病気はヒトが進化する上で必要不可欠なものだった!目からウロコの事実が提示されます!
2020/02/22 09:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、目からウロコの一冊で、私たちが不都合なものと考えている「病気」を進化にとって必然的なものと捉え、病気があることの意味を分かり易く解説してくれる一冊です。私たちは様々な病気に悩まされているのが現実です。感染症や遺伝的疾患、さらに生活習慣病などです。「こんな病気がなかったら!」と思うことは常です。しかし、同書では全く反対の姿勢、すなわち、病気で発症する症状の多くは身体を守るための防御反応であり、病気の原因遺伝子には私たちが生き延びるために有益なものであるというのです。同書は、進化論をもとにした「ダーウィン医学」によって明らかになりつつある、病気の本当の意味を分かりやすく教えてくれます。本当に目からウロコの驚くべき事実が提示されます!
病気がこれまでと違って見える
2009/02/03 21:18
8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぜのぱす - この投稿者のレビュー一覧を見る
2009年はダーウィン・イヤーである。
ダーウィンとは、某局の『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』でもお馴染みの進化学者チャールズ・ダーウィンのこと。今年は彼の生誕200周年であると同時に『種の起源』の出版から150年目の記念すべき年である。
そんな年にタイムリーにも出版されたのが、本書、『進化から見た病気「ダーウィン医学」のすすめ』である。
病気の話なのに実は著者は医者ではない。著者の栃内新は、生物学者であり、専門は動物発生学、免疫学、進化学である。そう、ダーウィン医学とは、実は、所謂『医学』とは別物なのだ。病気を生物学、特に発生進化学・生態学の立場から見直そうと云う全く新しい潮流の学問であり、本書はその入門書である。
本書は、誰でも罹る様な身近な病気や、或いは、一般に良く知られている病気を例に取り上げ、それを『生物学』の観点から解釈し直すことで、これ迄の『医学の常識』を見直している。つまり、ダーウィン医学に依る観点から病気を観るとどうなるかを説明することで、逆にダーウィン医学とは何かを解いて行く、と云う方法で書かれている。
概ね平易な文章で綴られて居り、恐らく高校生でも無理無く理解出来る内容となっている。
敢えて辛口の評価をすれば、対象としている読者の幅を、恐らく、可成り広く見積もっている所為であろう、全体の構成が、帯に短し、襷に長しになってしまっている感は否めない。
具体的に云えば、上記の様に平易に書いているある反面、前置き無しに専門用語が出て来て、一般の読者には若しかしたら意味が通じないのでは?と思われる様な箇所、また、平易にする余り、厳密には間違った表現になってしまっているような箇所や説明が重複して冗長に感じられる箇所が見られる。例えば、各所で『DNAへと逆転写』『RNAに転写』『RNAが翻訳』等の表記が見られるが、ココでの『転写』や『翻訳』は、生物学用語である。或いは、181頁では、『老化を促進するかのようなこの遺伝子』と云う表現が見られるが、これは正確には、 『・・・この"変異"遺伝子』或いは『・・・この遺伝子の"変異"』であろう。
或いは、一般読者と云うより、より専門家に対する著者の好意で、参考文献・資料として専門論文が引用されている。しかし、誌面スペースの制約の為なのであろうが、ごくわずかだけであり、個人的には、もっと多くの論文を引用して欲しいところだ 。また、本文中のどの箇所に相当する文献なのかも分かり難いのも難点ある。
が、此れ等の短所は、マイナーなポイントであり、本書は、ダーウィン医学への優れた入門書であり、本書に通じて、読者は、病気をこれ迄と違った見え方で捕らえることに新鮮な驚きを覚えるだろう。
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読みやすくて分かりやすい。これを試験前に読んでたら生化学の試験もうちょっと良い点取れたかも…。
「病気(=症状)」は有効なもの。
一つの遺伝子は多義的であるから良いか悪いかは一概に言えない。また、それが病気を引き起こすからと言って、それが完全に人間にとって有害であるかどうかも一概には言えない。
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ダーウィン医学の入門書。健康や病気について新しい見方ができる。一方、寄生虫がアレルギーを抑制するとか書いてあるがこれはまだ明らかになっていなかったはず。
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薬を使うなということでなく、毒にもなることもある薬によってもともと持っている身体の自然治癒力を妨害していないかという観点を持つことが大切。
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2010/4/3 メトロ書店御影クラッセ店にて購入
2010/4/3~4/5
進化論的に現代の医学を見直そう、考えよう、という進化医学(ダーウィン医学)を紹介した本。ブルーバックスの理念通り啓蒙書であるので、難しいことは書いていないが、基礎的な知識が整理されているので、ざっと読み通すには良い本。
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[ 内容 ]
感染症、遺伝的疾患、生活習慣病…。
「病気」はヒトにとって不都合であるように思えるが、その症状の多くは身体を守るための防御反応であるということ、また、病気の原因遺伝子にはヒトが生き延びるために有益なものがあったということがわかってきた。
進化論をもとにした「ダーウィン医学」によって明らかになりつつある、病気があることの意味を豊富な例とともに平易に解説。
[ 目次 ]
第1章 「ダーウィン医学」とは何か
第2章 風邪をひいてから治るまで-「ダーウィン医学」を理解するための練習問題
第3章 ヒトは病気とどうつきあってきたか
第4章 感染症-ヒトと病原体の進化競争
第5章 生活の変化が引き起こした「文明病」
第6章 遺伝病-良い遺伝子・悪い遺伝子
第7章 トレードオフ進化-進化が作り出した身体の不都合
第8章 先端医学はヒトの進化を妨げるか
第9章 老化と進化
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[ 参考となる書評 ]
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タイトル『進化から見た病気』となっているが、病気を中心として、
生物そのものや生殖医療についても言及してあったりする。
広く、「進化論的な観点を導入したときに、(病気は)どのように説明できるか」
というのが大まかな内容と言えようか。
淘汰/選択という観点から見ると、病気というのは不思議だ。
病気にならないタフな肉体を持つ生物になったほうが適応的な気がする。
が、実際には風邪も引くし、遺伝病なんてのもある。
そんな「現状」の説明をする上で、「進化的/適応的に意味がある」という観点から迫るやり方は説得的で面白い。
ただし、知っている人は知っている、もしくは勘付いている人は勘付いているだろう、
という内容に感じられたことも確か。
でも新書というメディアを考えるに、こういう形に落ち着くのだろう。
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それぞれの病気がなぜいまだに存在してるのかを解説。そこから、抗生物質の危なさや、本来どう直すべきか(元々持ってる治癒力を使う)等説明。専門用語が少なく分かりやすい。
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進化と病気を結びつける部分には若干ムリヤリな部分もあったけれど、概ね普段わたしが考えている健康理論に合致した。
病気には意味がある。ウイルスや菌を薬で抑えても、軍拡戦争になるだけ。対症療法は時に治癒を遅らせる。
免疫システムについての詳しい解説などもあったりして、なかなか知識の取得にも役立った。この本は医者でない人によって書かれているので、素人にもとてもわかりやすい。
・・・それにしても、日本の(外国はしらんけど)医者って、偉そうよね?抗生物質は基本的に使わない主義なんだけど、言うと切れられること多いしね。こうした医者=先生って構図をまず治さないとあかんと思う。患者=お客様なんですよ~~~。(本に関係ないか)
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ダーウィン医学の紹介本。著者は医師ではないし,なんか怪しい雰囲気…と思って読んでたら,そうでもなかった。人間の進化の過程で倫理や道徳,感情などができてきたという,進化倫理学・進化心理学とおんなじ発想。
現在の人間の健康や,病気といわれる現象も,進化の発想で把握していくといろいろためになるかな,という話。Nスペで,近年アレルギーや腰痛,免疫を進化で説明するというのが放映されてたが,あれのことか。具体的にどう臨床に生かすのかとかはよくわからなかったけど。
医療には対症療法と原因療法があるけど,対症療法的なことは,人間の身体に備わってたりもする。ひどい痛みが続くときにエンドルフィンやエンケファリンが脳内で分泌されて,鎮痛作用をもたらすとか。こういう働きは,進化によってできたという説明が成り立つ。
感染症と戦う免疫のシステムも,進化の賜物。ただ,戦う準備ができるのに数日かかり致命的になることも。そこを補充するワクチンが見つかったのは僥倖。今は感染症に抗生物質や抗ウィルス薬で対応することもあるが,細菌などの進化は速く,耐性菌の問題が出てくる。なるべくなら使わないのが吉かも。
社会の変化は人間の進化よりずっと速くてめまぐるしい。そのために生じてきた疾患も多い。飢餓への備えが飽食の時代には糖尿病などの生活習慣病に。糖分の発酵でできるアルコールに人間が惹かれるのは,食物のありかを探すのに有用だったからだが,今はアル中が問題に。
鬱などの精神疾患も含め,疾患は結構進化と結び付けて説明できるらしい。高緯度地方に住んできた白人が,オーストラリア北部など低緯度地方で暮らすと,強い日射のため皮膚癌などにかかりやすく,逆だと日射が弱すぎてビタミンD欠乏症になる。
世界には自然放射線のレベルが高いとこがあるが,そこにいる人が平気なのは,長年そこで暮らしてきたからなのかも。ってのはこの本(2009年発行)には書いてないけど,聞いたことある。あれはダーウィン医学的説明なのか。
寄生虫や腸内細菌との共生関係も見直されているそう。長年寄り添ってともに進化してきたのだから,むやみに駆除するとかえってよくないかもしれないとか。最後に,寿命というものも,子孫に資源を残し,良い環境を残すためにできたのかもしれないと述べて結び。
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基本的なことをまとめつつ、初めて聞くネタも結構含まれてて、発見あり。
ただ、もっと「進化のカス」とでもいうような、「特に合理的・適応的な説明はつかないけどもろもろの事情で持つに至って今でも持ってる表現型」というのがたくさんあって当然と思うけど、どんな表現型でも、これには進化上のこういう理由がありました、と何がしかのそれらしい説明に持ってってるのが、過剰な気がする。
全然理由というほどのものはないんだけど、何かわからんけど持ってるんです。っていう形質はたくさんあると思う。たぶん。直感で考えるに。
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「進化医学」またの名を「ダーウィン医学」を紹介する本。ダーウィン医学は、医学とは異なり、直接的に治療法を生みだすというよりも、ヒトの病気の意味を進化の視点から解き明かそうとする生物学。人に免疫力があるのは、外敵から守るシステムが進化して出来たという説だ。その仕組みを知る事によりむやみに薬に頼ることを無くす。風邪を引いた時にどうすればいいのかということを教えてくれる。
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栃内新(1951年~)氏は、北大理学部卒、同大学院理学研究科博士課程修了、同大学院理学研究院元教授の生物学者。専門は多様性生物学。
本書は、「ダーウィン医学」についてわかりやすく解説したものであるが、あまり聞き慣れない「ダーウィン医学」とは「進化医学」とも呼ばれ、概ね以下のようなものである。
◆米国の医師ランドルフ・ネシーと米国の進化生物学者ジョージ・ウィリアムスによって1991年に提唱された、極めて新しい学問分野。
◆ヒトという生物にとって病気とはどういうものなのかを、ヒトと病原生物の両者の視点を基礎に進化生物学・生態学的に読み解き、病気をより良く理解し、病気とともに進化してきたヒトという生物を理解しようとする。
◆一見不都合に思える病気の諸症状の多くの原因は、自然選択の結果、現在のヒトに引き継がれてきたものであり、それらはヒトの進化にとって有利な意味を持っている、或いは過去において有利な意味を持っていたということを明らかにする。
そして、まず、最も身近な病気である風邪を取り上げ、発熱、咳、鼻水のような症状が何故起こるのか、医者で処方される多数の薬の意味は何か、風邪は本来どのように治すのが望ましいか、を解説している。
次に、AIDSやエボラ出血熱のような「感染症」について、ウイルスや細菌のような病原体とヒトの永遠の進化の競争であること、生活習慣病やアレルギーのような「文明病」について、ヒトの生活環境の変化がヒトの進化を超えるスピードで進んだことによるものであること、「遺伝病」について、病気の遺伝子もヒトが生き延びるために有益であったものもあり、病気の遺伝子を治療するという安易な姿勢な避けるベきであること、などが説明されている。
「病気は治療するべきもの」という現代医学のあり方と、そもそも”治療”とはどういうことなのかについて、改めて考えさせてくれる良書である。
(2014年2月了)
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生物学的な病気の意義がざっくり分かる。他の細菌やウイルスなどとの関係も考慮しないと本当の医学は見えてこない。個々の病気の掘り下げ方が浅いので、あくまでも入門書の位置付け。
・人の身体を構成する細胞数が60兆個。腸内細菌は100兆個。糞便の約半分は腸内細菌とその死骸。
・臆病や不安になりやすい性質は生き残るために有利な性質。
・遺伝子の働きというのは常に環境との相互作用で決まるものであり、特定の環境では生存に有利だった遺伝子が異なる環境のもとでは新しい病気の原因になったりすることもある。
・つわりは胎児を守り安全な出産を確保するために進化した性質。