紙の本
背伸びしなくていいんだよ。
2018/11/10 23:56
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投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「正直に、取り繕わず、制作者の心をさらけだした作品は、
必ず誰かに嫌われます。そういうものは力強い代わりに
粗も多く、でこぼこで、違う意見を持つ人にとってはひどく
目障りになるからです」
「その意見が本当にいいものだったら、誰も嫌ったりしない
でしょう」
「いえ、誰にも嫌われないのはいい作品じゃなくて、
どうでもいい作品ってことです。強く主張するものが無くて、
意識に残らないから嫌われない」
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ある映画をめぐってのやり取りです。
自分の中にある考えを、これほど見事に言語化されると、
全面的に賛同するしかないですね。
たまたま映画の話ですが、小説も同じだと思っています。
この作品のすごいところは、それを人間関係にまで
持ち込んでしまうのですよ。
全部で五編の短編集です。
舞台は近いですが、いずれも独立した話です。
読後に心を落ち着けて考えてみると作者の価値観が
浮かんできます。それが冒頭に紹介した会話です。
人に合わせすぎると心を痛めます。
自己主張が強すぎると人が去ります。
好きという思いが強すぎると、何かのきっかけで反転し、
修復不可能なほど壊れてしまうことがあります。
でも、好きという思いをあらわさないと、いつまでたっても都合の
いい人のままなのです。そんな心の距離感のお話です。
人と人が接するって難しいですね。
それぞれの人と、それぞれの距離。
きっと生き物のように呼吸をしているのでしょう。
読みながらそんなことを感じました。
この短編集は、距離をつかみ損ねて失敗した人のお話で
まとめられています。身につまされます。
そんなナイーブさが垣間見える作品ばかりでした。
書評のタイトルは、登場人物に向けたメッセージのように、
ぽっと心に浮かんだフレーズです。考えてみると、
メッセージ先にはわたし自身も含まれている気がします。
思い当たる方はどうぞご一読を。
紙の本
頑張れる
2016/08/14 12:25
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投稿者:MR北海道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろいろな境遇の人々が悩み、明日に向かっていく姿に感動した。
さらに、意外なところに共通点や接点があって、交わりそうで交わらない微妙な距離感の短編集。
読み終えた時、頑張れる気になれた。
紙の本
いろいろな人の日常
2018/07/05 17:43
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投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いろいろな立場、いろいろな人の日常。
短編集。
関係ないようでちょこっと繋がっていたりするんだね。
まあ読みやすい話だった。
紙の本
合わなかった
2022/10/16 11:56
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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
最後の話だけかな、良いとおもったのは。
他は、良さが分からなかった。
観念的っていうか。
単純に、自分には合わなかった。
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ある雑居ビルを舞台に5人の人生模様を描いた連作短編。皆精一杯頑張ってるけど悩み葛藤している。そこから何かに気づいて一歩前に進んでいく。前作のような感動ではなく共感するお話、特にラスト二編がたまらなくいい。次作が待ち遠しい。
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彩瀬さんの書く小説を読めば読むほど、ファンになる。デビュー作の花に眩むからルポルタージュ、近著も全て読んでますがいいなって思う箇所がどんどん増えていく。筆力上げてるのが目に見えてわかる。
こちらは連作短編小説、といってもそんなに繋がってはないです。初めの泥雪がわりと暗くて、首の痣とかDV的な表現がちらつくとき心臓がぎゅってなってひんやりとしていたんですが繊細で、わたしの想像するウツミマコトの絵らしい話で、反抗期の息子とのラストとかよかった。
わたしが好きなのは龍を見送る。売れない頃から一緒にやってきたボーカルで彼氏だった男が他の女と組み、それが自分が作詞作曲したものよりも世間で評価されるなかでのこと。あんたの彼女のまま、あんたが他の女と作った曲を聴けるほど、心広くないっていう言葉にNANAを思い出しました。そこを除けばすごく好きな話。ラストの温泉宿でのシーンてわ目頭熱くなった。
一生懸命なのにうまくいかない。そんなことってたくさんある。これを読んで救われる人はきっと多かれ少なかれいるはずです
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彩瀬まるさんの、ほんのちょっとずつリンクしている5つの短編。さらさらと気持ちよく読めました。
がんばっているけど、みんな少しずつうまくいかない。でもどうにか折り合いをつけて生きていくわけで、登場人物の諦めや潔さ、切り替えるための前向きな姿には何度かはっとさせられました。
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一生懸命なのに滑ってる人たちの物語。
私は頑張ってるのに何で…という苦しさが伝わってくる描写が多く、この独りよがりな感じは心当たりがあってちくちく痛みました。
ウツミマコトの登場を期待していたけれど、最後までリアルには現れず。第三者としてでしか出てこないこの人物の使い方が面白かった。
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なんだろう。上手く言えないけど描写が上手い。
首に手をかける所とか、なんかぞっとした。
黒い感情で胸が苦しくなる感じとか。
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彩瀬さんの本を読み終わると、日常を信じてもいいのかも、まだ信じられるという気持ちになる。
緩やかにお話がリンクするのは最近食傷気味なところが個人的にあるのだけれど。
最後のお話が、ようやくタイトルに帰結する感じが良かった。
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5つの短編からなる作品。『骨を彩る』がよかった!と思って本書を手に取ったのだが、3つ目の話を読み終わった時点では物足りなく感じた。その理由は「終わりのあっけなさ」である。僕が『骨を彩る』を読んで良いなあと感じたのは、読みながら、そして読み終えてから「じわじわと」込み上げる感動、あったかさだった。それを読者にもたらしてくれるのが彩瀬まるの文章の魅力だと思った。しかし本書の3つ目の短編までは、その魅力が失われている。「え、ここで終わるの?」という物足りなさを感じる。あったかさで心が満たされないのが残念で堪らない。
ところがである。
4つ目の短編で僕のそれまでの評価が一気に覆る。話の締め方に対する不満もあったが、それと同じぐらい僕の心をモヤモヤさせていたものがある。それは「ウツミマコト」という映画監督の処女作『深海魚』が全ての話に登場する意味だ。この映画は、王道のラブロマンスなのだが、主人公のシンクロナイズドスイミングの振り付け師が恋人である女性アスリートに究極の演技を求める。そのストーリーが暴力的でエロチックな為、評価は真っ二つに割れる、という作品である。3つ目の話を読んだ時点で、「ああ、究極を求めると精神もなにもかも壊れるから、ほどほどでいいのよ、ほどほどで」というまるで近所のおばちゃんがよく口にするような言葉しか思い浮かばなかった。彩瀬さんが伝えたいメッセージはそれなのかと思った。
全く見当違いである。
彩瀬さんは近所のおばちゃんではなかった(こう言ってるが僕は近所のおばちゃんを侮辱していない)。
話が前後して申し訳ないが、僕が感動した4つ目の話のあらすじはこうだ。
主人公はIT会社で事務員をしている28歳の女性、十和子(とわこ)。合コンで知り合った一流会社勤めで34歳の上条に惹かれる。十和子の趣味は「プロレス」なのだが、彩瀬さんの趣味もプロレスなため、プロレスを語る十和子が彩瀬さんに実写化されしまうのは僕だけではないはずだ。それはまあいいとして、何回か食事に誘われるのだが、お洒落をして、話す内容は食べ物とか旅行とか職場の中の変わった人の話で、自分の趣味が「プロレス」とは言えない。上条が自分を好きなのかどうか、自分は上条のどこが好きなのかと悩み、職場のトイレに籠もっては新着メールの問い合わせボタンを連打する(想像するとおもしろい)、上条から食事に誘われれば嬉しくなってついていく、というようなことを繰り返していた。
しかし、あるときに「芦原しおり」というイラストレーターとふとしたきっかけで(これには「ウツボ」が関係している)友人になる。
しおりと飲みに行ったときに、ウツミマコトの『深海魚』の話になり、映画を観てない十和子にしおりがストーリーを説明するが、反応は良くない。しかし、しおりはこう述べる。
「(・・・)そのまま出してくれてるんです。みじめな部分も、どろどろの汚い部分も、ごまかしたり取り繕ったりしないで。それって、もの凄く勇気や胆力のいることだと思います」
僕はこの箇所を読んだとき、はっとした。これまでの話の主人公はみな相手に合わせているひとたちばかりだと。十和子もそうだと。プロレス好きだと��えないで、上条に好かれようと、行動している。上条に溺れて「本当の自分」を見失っているのだ。後日、十和子は上条に自分の想いを打ち明けるが...さてどうなる?
5つ目の短編だけが他の4つと毛色が少し違うと僕は感じました。なので、4つ目の話でそれまでの3つの話で著者が言わんとしていることをしおりに語らせたのではないかと僕は思うのです。
しおりだけではありません。十和子はなぜプロレスが好きなのかをこう述べています。
「ぜんぶ出し切った人の背中は、負けても光って見えるんです。」
脱線するが、ソチオリンピックのスケート競技のショートプログラムで浅田真央選手がそれまでしたこともないようなミスを連発し、メダル獲得が危ぶまれる、というようなことでメディアが騒ぎ、世界中のファンが動揺を隠せないでいた。僕は「あらまあ、大変なことになったねえ」とこれまた近所のおばちゃんがテレビを前に誰にともなくつぶやくようなセリフをつぶやいていた。しかし、翌日のフリースケーティングで浅田選手は自己最高得点をマークする。最終結果は6位入賞とメダルには届かなかったものの、浅田選手は演技に満足しているようであったし、彼女の演技、涙は世界中のファンを感動させた。
僕が本書を読み終わって思い出したのは浅田選手の演技終了後の姿だった。美しく、輝いていた。十和子のセリフが心に沁みた。でも、僕は浅田選手は負けてはいないと思う。メダルを獲得できなかった=負け、ではないからだ。それは別の問題だろう。彼女は勝ったのだ。1日で気持ちを立て直し、チャレンジし続けてきたトリプルアクセルを見事に決めて!
...まあ結局何が言いたいのかというと、彩瀬さんの伝えたいことは4つ目の話に凝縮されてるなあと僕は感じました。もちろん読み手によって好きな話は違うだろうし、それはそれでいいんですが、僕は4つ目の話「光る背中」を読む前に、本書を投げ出さないでほしいと思います。4つ目いいですよ。僕と同じように感じる人、4つ目まで頑張りましょう。
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この作家、彩瀬まるさん。懐がものすごく深い気がします。
いろんな年代の、それも性別も違う登場人物が
あたかも自分のいる隣のビルに本当にいそうに感じる不思議。
なんでこんなに色々なことを知ってらっしゃるのか。
彩瀬さんの人間力、どんどん好きになっていきます。
東京の錦糸町にある雑居ビルと、ある人物に関係する人々の連作短編集。
仕事場でのちょっとした知り合いや、もっと関係の深い友達。
その人が見せてくるいつもこちらが見られている面を通り越し
見ているようで見せてもらっていない、
いや見たいとこちらが思っていないから、見られていない面に
スポットをいつも当てている気がします。
相手と一緒に時間を共有すれば、
色々なものが変化して、相手との関係性も変化していく。
いい方向でも、悪い方向でも、
変化は毎日続き、接近してみたり、離れてみたり。
時と共に同じ場所に留まれないから少しずつ先に進んでいく。
他の人には鼻で笑われるような変化でも、自分で愛おしく思っていいんだ
と思える一冊です。
しおりさんの『ウツボのフィギュア』
天音さんが作った『パンケーキ』
どちらも、ものすごく欲しい~。
絶対的なもの、私も探そうっと。
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タイトルと表紙で衝動買いしました。
読んでみたら、とても好きなタイプの本でした。よかったです。
自分にとって、大きな事を乗り越える人々の話しでした。
苦しみながらも、確実に一歩を踏み出す人の姿は、見ていて感動的ですね。
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彩瀬まるさん、初めて読んだが、とても好きな文章。
モチーフやストーリーに新鮮味があるわけではないけれど、
じんわりと効いてくる。
読後に肩が軽くなったような気がした。
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図書館で待ちに待ってやっと借りれたが……なぜこんなに注目されてるんだろう。
自分に近い年齢、境遇の話は嫌だ。読みたくない。
自分から遠い話は良い。受け取れる。
嫌いな部類。