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評伝・河野裕子
著者 永田淳(著)
平成の与謝野晶子とも譬えられ、恋や家族を高らかに歌い上げた歌人が他界したのは2010年8月。だが没後「河野裕子短歌賞」が創設されるなど、その評価はますます高まっている。夫...
評伝・河野裕子
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評伝・河野裕子 たつぷりと真水を抱きて
商品説明
平成の与謝野晶子とも譬えられ、恋や家族を高らかに歌い上げた歌人が他界したのは2010年8月。だが没後「河野裕子短歌賞」が創設されるなど、その評価はますます高まっている。
夫の永田和宏や娘の永田紅などによって、家族の肖像は多く明らかになっているが、今回その息子が初めて母の生涯を丹念に描いた。
誕生から幼少期を過ごした熊本時代、精神を病みながら作歌に目覚めた青春時代、永田和宏との出会いと結婚、多くの引っ越しを重ねながら子育てに勤しみ、短歌にも磨きがかかった時代、アメリカでの生活や晩年の闘病、そして最期……。
これまで未発表だった日記や、関係者への取材を通して明らかになる歌人の日々から、著者は新たな作家像を浮かび上がらせる。精神を病みながらも、同姓だった無二の親友と築いた文学的信頼関係。しかも彼女の自死。また最期を看取りながら病床で一首一首を口述筆記した様子は、読む者を深い感動へと導いていく。
対象への距離感と親子の親密感とがみごとに融合した、評伝文学の傑作である。
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紙の本
母を描くということ
2015/09/24 08:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2010年8月に亡くなった歌人の河野(かわの)裕子さんの評伝である。
著者は河野の長男で歌人で歌集などの出版も行っている永田淳氏。家族が綴ると思い出話になることが多いが、この本は「評伝」と謳っている。もちろん、家族でしか書けない話など真実の強みはあるだろうが、その一方で第三者の冷静な視線による河野の評価とのバランスが微妙だ。
その点では、「家族のうた」を数多く詠ってきた河野ならなこそ、息子の「評伝」が許されたともいえる。
河野にこんな歌がある。「さびしいよ息子が大人になることも こんな青空の日にきつと出て行く」。ここに詠われている「息子」が、この本の著者であり、この歌を紹介したあとにその当時の自身の思いが書きとめられている。このあたりなども「評伝」というより、河野をめぐる思い出に近い。
では、何故河野は家族を詠い、息子や娘たちのことを詠ったのだろうか。
永田氏はそれを「子離れできない」ということではなかったのではないと書いている。「純粋に一番身近な血を分けた他人が面白かった」のではと続けている。
しかし、河野の歌が愛されるのは、「家族」を詠っているからだろう。河野の歌に描かれる「家族」はある面で理想なのかもしれない。
先ほどの歌のように、家を出て行く息子の姿に「さびしいよ」とはっきりいえることはあまりない。それを河野は照れもなく、まっすぐに歌いきっている。
もしかしたら、それは誰かそこにいないものに話しかけるような思いのようなものが河野にあったからではないか。
この作品の中に河野が学生の頃書いていた日記の断章が幾篇か紹介されているが、河野にとって「家族」のことを詠うのは日記に綴る思いに似ている。
河野の有名な辞世の一首、「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」の「あなた」とは、病床の河野を見守る家族であることは間違いないが、自身に歌を書き続けさせてきた河野と対峙する大きな存在そのものでもあったのかもしれない。
家族を冷静に描くことは難しい。永田氏の筆も時に冷静ではない。
しかし、この本はそのことが美点でもある。
紙の本
女性の生き様
2015/08/30 21:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鮎子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは歌人・河野裕子の評伝です。
著者は編集者である息子。
河野裕子の両親から書き起こし、最期の時までを記したものです。
身内が書いたものだと、ついつい情に流されがちですが、これはちょっと突き放した端正な筆致で書かれています。
それでいながら家族だから体験できたエピソードもあります。
そして何といっても文章が上手い!
「ちょっとななめ読みして…」と思っていたら、スイスイと読めてしまってあっという間に読了☆
日本を代表する女流歌人ですが、現代短歌に興味がない人にとっても、一人の女性の生き様という意味で、非常に興味深い一冊です。