動に依ってしか生きていけない登場人物たち。
痛みを感じねば生きている心持も得ない、現実に対してリアリティの欠如に苦しんでいるのだろう。
実に痛ましい事だ。
この痛ましさに気付かない理解出来ない人は幸せだ。
現代だからこそ、より一層太宰作品は愛されると思う。現代病だらけじゃないか!
表題作より「パンドラの匣」を読みたくて、珍しく新書で購入。
どの作品も当たり前のように良かったけれど(当たり前のよう…ってスゴイね)、「眉山」が一番良かったかな。
身体が辛くって押してでも、接客していたのはサービス業の鏡!
なにより愛嬌があって可愛らしい良い子だ。
投稿元:
レビューを見る
パンドラの匣
トカトントン
眉山
グッド•バイ
パンドラの匣はずばぬけて好きだ。
トカトントンも、好き。
投稿元:
レビューを見る
トカトントンがかなりお気に入り。
よく太宰の小説は思っていることを代弁してくれている、なんていうけれど、この話はそうだなと思った。
行動力と勇気、明らかに私に足りないものだな。