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小さな異邦人
著者 連城三紀彦
【2014年週刊文春ミステリーベスト10、第4位!】恋愛小説の名手にしてミステリーの鬼才からの、最後の贈り物。 高校二年生から三歳児まで、八人の子供と母親からなる家族の元...
小さな異邦人
小さな異邦人
商品説明
【2014年週刊文春ミステリーベスト10、第4位!】
恋愛小説の名手にしてミステリーの鬼才からの、最後の贈り物。
高校二年生から三歳児まで、八人の子供と母親からなる家族の元へかかってきた一本の電話。「子供の命は俺が預かっている。三千万円を用意しろ」。だが、家の中には八人の子供全員が揃っていた。悪質ないたずらなのか、それとも間違い電話か? いったい誰が、何の目的で……そして誘拐されたという子供は誰なのか? 2013年10月、惜しまれて亡くなった著者の、おそらく最後となるオリジナル短篇集です。生涯最後の短篇にしてなお誘拐ミステリーの新境地を開いた表題作など、珠玉の八篇をご味読ください。
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紙の本
ミステリの名手は最後まで衰えず
2014/03/12 08:47
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぎわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ女性を同じ晩に同じ場所で複数の人物が殺す『私という名の変奏曲』、異様な復讐を描いた表題作を筆頭にトリッキーな(いっそトリッキーすぎると言ってもいい)短編揃いの『夜よ鼠たちのために』。大学時代にサークルで先輩たちに薦められてこれら連城三紀彦作品を読み、感嘆させられました。
個人的に最も鮮烈な印象を受けたのは『瓦斯灯』所収の短編「花衣の客」。恋愛の心理とミステリ的な意外性が完璧に融合した大傑作だと思います。
他には、誘拐ミステリ『人間動物園』も、往復書簡形式で逆転また逆転な『明日という過去に』も、とある家庭が舞台のショートショート連作という趣で分量的には平日昼下がりの帯ドラマにちょうどよさそうだけどもし実現したら変な意味で評判になりそうな『さざなみの家』も、とても好きです。
そんな作者が昨年逝去。六十五歳なんて早すぎると嘆いたものの、本になっていない作品はまだあったのですね。ネットで検索したところ、長編すら何作も残っているようで、未読の既刊ともどもいずれ読みたいものだと思います。
三年前に突飛な理屈で別れた妻の影を見る「指飾り」。
地方駅で不審な挙動を見せる女と、彼女が指名手配書を見ていたその日の晩に時効となる殺人犯、そして彼女らに関わることになった刑事を描く「無人駅」。
互いの夫の交換殺人が奇妙な結末に至る「蘭が枯れるまで」。
悪夢が意外な形で収束する「冬薔薇」。
妙な噂が立ちがちな上司と通り魔事件が絡む「風の誤算」。
少女の経験するいじめと、彼女の母が幼い時に遭遇した父親の死亡事件が不思議な交錯を見せる「白雨」。
同僚駅員との不倫旅行がおかしな切符盗難をもたらす「さい涯てまで」。
八人の子がいる一家に、家族が全員いるのに誘拐電話がかかってくる「小さな異邦人」。
短編ながらどんでん返しを秘めた作品が実に多く、期待通りにとても楽しめました。
タイムリミットもありサスペンスフルな「無人駅」と、どこからこんな取り合わせとあの真相を思いついたのかと言いたくなる「白雨」が忘れがたいですが、一番好きなのは作者最後の短編という表題作です。「夜よ鼠たちのために」などで見られた、既成概念の拡大や転倒がこの作品でも用いられていて、被害者の見当たらない誘拐事件を鮮やかに成立させています。連城作品のイメージをいい意味で裏切る(過去にも時々こうした作品はありましたが)結末であったのも、うれしい誤算でした。