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どの話もひとひねり効いていて、でも厭みもなくて、さすが上手い。
これ以上もう読めないのは非常に残念です。
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小さなさざ波に巻き込まれ、それがいつしか大きな渦に呑みこまれて行く男女のねじれた愛憎劇が中心。艶のある文章と内面をえぐる心理描写のツイスト技で、読者を連城ワールドへ引きずり込む手腕はさすがの一言。短編だと大掛かりな仕掛けは期待できないけれど、その分旨み凝縮でキレがいい。
表題作の誘拐ミステリには驚かされた。「子供を誘拐した」というありふれた文句の活かし方が素晴らしい。結果的には強引な印象を受けても、プロセスの運び方と、そこに撒かれた伏線のレベルが高いから、完成度で納得させられる。
「花葬シリーズ」を思わせる『白雨』も秀逸。日本語に対する感覚が鈍っていきそうなので、定期的に読んでおきたい作家です。ご冥福をお祈りします。
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八人の子供がいる家庭への脅迫電話。「子供の命は預かった」。だが家には子供全員が揃っており……。
単行本未収録の作品を集めた短篇集。連城三紀彦ならではの、繊細な筆致と騙しの技巧との両立が素晴らしい。お気に入りは表題作と「蘭が枯れるまで」かな。
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ミステリ短編集。しっとりとした雰囲気の作品から、ややコミカルな読み口の作品までバラエティ豊かです。
お気に入りは「冬薔薇」。まさしく迷宮に迷い込んだかのようなぐるぐる感がたまりません。その中で揺れ動く主人公の危うさもすごく好みだし、ラストの哀しさも印象的でした。
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昨年亡くなった連城三紀彦さんの最後の短篇集。特に好きな作家さんというわけではなかったけれど、読めば必ず満足させてくれるところが、まさにプロであったと思う。これは表題作が一番印象的だ。鮮やかにだまされる快感がある。もう読めないのだな。とても残念だ。合掌。
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しっとりと情緒のある描写と、妖艶な美しさのあるミステリー色を帯びた独特の世界に魅了され、デビュー作からずっと読み続けていた。が、残念なことに、本作が遺作となってしまった。
トリッキーな作品が多いが、文学としても十分味わい深く、大人が楽しめる作家だった。
本作は短編集だが、どれもが読んでいる途中で足元を掬われ、くらりとめまいがする感じ。ラストの表題作だけがコメディ調でカラーが異なる。表紙の絵も違和感があり、できれば連城氏のカラーである情念の世界で締めくくってほしかった…。
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「小さな異邦人」連城三紀彦◆子供8人と母親の9人家族。そこへ、子供を誘拐したと電話が入った。しかし子供は8人揃っていて…?不可解な誘拐事件を描く、最後の短編である表題作ほか7編。連城さんの文章は儚げでつややかで、とても雰囲気があります。なんとなく、雨に濡れる花のイメージです。
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どこかの書評で「名文!」と書いてあり、なんとなく興味を持って読んでみたが、ごめんなさい、やっぱりタイプじゃない。なんとなく時代錯誤感もあるし、文章も凝ってると思うのだけれども心に響かないというかわざとらしいというか。がんばって読んでいたがキツくなり、2編ほど抜かしてしまった。最後の、表題作が一番よかった。読んだことを忘れないように書いておく。
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連城三紀彦先生短篇集初めて読みました。、自分がまだまだなのか、あまり理解できなかった。「小さな異邦人」は面白かったです。
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8人の子供と母親からなる家族へかかってきた1本の脅迫電話。「子供の命は預かった、3千万円を用意しろ」だが、家には子供全員が揃っていた!?生涯最後の短篇小説にして、なお誘拐ミステリーの新境地を開く表題作など全8篇。
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表題作のほか、「指飾り」 「無人駅」 「蘭が枯れるまで」 「冬薔薇」 「風の誤算」 「白雨」 「さい涯てまで」
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男女の愛の行方の哀しくも切ない物語たちであるが、なによりの印象は女性の強さである。どの物語でも、犯人であったり主役で会ったりする女性の芯の強さが際立っている。それは愛ゆえなのかもしれない。その辺りを丁寧に繊細に描きつつ、ぞくぞくする企みをそっと隠して、最後の最後に明かして見せる巧さは見事である。重たい曇り空が似合う雰囲気の一冊である。
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2013年10月に惜しまれつつ亡くなった著者最後の短編集。抒情性豊かな物語と、予想もつかない結末の両方が楽しめます。
強盗殺人犯の情報を知る怪しい女と刑事のスリリングな駆け引きが楽しめる【無人駅】、交換殺人という使い古されたガジェットをアレンジし意外な結末に結びつけた【蘭が枯れるまで】、夢か現実か分からない状況で同じようなことが繰り返される【冬薔薇】などが印象的でしたが、ベストは表題作の【小さな異邦人】。誰も誘拐されていないのに脅迫電話が入るという謎の不可解さが魅力的ですし、「子供を誘拐した」という定番の一言が、意外過ぎる真相に結びつくプロットはお見事というしかありません。誘拐ミステリーのオールタイムベスト級だと思います。
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幻想的ながら本格ミステリで他に類を見ない作家であり、早い死が惜しい。この短編集も「蘭が枯れるまで」「冬薔薇」などに持ち味が発揮されている。7.0
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無理のある設定や内容が多い短編集。おもしろさでは表題作が頭一つ抜けていて、もしこれが最後になかったらちょっとがっかり。ただ表題作自体もネタがネタなこととこれはないだろってものが多すぎてしっかり読むひとには受け入れられないかも。さらっと読んで「おもしろかったー」って感じてからだんだん「そういえばあれおかしくないか?そもそもなんであんな?」となってきた。白雨はまさにそれ。想像するとドラマチックだが違和感は拭えない。気に入ったのは『さい涯てまで』。ほぼ全編に言えることだが恋愛とミステリが混じっていてもごちゃっとしたうるささと無駄な明るさがないところがいい。
固くてさらっとは読みづらいので短編で有難かったが、長編の方が合いそうな文体だった。
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【恋愛小説の名手にしてミステリーの鬼才から最後の贈り物】八人の子供がいる家庭へ脅迫電話。「子供の命は預かった」。だが家には子供全員が揃っていた。誘拐されたのは誰? 表題作など八篇。
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ミステリー&恋愛小説の名手からの最後の贈り物
8人の子供と母親からなる家族へかかってきた1本の脅迫電話
「子供の命は預かった、3千万円を用意しろ」
だが、家には子供全員が揃っていた!?
生涯最後の短篇小説にして、なお誘拐ミステリーの新境地を開く表題作など全8篇
帯にもあるように、ミステリと恋愛要素が複雑に絡み合う短編集。
すべて「オール讀物」に掲載されたもので、
最新作が2009年のものであることから、著者の逝去で出版されたものだと推察される。
前評判にも頷くばかりの傑作集。
■指飾り(2000.11)
街中で見かけた女の後ろ姿は、別れた妻のものと似ていた。
その後をつい追いかけてしまうと、信号待ちで見せつけるように、女は後ろ手で指輪を外した。
たまたま出くわした職場の同僚の女に妻との経緯を語ることになるが……。
収録作中最もミステリ色が薄いと感じるものの、ある女の気取った演出がなんとも。
■無人駅(2001.8)
新潟県の無人の駅に降り立った女は奇妙な行動を取り続ける。
タクシーで、おもちゃ屋で、居酒屋での不審な行動を監視することになる私。
彼女と共に今夜現れると目される男は、時効成立寸前の事件の犯人だった……。
最後の最後まで、女の奇妙な行動に振り回され続ける私だが、時効成立間際の駆け引きが実にスリリング。
何が起こっている(いた)のか、まったく気づけない。
■蘭が枯れるまで(2002.7)
乾有希子は、造花教室で知り合った石田多恵と意気投合する。
語りかけてくれたのは彼女の方で、後ろ姿が似ていたからだとも。
親密になっていく二人が、日常の不満を軽口で喋りあっていたときに、ふとした拍子に出た「交換殺人」の話題……。
有希子が語るある殺人事件は、やがて本人さえも奇妙な魔術にかかってしまったかのような捻れを引き起こす。これは二読しないと訳が分からないだろう。
■冬薔薇(2004.11)
夢から覚めた悠子は、自分がこれからどこに向かい何をするのかが混沌とした記憶の世界に生きている。予知される事件。一体この世界では何が起こっているのか。
最後に「現実と夢の境界線上を綱渡りでもしているような心地で……」と私が語るように、収録作中随一の奇妙さを感じさせる。
■風の誤算(2005.2)
沢野響子は水島課長の噂の真偽を図りかねていた。曰く暴力団と関係がある、曰くエレベータ内でセクハラまがいの行動をとる、などなど。
日に日に課長への疑わしさは増していくが、通り魔事件の犯人であるとの噂が流れ……。
閉鎖空間での噂がどうなるものか、ある意味でホラーで奇妙な一作。
■白雨(2005.7)
縞木乃里子は陰湿ないじめを受けていた。
はじめは一緒に撮られたはずの写真から自分だけいなくなった。
やがては屋上に呼び出されたのちに教室に入れなくされたり。
まるで「除け者」扱いだ。
それに呼応するかのように母親・千津の過去にある殺人事件が現在にも立ち上ってきた。真相を知るある男からの手紙……。
一見にして無関係のはずの二つの事件が、こんな風に不思議な絡み方を見せるのも連城作品ならでは。
■さい涯てまで(2006.2)
須崎の職場はJRで、窓口担当だ。職場の石塚康子と不倫関係にある。
ちょっとしたことがきっかけのよくあるかもしれない話。
しかし関係は割り切ったもので時折旅行することに決めた。徐々に北へと。
やがては日本最北端の宗谷岬で関係もオシマイのはずだったが、二人の関係を知る謎の女に、須崎は脅迫されることとなり……。
冒頭から細かな伏線が張られた日常の謎〈旅情編〉とでも呼びたくなる一作。
■小さな異邦人(2009.6)
帯にもある通り、誘拐ミステリーの新境地を開く一作。そうはいいつつ、実は結構あからさまな伏線で、真相に気づける人も意外と多いのかもしれない(自分は全く気付かなかった)。
何よりも秀逸なのはこの語り口にして、誰に語っているのか、ということ。
最後それが明かされた時にはもう溜息しか出ない。
ミステリ :☆☆☆☆☆
ストーリー :☆☆☆☆☆
人物 :☆☆☆☆☆
文章 :☆☆☆☆☆