紙の本
機械の進歩を考えていったら、「幸福論」に行きついた。
2016/11/09 20:36
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴァーチャルリアリティを実感できる装置も市販されたし、人間と間違われるアンドロイドもできている。
機械に作られた世界と現実が区別できない人間ってなんだろう。人間らしいってなんなのか。このまま技術が進んだらどうなるのか。そんな疑問からルポライターが進めた、最新技術の研究者との対談集。対談相手が藤井直敬さん、田中浩也さん、石黒浩さん等々、と個人的にも興味を持って著書を読んだりしている方たちの話なので、どうまとめていくのかとても興味があった。
対談相手の、それぞれの業績に関わる話は知っているものも多く、著書を読んだ方が詳しいかもしれない。本書はそこから見えてくる「考え方の未来」の模索の部分が主軸である。
新しい機械技術を通してわかってきた人間の性質は「機械の部分がとても多い」ということらしい。でも「自由意志」を信じたいという「心」も人間にはあって「自分は機械」となかなか認めたくない。デカルトとかヴィトゲンシュタインとか、哲学の話もポンポン入ってくるのでなじめない人もあるかもしれないが、こういった新しい技術が見せてくれる「人間ってこんなもの」という部分を理解するためには必要なことでもある。
ある程度想像はしていたが、「どう理解するか」「どう対処していくか」の部分はどんどん宗教的な色合いが深まっていく。最後の対談相手が前野隆司さんというのがそれを象徴しているだろう。
機械の進歩を考えていったら、「人間ってこんなもの」を考えなくてはならず、結局「そんな人間はどうすればいいと思うのだろう、どうすれば幸福なのだろう」という「幸福論」に行きついてしまった。
先に書いたように哲学論的部分は少しとっつきにくいが、いいたいことはとても良く伝わってきた。
新しい技術を「面白い」「凄い」と感嘆するだけでなく、こうやって考えることも必要だと思わせてくれる一冊だった。
紙の本
自由意識のありか。
2016/09/03 15:24
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投稿者:うりゃ。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
クオリアについて、哲学的ゾンビの概念からのアプローチに興味があったので読んでみた。
環境の影響を受けて変容する自由意識が存在するのではなく、意識は環境の存在によって発生するという受動意識仮説に初めて触れた。
他者が外界を認識している様式をそのまま体験できるというSRの可能性も考えると、クオリアの定義自体が変わる日もくるのかもしれない。
石黒氏へのインタビューは石黒氏自身が著作内で語っていた内容から目新しいものがなく残念。ルポの分析ももっとほしい。
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なんとなくSFっぽくて面白そうだね、位で手に取ったら相当内容が深かった。
VRすごーいと思う程度の基礎知識だったため、最先端の世界を見て衝撃。人ってこんなに騙されやすいのか、意識って意味ないのか、いや心って幻想なのか、ロボットが行き着く先は宗教?とか人間観を揺さぶられる。
機械と人間の差?差があると思いたいだけで、別にそんなのないよって考え方。一理あると思います。
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<目次>
第1章 SR~虚構を現実にする技術
第2章 3Dプリンタ~それは四次元ポケット
第3章 アンドロイド~機会はすべて人型になる
第4章 AI(人工知能)~機会は知性を持つか
第5章 ヒューマンビッグデータ~人間を法則化する
第6章 BMI~機械で人を治療する
第7章 幸福学~幸せの定理を探る
<内容>
SF系の作家、海猫沢めろんさんが、現在の最新テクノロジーの研究者にインタビューしたもの。目次を見てもらうとわかるが、最後が「幸福学」。?と思うが、読んでいくとわかる。読んでいくにしたがって、人間と機械の境界が解けていく感じ。「人間らしさ」と我々が思っていることが崩され、人間も生身の”機械”なんだなと思う。ただ、無用な❓感情が人間の機械化を邪魔している。最後の幸福学を読んでいると(最後まで行かなくてもあちこちに散見されるが)、宗教や哲学って、テクノロジーの進歩で見えてきた世界(一部未来)をすでに言い当てていた、ってこと。幸福学の4つの因子は①「やってみよう」②「ありがとう!」③「なんとかなる!」④「あなたらしく!」だそうです。完全に自己啓発講座ですが…。巻末に参考文献が載っているので、ぜひ読んでみないと…
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【機械がヒトになる日】
SR
3Dプリンタ
アンドロイド
AI
ヒューマンビッグデータ
BMI
幸福学
ヒトと機械の境界線はどこか。最先端テクノロジーを紐解いてるはずかいつしか「心とは何か」「幸福とは何か」といった哲学的宗教的な人類古来からの疑問に行き着く。
”心はそこにあると思えばある”
様々なテクノロジーからヒトをヒトたらしめる「心」なるものを解釈すると、そんな禅問答のような境地に至る。
各界の専門家の話も「小説家海猫沢めろん」の手により平易な言葉で綴られるので素人にも非常に分かりやすいが、それは著者の圧倒的な読書量と知識によるものと、専門家の中の一人として入っててもおかしくない思考の飛び具合もまたこの本の魅力である。
人間が幸せになるために造られ進化を遂げてきた機械がヒトになる日は来るのか。それは思ったより近い将来なのかもしれない。知的興奮に溢れた読了感。
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かつて、自分の行動は全てプログラムで書けるのではないかと考えていた海猫沢めろんさんが最新のテクノロジーの専門家たちを取材して歩くルポルタージュ。
SR、3Dプリンタ、アンドロイド、AI、ビッグデータ、BMI(サイボーグ)、幸福学などが出てきます。
検索履歴などの外部記憶も自分の1部だよね。
確かに今は人間と機械の区別は曖昧かも。
オイラの妄想では
宇宙の外にいるドデカ無機生命体が小さすぎて調査できない宇宙を調べるために、観測装置のコンピュータや機械を作るために生み出された細菌みたいなのが人類学です。
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SR(代替現実:Substitutional Reality)、3Dプリンタ、アンドロイド、AI(人工知能)、ヒューマンビッグデータ、BMI、幸福学(脳科学)と最新のIT系先端科学技術について、小説家である著者とその第一人者との対談、著者がドキドキ・ワクワクしながらサイバーパンク的な未来に思いを馳せながらの哲学的でもある問いが、よくあるビジネス的な視点とは異なっていてとても新鮮でした。
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人は何をもって人たり得るのか。
割と心なんかないと思う私には、おもしろい一冊だった。
心や体をさまざまな視点から見ている人が居るというのは、それだけで面白い。
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筆者が最先端をゆく科学者のもとを訪れて技術を体験、対話を行ったルポ。その筆者が作家であるためかもしれない、技術を紹介しつつも、倫理的・哲学的な方面に視野を広げていく傾向があり、興味深い内容だった。
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とってもオモシロイ。
機械と人間の境界はどこにあるのか?これに7人の研究者に取材しながら迫っていく。意思や心を持ち、芸術活動に携わることにも機械が対応できるようになってきている。
こうなったとき、人間はどう定義されるのだろう。
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ヒトは機械に近づき、機械はヒトに近づく。
では境界線はどこにあるのか。
各専門分野のトップレベルの人達へのインタビューは非常に面白い内容が盛り沢山。
これだけの内容で新書1冊ってすごい贅沢です。
前野隆司氏のインタビューもあり、この方の脳に関する著作は非常に面白かったのだが、自由意思はない、という結論により現在は「幸福学」というのを研究しているというのが非常に興味深かった。
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筆者の関心は「人間の機械化」と「機械の人間化」。どちらの方向からも進化していってるがその交点になにがあるのか?を先端のサイエンティストにきく。
でいろいろきいたけど、結局、その交点にあるのは「しあわせ」というもの。
だから前野先生とか矢野先生が共通して幸福の研究をはじめてるのは興味深い。
幸福はサイエンスで証明できるのか?
その糸口にたってるとすると、21世紀は人類が「食べること」「物質的に豊かになること」からはじめて「幸せになること」が目的関数にかわる時代かもしれないしそうあってほしい。
いか印象になった点。
まずはSR。SRはヘッドマンとディスプレイを装着して視覚を現実とは違う視覚をみせて現実を虚構に摩り替える。
これを使うと「物事を別人の視点で見ることで「お前の見てるものと俺の見てるものが違うのは当たり前なんだ」っていうのが体験できる。」し、それによって「そうすると、共感能力が、ひとつ違ったレベルになってくるんじゃないかと思います。」。
これメタ認知そのものなので自分自身を一番客観的にみれない人の悪癖を是正する。
体験のプラットフォームが、人の共感能力をアップデートする未来。
二つ目は3Dプリンタ。
慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ横浜拠点にて。3Dプリンタよりも「動植物が参加するインターネットっていうものでした。
これだけIT技術が拡がってるのに、自然とつながるIT技術って確かにないかもしれないですね。」「イルカSNS」といった異種とつながること、究極のダイバーシティに興味をもった。
それは「僕は人間が進化するというより、人間中心の考え方に転換が強いられる、というほうが好みですね。機械が生物のようになるとか、そういう方向がいいですね。」につながるとおもう。
3つ目は石黒先生。
「ロボット演劇」の話が印象的。
まず石黒先生は「現在のスマホや携帯は、人間にとって理想的なインターフェースじゃなくて、最も理想的なインターフェースは、人そのもの」と定義。
「たとえば、ロボットを横に置いてミーティングをすると、ロボットが僕らの声に反応して、「なんでそう言うの?」っていうことをふっと言うわけですよ。」にするほうがより人は行動を是正されるのではと。
で、人は機械にすぎないと看破。意識とか心はどこにもないと。なぜなら「感じるから行動するのと、行動するから感じるのと、どっちが先か? それは両方だ」。また「イチローは、生まれてすぐ野球をやりたい、と言ったわけじゃないし、生まれてすぐ野球が好きだって言ったわけでもない。行動してると、感情は自然に芽生えてくる」と。
人間が唯一生きている意味はね、自分が生きている意味を探すということ以外はなにもないと思うんです。最初からある価値なんてないんだから、努力をやめたいと言う人は、死にたいと言っているようにも聞こえる。
四人目のかたは松尾先生。
「技術っていうのは、人間の進化の方法だと思っています。人間は自分の力だけで進化するものではな���て、技術をつくり上げることで、自分の可能性をどんどん引き出していくものです」。ヒトは肉体的進化の速度のおそさに嫌気がさして技術による進化を選んだという考え。
最後は前野先生。
人間は、他の生物と自分を分けて特別だと思いたいんです。自分は機械よりも優れている、と。それは完全に差別です。でもね、一方で困るのは、差別がなくなったら能力で区別することになるわけです。そうすると、「あなたは計算が速いですから、仕事が速くできます」とか、「記憶力がありますか?」とか、一個一個のタスクを比べると、ほとんどコンピュータだとかロボットに勝てないんです。将来、それで自分の存在価値というものを見失う人がけっこう出てくると思います。
これはたしかにそうおもう。能力主義ってどうなってしまうのか?
人間の行動はおおまかに分けると3つしかない、と述べています。即ち、「移動」「会話」「作業」
機械と比べて、自分はどれだけ存在価値があるのか、というのを自分自身で納得できるような生き方を探さないと、生き残るのが難しい世の中になってくるんじゃないかなと。
エシカル・ジレンマ、「倫理的な葛藤」という意味ですよね。よく企業の利益と社会的な倫理に対する葛藤の問題を論じるときに出てくる単語ですが。
産学連携なんてもう古い、今は「教学連携」かな、と思っていて。やっぱり人間にとって一番大事なのってお金じゃなくて心が満たされることで。
能力主義のなかで機械に劣っている人間ばかりになるとしたら、人間の存在価値は一体なんなのか、
昨日やったことを全部黒板に書け。そのうち人間しかできないものにマルつけてみろ」って言ってみたら、ほとんどマルがつかない(笑)。「お前だってゴキブリだろ」と証明できるん
特徴量を取り出す──つまり、機械が得たデータのなかから何を概念として取り出すべきかっていうのを機械が自分で計算できるようになったのが、ディープラーニングの功績です。世界から何を抜き出すか、を選びとることは、これまで人間しかできなかった。
イチローは、生まれてすぐ野球をやりたい、と言ったわけじゃないし、生まれてすぐ野球が好きだって言ったわけでもない。行動してると、感情は自然に芽生えてくる
人間が唯一生きている意味はね、自分が生きている意味を探すということ以外はなにもないと思うんです。最初からある価値なんてないんだから、努力をやめたいと言う人は、死にたいと言っているようにも聞こえる。
人間は、他の生物と自分を分けて特別だと思いたいんです。自分は機械よりも優れている、と。それは完全に差別です。でもね、一方で困るのは、差別がなくなったら能力で区別することになるわけです。そうすると、「あなたは計算が速いですから、仕事が速くできます」とか、「記憶力がありますか?」とか、一個一個のタスクを比べると、ほとんどコンピュータだとかロボットに勝てないんです。将来、それで自分の存在価値というものを見失う人がけっこう出てくると思います。
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2005ん円ごろ、SNSが出てきて、みんあネットを通じて人間とコミュニケーションできるようになり、つながることへの関心が高まった時代だった。
ロボットによって人名が守られると同時に、危険い晒されるというのは、無人機が中東の国境付近でのパトロールに使われる一方、アメリカでは殺人ロボット反対キャンペーンが怒っている。それはロボットの問題ではなくて、戦争gあ行われていることが問題。未来において戦争は増えるか減るか。ロボットが戦争に使われることはないわけ。だから軍用ロボットというのはそのいうちマーケットがなくなる。
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ロボット,あるいは機械は人間とどこが違うのか,人間とは何なのか.哲学的な問いに対して代替現実(SR: Substitution Reality),3Dプリンタ,アンドロイド,人工知能(AI),
ヒューマンビッグデータ,BMI(Brain Machine Interface),幸福学の専門家とのインタビューで著者が自分なりの答えを得る過程が楽しめる.第5章のヒューマンビッグデータの件で矢野さんが「人間って9割くらいは動物で,皮の上にちょっと知性が乗っかっている」と述べているのに共感した.第6章のBMIで”従来の研究は「脳波で義手や義足,ロボットなどを動かして,失った器官の代替をさせる」アプローチをしていたのに対して,「神経のバイパスを失ってしまった人の脳波を運動器官に直接つないで自分で動かせるようにする」アプローチ"を西村さんが行っているのがわかった(p227)の件は,著者のひらめきが素晴らしい箇所だ.随所の的確な受け答えをする著者の力量も素晴らしい.
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人間が望んでつくったはずの
AIやアンドロイドが人間の進化を妨げている。
脅威になると言われ始めている。
それは何故か?
この本自体の入れ子構造にもなっているのだが
ここに書いてある最新研究結果を披露し、
私という1人の人間が考察する事にはあまり意味がない。
誰かと話し意見を交換して初めて成立する。
だから私はここに書いてある事を人に言いたいし、話したいのだがそこには恐怖もある。
アンドロイドの第一人者である石黒浩氏は
『人に心はなく人は互いに
心があると信じているだけ』と投げかける。
今まで信じさせられてたものは
簡単に無力になる。
そういったポジティブに言えば発見、
ネガテイブに言えば否定を
繰り返さなければならない。
その先にあるのが
ロボットが人にもたらす幸福を
みんなで考えようというのは
重い宿題をだされたなと思った。