「東京で0円で生活できる?!」、坂口氏が驚くべき事実を教えてくれます!
2020/06/26 11:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、建築家で作家の坂口恭平氏の作品です。坂口氏は、日本の路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を発表され、話題になりましたが、同書はその小説版です。同書の最初には、「東京では1円もかけずに暮らすことができる」と謳われています。その実態は、何と、ブルーシートハウスです。同書の内容構成は、「第1章 総工費0円の家」、「第2章 0円生活の方法」、「第3章 ブルーの民家」、「第4章 建築しない建築」、「第5章 路上の家の調査」、「第6章 理想の家の探求」となっており、驚くべき事実が暴かれます!
投稿元:
レビューを見る
特に後半、第4章からぐいぐい引き込まれて、興奮しながら一気に読んでしまった。最初に掲げたテーマからまとめた感じの「〜都市型狩猟採集生活」よりも、自分の変遷を追っていった日記のようなスタイルで、とても生々しくて鮮明だった。
例の、Tokyo Sourceの坂口さんのインタビュー記事(http://bit.ly/cZixuH)で、「自分は(職業/肩書きが)『坂口恭平』になってきた。」と言っているけれど、まさにそう表現するしか無いという、住むこと、生きること、経済活動、社会、環境、世界、全て渾然一体となって、人の(生き物の)営みがあるのだということを発見し、すべてを引っ括めて自分の中に取り込み、表現し、伝えていく。しかし、それが出来る人はそうそうはいないであろうから、読んでいて本当に痛快でもあったし(また、文体のテンポが良い)、非常に勇気づけられた。
後半、子供時代から追い求めてきたものが、昇華、結実してゆく過程を追体験させてもらう部分は感動的ですらあり、鈴木さん(重要登場人物)と夢を語り合う部分では涙まで込み上げてきた。もう、これはまた、全ての、とりわけ都市に住まう現代人に読んで欲しい。と思う。
投稿元:
レビューを見る
【出会い】
新宿紀伊国屋の建築コーナーでたまたま。
身近にあるはずの未知の世界。
【概要】
隅田川沿いに住む「鈴木さん」の、0円の住居と生活の様子を著者との対話により記述。
また、後半は著者がなぜ鈴木さんのような生活に惹かれ調べるようになったのかについて、自叙伝的な内容。
【感想】
大変おもしろかった。
著者が言うように、本書に出てくるのは「ホームレス」の話ではない。
なぜなられっきとした「ホーム」があるじゃないかと。
主な登場人物である「鈴木さん」の生活力と慧眼には、著者同様に感服しきり。
普段見ている街を全く別の角度から見させてくれる。
文章は決してうまいわけではないが、軽快さと勢いがあり引き込まれる。
著者自身が楽しみながら、興奮しながら書いているというのもあるだろうし、描かれている人たち自身も生活を楽しんでいるということが滲んでくる。
あくまで一面なのかもしれないが、先入観が払拭される。
投稿元:
レビューを見る
鎌仲ひとみさんの講演をテープ起こしをしていた最後のほうで「坂口恭平さんてすごくおもしろい」という話があって、図書館にあった『TOKYO 0円ハウス 0円生活』を早速借りてきて読んでみたら、めちゃくちゃおもしろかった。おもしろすぎて、読み終わるのがモッタイナイと思いつつ、借りてきたその日のうちに読んでしまう。
「家」って何やろうな~というのは、この文庫本で解説を書いてる赤瀬川原平のニラハウスやらタンポポハウスやら、そんなんで、ちょっとゆるいのを見ていた気がしたが、この本に出てくる「0円ハウス」とそれを自分で建てた鈴木さんの話と生き方が、軽々としていて、賢明で、ふりかえって、ゴミのような紙やら何やらで埋もれた「家」で住んでる自分の生活って何やろなと思う。
▼鈴木さんと会話を続けるに従って、お金を払ってただ買うだけの存在になってしまった現在の家と、都市のゴミを材料に自分だけの空間を自力で作ろうとする0円ハウスの間に、ドカンと横たわる矛盾が見えてきた。そして、その矛盾は僕が建築家を目指しながら、違う方向へ行ってしまったことと妙にシンクロしていったのである。そのためこの本には、時折僕のこれまでの行動なども入ってきている。(p.6)
鈴木さんの話と0円ハウスの克明な記録だけではなくて、それに興味をもって、ぐいぐいと掘っていった坂口恭平の行動も一緒に入ってるところが、この本をいちだんとおもしろいものにしてると思う。
投稿元:
レビューを見る
なるほど、こういう「ホームレス」の見方もあるわけか。確かに、山岳用テントのゴアテックスナイロンをビニールシートに、チタンポールを木材に、簡略化すればそれはもうブルーハウスである。本書後半部で出てくる大阪の例、パブリック空間を利用したリビングなんかも、転化すれば新宿の路上に段ボールを敷いて寝るベッドルームになるかもしれない。こういうポジティブな捉え方が、安易で迂闊であることはもっともだが、一方で貧困研究的な捉え方がオリエンタリスム的な押しつけにならないとも限らない。開沼博「フクシマ論」に近い発想とでも言っておこうか。
投稿元:
レビューを見る
「ホームレスの見方が変わった。」
生きていくための工夫、好きでホームレスをしている人、0円ハウス、そこには私の知らない世界が広がっており、興味深くそして一気に読破しました。
あと、著者である坂口さんは自分のこれまでの歩みも語っており、独自の生き方に至った過程を垣間見ることが出来た気がします。好奇心を追求する生き方を実践している人です。
投稿元:
レビューを見る
0円ハウス写真集の坂口氏の続編。今度は活字。図書館で借りた。文庫本サイズで持ち歩きやすい。
話は隅田川沿いに住むホームレス鈴木さんとの交流から、ブルーシートの家づくり、自身のプロフィールと読み応えあり。自動車バッテリーで電化製品動かしているとは知らなかった。
投稿元:
レビューを見る
読み終わったあとに、ホームレスや路上生活者っていったい誰を指した言葉なんだろうと考えた。彼らの生活は、実は貧しくないかもしれないとは感じつつも、やっぱ自分にはこういう生活はムリだなと思う。
隅田川沿いに住む鈴木さんが建てた「0円ハウス」の取材だけでなく、著者がどのように建築に関わるようになったかもわかる自伝としても読めた。
投稿元:
レビューを見る
いまは生活するためにほとんど知恵も工夫も必要ない。人間の思考の密度が場所や空間や環境によっておおきく変化するということに改めて気づかされる。
予め図面を引いて設計された建物のなかに入り込んで生活することは消極的な意味での適応だけが要求され、そこに思考ははたらかない。必要なものは金で買えば済むという発想である。だから容易に思い描いた形式が完成されるので本人に成長や技術の向上は実現されない。
一方、あくまであり合せの材料から工夫により必要なものを自分で作るという態度は生活を冒険と化し、それを通じて世界と直接交渉しながら本人はどんどんパワーアップ、バージョンアップしていく。
坂口恭平はいまもっともおもしろい人間の一人だと思う。
この本を読むと、何か具体的に行動を起こしたくなる。坂口恭平によって刺激された知恵と工夫への欲求は、たとえば脱原発や脱(経済)成長のロジックへともつながってゆく。
投稿元:
レビューを見る
以前にどこかで少しだけ読んだ事があるような気がする…。
読み始めると思い出す…昔、図書館で借りて流し読みした記憶。
とはいえ、ほとんど覚えていないので、気にせず読み進める。
※p59 まるで山に〜
この人の家に対する考え方に、とても共感する。
家はもっと身近でもっと粗末で良いのだと思う。
また、家について何も知らない人が多すぎるし、知ろうとしない人が多い。まるで説明書の無い商品のような。はたまた、高級な骨董品に触れるような、そんなイメージ。
出来上がった家では、設けられた飾り棚に物を飾るか、自分好みの家具を入れるだけ・・・結局、用意してもらった器を使うに過ぎない・・・。
そして、家の性能が上がるにつれて、ますます居住者の手からはなれていくような気がする…。太陽光に、エコキュート、スマートハウス、どんどん機械に囲まれて行く。
大きく言うと、家は誰かにつくってもらうのではなくて、自分で作り上げたいもの。理想論ではあるけども、そうあれば良いなと思う。
兎に角、もっと低コストで人間らしい住まいを持ちたい。
モヤモヤしている自分にとっては、刺激的な素晴らしい一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
ホームレスの住居について考察するところから始まり、都市部における生活様式、路上における狩猟・最終の概念などを筆者ならではの視点で考察していく本。
と書くと難しそうだけれどもそうではなく、誰にでも分かるように、丁寧な視点に立脚して書かれた本。それは、筆者が決して外野として物を見てるのではなく、
「自分は0円ハウス(=ホームレスが作る家)の住民ではない、外の人間なんだけれども、とても興味があるのでいろいろ教えて頂けませんか」
というような、住民への敬意を持ってきちんとお話を聞き、写真に収め、ゲラのチェックまでしてもらうという対等かつ真摯な姿勢によって証明されている。
こういう感想の書き方で実は僕自身が彼らを遠くに見ている、という事なんだけども、本作においてはホームレスんぼ生活支援、自立、雇用といった問題は全て二の次なのが快い。読めば分かるけど
「そんな事は一切必要ない」
からなんだけども(住居自体が違法であるという問題はある)、物に溢れた都心部で資材を調達し、生きる糧を獲得する。そんな生活だと捉えると彼らの生活、タフだけれどもとても自然。
また、路上観察の切り口としてもとても素敵な本。個人的には赤瀬川原平氏以来の衝撃。ちなみに解説は赤瀬川原平氏です。
投稿元:
レビューを見る
ギブ&ギブ&ギブ。
本書に出てくるこの言葉は、
まさに贈与経済である。
著者は別の本で「態度経済」と読んでいるけれど、
「貨幣」を軸にした経済ではなく、
「人」を軸にした経済のこと。
実家から米が遅れらてくるのも贈与経済である。
もちろん本書はホームレスを推奨しているのでも、
現在の貨幣経済を否定しているのでもなく、
別のレイヤーを提示しているだけである。
その別のレイヤーを発見するためには、
路上生活者のような、
物事にズームして、
本質を捉えていく思考が必要だと言っているわけだ。
こういう考え方は、
なんだかスケッチをする時に似ている。
スケッチする時には、
物体を細部まで観察し、
それがどういった構造をしているか、
それぞれの箇所がどういう関係になっているか、
といったことを理解しないと上手く描けないものだ。
逆に言えば、
それさえ理解できていれば、
少々歪であっても描いているものはわかる。
この著者のスケッチを見ていると、
こういった空間を把握する能力に長けていると感じる。
投稿元:
レビューを見る
アラマタ先生の0点主義を読んだ後に読んだので、「0点主義タイプ」な実例を目の当たりにした感じだった。(大学での勉強のくだりや徹底的に隅田川などを調べていく点など)
想像以上の内容に、驚いたり感動したりで、あっという間に読み終えた。たいして使いもしない、無駄なものに囲まれている自分の生活をどうにかしなくちゃと思う。コンクリートの家でも、シンプルに生きる事は出来ると思うので。
投稿元:
レビューを見る
坂口恭平『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(河出文庫、2011)
『TOKYO 0円ハウス 0円生活』の主役は、「鈴木さん」という隅田川沿いの路上住宅に住むおじさん。いわゆるホームレスなんですが…。鈴木さんの生活は一言でいうと「豊か」です。ライトがあり、テレビがあり、ラジオがある。定価1万五千円の高級鍋もある。簡易な風呂もある。なんでもある。挙句の果てに、一緒に住んでいるパートナーの女性までいる。家にあるものはすべて鈴木さんが拾って集めてきたもの。電気はガソリンスタンドからもらってきた自動車用バッテリーでまかなう。まさに本のタイトルにあるような「0円ハウス」。鈴木さんは「工夫して暮らすことがとてもおもしろいからこの生活をしている」、「コンクリートの家には住みたくない」といいます。著者が鈴木さんと信頼関係を築き、丹念なフィールドワークを重ねて、鈴木さんの快適な「0円ハウス」と豊かな「0円生活」を描き出したのは本当に見事です。この本には僕らが見ておいたほうがいい「もうひとつの日本」が描かれています。
湘南OPAC : http://sopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1604526
投稿元:
レビューを見る
「建物をもうこれ以上建てるな」なんていう学生がいることに目からウロコ。建築をやる人なら誰でも、大きなプロジェクトの設計をしてみたいと思っていると考えていた。安藤忠雄や磯崎新を目指していると思っていた。
建築設計をやっているのに研究の成果を図面や模型で出さない。ビデオで提出するところがすごい。
こんな面白い人の感性を、隣街の新宮が育んだということを何か誇りに思う。
最近キュレーションがマイブームだが、ここでも海外の博物館や美術館のキュレーターがものすごい勢いで動く。すごい。キュレーター。
この話が映画化されるというけれど、どういう構成にするんだろうか?著者を主人公にした物語?0円ハウスの居住者たちのドキュメンタリー?
印税ガポガポ入って金持ちになっちゃったら、思想が変わっちゃったりしないのかな?鈴木さんのフトコロにも入るんだろうか?そんなことになったら0円ハウスの生活やめちゃうんじゃないのかな?疑問は尽きない。