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さよならバースディ
著者 荻原 浩
霊長類研究センター。猿(ボノボ)のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトの創始者安達助教授は一年前に自殺したが、助手の田中真と大学院生の由紀が研究を継いだ。実...
さよならバースディ
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さよならバースディ (集英社文庫)
商品説明
霊長類研究センター。猿(ボノボ)のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトの創始者安達助教授は一年前に自殺したが、助手の田中真と大学院生の由紀が研究を継いだ。実験は着実に成果をあげてきた。だが、真が由紀にプロポーズをした夜、彼女は窓から身を投げる。真は、目撃したバースディから、真相を聞き出そうと…。愛を失う哀しみと、学会の不条理に翻弄される研究者を描く、長編ミステリー。
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紙の本
マコ、メ、ミズ
2017/06/13 15:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:端ノ上ぬりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
東京霊長類研究センターで、ボノボ猿のバースディに言語習得実験を行っている。プロジェクトを立ち上げた安達助教授が自殺して一年が経つ。助手の真と、大学院生の由紀を中心に、手伝ってくれている宮谷と岡崎の4人が、スタッフとして稼働している。地道に成果が上がってくる。真が由紀にプロポーズした晩、由紀はバースディのいる実験室から身を投げて死んでしまう。又もバースディ・プロジェクトからの自殺者となり、学内にはプロジェクト自体の存続が危ぶまれる空気が・・・。自殺の理由を探るべく、真が調べ始める。思いもよらぬ展開に、真の心がちぎれそうになる。はたして真相は。
野生動物にとって、人間の手で飼育されることが幸せなのか、否か。色々賛否は出ると思うが、研究の名に借りて進む実験は、人類にとっての進化や生命の不思議に一役かっているのならば、許される範囲なのかもしれない。バースディの愛らしさや無垢な目、信じて疑わない子供もようで、悲しくもあり切なくもなり辛かった。弱ってくるバースディをなだめながら、由紀の最後の言葉を聞かずにいられない真も、切ない。この作品はミステリーではないような気がする。わずか100足らずの覚えた単語を駆使して、伝えてくるバースディ。最後は泣けます。
紙の本
荻原浩氏のミステリーですが、そこには筆者独自の愛が描かれています!
2016/12/11 09:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、類人猿ボノボの知能研究、言語能力についての研究をする助手の「マコト」とそこで学ぶ大学院生「ユカ」の愛を、ボノボを通して描いた傑作です。ある日、ボノボ研究を主導していた助教授が何らかの理由で自殺をしてしまいます。しかし、その悲しみもようやく癒え、マコトとユカは研究に打ち込みます。次第に二人は心惹かれていくのですが、ある日マコトはユカに結婚を申し込みます。しかし、ユカはちょっと困った表情をして回答をくれません。その夜、ユカは研究所のビルから飛び降りて自殺してしまうのです。マコトはユカの自殺の原因を探るために、ボノボと共に実験に挑みます。
紙の本
面白いストーリーとは裏腹に、人間たちに翻弄されるバースディが憐れで哀しい
2011/05/24 20:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:道楽猫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
(※若干のネタバレを含みますので未読の方はご注意を。)
バースディというのは、ボノボという種類の、一匹の猿に付けられた名前。
東京霊長類研究センターでは、彼に人語を教え、言葉によるコミュニケーションを試みる「バースディプロジェクト」が実施されていた。
ところが、このプロジェクトの初代代表であった助教授が突然自殺し、後を任されることになった主人公の恋人もまた、主人公からプロポーズをされた当日の夜に、バースディが見ている目の前で、センターの5階の窓から落ちて死んでしまうのだ。
結局彼女の死も、助教授同様自殺という判断が下されるわけだが、それに納得がいかない主人公は、僅か100語に満たない言葉しか習得していないバースディに、事件の夜のことを聞きだすべく孤軍奮闘する。
そんな頃、主人公の元に、死んだ恋人から一枚のDVDが送られてくる。
そこには死んだ恋人からの、とあるメッセージが隠されていた。やがて、唯一の目撃者バースディにより明かされる悲しい真実とは。
そして、所長からプロジェクトの打ち切りを告げられた主人公とバースディの行く末は如何に。
動物実験について語るには私には知識が足りないしどうしても偽善的になってしまいそうなので、バースディプロジェクトの是非については特に触れない。
しかし、この物語、主人公とその恋人があまりにもバースディに対する誠実さに欠け、その点に於いて実に腹立たしい。
バースディの行く末を案じ、彼を生まれ故郷(いや、彼は日本で生まれているので、母親の故郷ってことかな)に無理矢理帰そうとした人物を毛嫌いしていたくせに、いざどうしようもなくなったら、手のひらを返すように彼にすり寄り、「実はずっとアンタのこと好きだったんだぜ」みたいに豹変する主人公。
生きているうちに何も行動を起こさず、死んだ後にとんでもない形で真実を告げる恋人の由紀。その死に加担させられたバースディの胸中を思うと胸塞がれる思いがする。
所詮猿には人間のような細やかな感情がないと思っているからあんな酷いマネができたんだろうね。
彼女の行動には決定的に思いやりというものが欠けていて、読んでいて怒りを禁じ得ない。何が、どこが純粋なんだか。
皮肉なことに、物語中で悪役として描かれる人物のほうがよほど首尾一貫しているという始末。
なんだかなぁ。
ただ、バースディの言語習得能力に隠されたトリックは面白かった。
面白かっただけに、いっそうバースディが哀れでならないわけなのだが。
感情移入を避け、淡々と筋だけを追うのなら、とても面白いお話だと思う。
私には、とても出来ない芸当だが。