0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
恋愛小説の旗手と言われ、実際、そうした作品を読み続けてきたが、平凡な表現ながら本作は小池氏の新境地だろう。有吉佐和子氏の「恍惚の人」を連想したりもしたが、方向性はかなり違い、短歌を生かした物語の進めようは直木賞作家ならではのもの。今後、さらに新しい分野の作品を手掛けてほしいと期待させる1編。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mimari - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれの父親について、考えさせられる作品。もともと小池真理子作品が好きで読んでいるが、サスペンスとはまた違う魅力を持っていて引き込まれた。わたしの父は適当な自由人で腹がたつことも多いが、愛すべき魅力ある人間だ。小池作品の人間の観察眼?的なところが今回もまた、良い意味でショックであり、心に刺さった。
投稿元:
レビューを見る
小池真理子が、父を題材にした本とは珍しい。亡くなった筆者のお父様に捧げた小説だそう。
自分が年を取ると、当たり前だけど両親も同じく年を取る。元気のまま老衰できれば一番良いのだろうけど、苦渋の決断の結果、24時間看護のホームに入れなければいけない場合もある。まだまだ軽いが、うちの父もパーキンソン病の気がある。両親の介護と亡くなった後に知る父の姿。読んでいて衿子が自分自身と重なった。なんだかすごく、両親に会いたくなった。
それにしても手紙っていいな。間に出ていくる歌もいい。小池真理子の文章って、ほんと雰囲気がいい。
投稿元:
レビューを見る
私にも病気の父がいる。私は父に何ができるのだろうかと考えさせられた。父の生き様を知れば、全てを受け入れることができるのだろうか…。間違いなく父に愛されて育ったが、父を受け入れられない部分もあって、衿子のようでありたいと思いながらも、異母の妹たちのような対応しかできないような気もする。
また衿子は母の痴呆について壮絶な介護生活を淡々と語っている。
ついつい介護が現実的な問題なので、そちらばかりが気になってしまったが、最後の吉森に宛てた父の手紙には泣けた。
投稿元:
レビューを見る
【吉川英治文学賞受賞、小池文学の最高峰!】亡き父が遺した日記には娘への愛、家族との不仲、そして恋人との心の交流が記されていた。生と死、家族を問い直す魂を揺さぶる傑作!
投稿元:
レビューを見る
私は極度のファザコンだ。亡くなって何十年も経つのに思い出すと涙が溢れる。この作品は離れていた父の死の前後、娘がどう関わって想って彼を理解するか、という作者の自伝的小説。私が涙を堪えて外で読める訳がない。二人の大切にしているもの(これが価値観ということかも)に共感する。特筆すべきは、ねちゃっとした「家族」感に気持ち悪いものを感じる、を代弁してくれていること。家族だって個々。私は愛すべき人を愛し、やっぱり父が大好きだ。
投稿元:
レビューを見る
私にとっての父親と、小池さんにとっての父親は少し違う存在なんだろうと思いつつ、それでも読み終えると、娘と父という共通した関係性が、私にとってとても気持ちよく表現されていて、素直に父に思いを馳せることができた。
今年の1月に父を亡くした。結婚して実家を出てから30年以上経ち、たまに実家に行くことはあっても面と向かって父とゆっくり話すことなどほとんどないままだった。
その生きざまを新聞記者の義弟が冊子にまとめてくれた。読んでみたけど、しっくりこないままだったのが、今日この沈黙の人を読み終えて腑に落ちた気がした。
父が私たちに言い残したかったのは何だったんだろう。病魔に侵されはしたが、最後まで意識はしっかりしていた。それでも、何一つ言い残すような言葉はないままだった。
父の口癖「もうええじょ」(もういいよ)。
私たちへの気兼ねではなかったのか? 悔いが残る。
せめて、父の死をしっかり悲しもうと今更ながら思う。
投稿元:
レビューを見る
小池真理子さんの手による、父の老い、父との死別の物語。
小池真理子さんの手によるというのは、生々しいまでに、生・性・愛が、密接に絡み合っていること。
女性である私にとっては、深くて暗い河の向こう側にいる人の人生の重さと終焉を小池さんのフィルターを通して、受け止めようとしてる感じ。
投稿元:
レビューを見る
家族や大切な人の死。避けられず、いつかは訪ずれる現実。
ここ数年、「死」を間近に何度か経験したからか‥
突き刺さる言葉がちらほら
残された時間を大切にしよう!
投稿元:
レビューを見る
切なくて、哀しくて、でもどこか温かさの感じられる作品。
人生は思う通りにはいかない。いかないのにそれでも人は、こんなにも生に執着してしまうのだろうか。
必死に言葉を、想いを、伝えようとする姿が、リアルに伝わってくる。
上手く言葉に出来ないが、間違いなく心を揺さぶられた作品。
投稿元:
レビューを見る
父息子ものの「とんび(重松清)」に引き続き、父娘もの。なんとなく、続く。
そのうえ、私には、母にとってのアメジストの指輪に代わるものがない。そんなものをほしいとは思わずにすむ人生を選んだはずだった。
私には彼らのような生き方はできないと思っていた
私はどこでどうやって生きていくつもりだったんだろう
投稿元:
レビューを見る
老い。人生。親子の繋がり。
考える要素がたくさんあった。
私が生まれてからずっと育ててくれた親の老いを目の当たりにして、私は衿子みたいに優しく静かに受け止めることができるのだろうか。
親子って理解しているようで、実は半分も相手のことを理解してないんだと思う。私もお母さんお父さんが本当はどんな人で今までどんな風に考えて生きてきたのか、想像もつかない。
それでいて、深い興味もない。少し衿子と似てるのかな。お父さんには、遠くからちゃんとみててもらってる、お母さんには近くで友達みたいに上部の付き合いで仲がいい。とっても。でも実際のところお互い腹のなかは何考えてるのかわからない。
人生ってなんなんだろ。「生まれ変わっても同じように後悔する人生でも。また生まれてきたいと思う。」人生ってそんなもん。
投稿元:
レビューを見る
複雑な家庭環境を背景に、病を患った父とキャリアウーマンの娘の交流と、父の死後明らかになった父の秘密。そして母の元夫である父の想いが綺麗に織り成せていると思います。
小池真理子先生の作品は初めて読んだのですが、難しいようでスラスラ読めて良かったです。
投稿元:
レビューを見る
2016年の4冊目です。
小池真理子という作家の作品を読んだのは初めてでした。
久しぶりに、ずっしりと心に応える作品を読んだという気持ちです。
自分と母を捨て、若い女と結婚し家庭を持った父親が、難病であるパーキンソン病に侵され意志の伝達も難しくなって介護施設に入居してからの、娘の父へ向き合う心情が描かれている。老いて壊れていく父親の姿を見て悲嘆にくれたり、過去を思い返し冷淡な感情に支配されることも無く、父親の身勝手な娘への偏愛を、冷静に受け止め、それに対処する自分をまた冷静に見つめている気がする。それは、幼い子供時代に父と過ごした満ち足りた気持ちにへの、気を許すと落ちていくような速度で没してしまいそうな自分の回帰を畏れているような気さえします。
この小説の中で描かれる父親は、別れた妻、再婚した現在の妻、単身赴任時代に知り合った女性と3人の女性と愛し合うダンディーでカッコいい男性です。一方で、介護ホームで息を引き取った後の遺品の中からは、ポルノビデオや性具が出てきます。パーキンソン病で体が自由に動かせなくなっていた父親がそのようなものを購入し所有していたことに、娘は汚らわしさよりも、憐れみを感じていたように思えます。設定では、この時の娘の年齢は50歳過ぎぐらいなので、そういった思慮分別があるということかもしれません。父親に対する偶像視はありません。それが世間では一般的なのかもしれません。表題「沈黙のひと」は、パーキンソン病の進行で、声を自由に出せず、キーボードも打つことができなくなった父親のことです。
私も娘と何れこのような関係性に身を置くのか。
何れ、沈思せねばならぬことだ。
吉川英治文学賞受賞作品です。
投稿元:
レビューを見る
なにか、すごくストーリー的に面白いというわけではない。
でも、文章から、すごく現実感が伴う小説。
こうなったら、大変だろうなあ、とか、年をとっても、病気になっても、生きているということだけで、その人にしかわからない人生というものがそれぞれにあるんだなあ、とか、親の気持ちってそうなんだろうなあ、とか様々なことを考えさせてくれる小説。
話も読みやすく、結構一気に読み終えた。