紙の本
イギリス人作家ブルース・チャトウィン氏の文学的探検記です!
2020/05/15 09:19
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イギリスの作家ブルース・チャトウィン氏の傑作です。彼は30代半ばで会社を辞め、南米のパタゴニアを目指します。同書は、その記録なのですが、全体が97章に小分けされ、彼自身の旅の日常にある分断感をリアルに再現しています。パタゴニアと聞けば、南米に広がる広大な冷寒な草原地帯を思い浮かべる方も多いと思いますが、イギリス人にとっても最近まで未開の土地の代名詞であったところです。そうした土地を目指すということは、手軽に旅に出かけてくるという雰囲気ではなく、大切にしていた半生分の何かを故郷に置いて、心の中にある失われた場所を埋めるために発心して挑むように出かけていく場所でもあります。同書には、そうした著者の強い想いが描かれた、探検記というよりも立派な文学作品と言える一冊になっています。
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もうこの人の作品を永久に読めないなんて
2021/04/15 22:49
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本はパタゴニア(南アメリカ大陸南部のアルゼンチン、チリに跨る地域)の紀行文である、とまとめてしまってはとんでもない誤りで、とにかく作者の思いと知識がさく裂している。池澤夏樹氏の解説にしたがえば「アラウカニアの王になろうとした男」「ウェールズからの来た移民たち」「プレシオサウルス狩り」「ブッチとサンダースの後日談」「アントニオ・ソートというアナーキスト」「ビーグル号に誘拐されてイギリスに行った先住民」「ヤガン語の辞書を作ったトーマス・ブリッジス」「ブルースの祖母のいとこチャーリー・ミルワードの数奇な生涯」「ミドロン(大なまけもの)狩り」等々、どんどんとブルースの世界に引き込まれてゆくとんでもない本だ。こんな作家がもうこの世にいないなんて辛すぎる
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池澤夏樹編集の世界文学全集収録作が文庫化。
パタゴニアの色彩が文章を通して流れ込んで来るようで、圧倒される。版元のサイトには『紀行文学』とあって、確かにジャンル分けするならばそうなるのだろうが、もっと違う何かではないか……とも思わせる長編だった。
考えてみれば、河出の世界文学全集はぼちぼち文庫化されている。この先、これ以外にも文庫化されるものがあるんだろうか? そして、日本文学全集も、何か文庫化されるタイトルがあるんだろうか……?
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見渡すあらゆる地平にはるか遠く空を抱く純粋さを示す場所なのか、吹き荒ぶ凍りついた風が大地の岩に引っかき傷を作りながら突き刺さる太陽の痛みを記録する失われた場所なのか。
ひととひとの単調に繰り返す営みに馴染めない者がやがて吹き溜まる場所なのか、ひとがひとらしく強さと弱さをそれぞれに見せながら生きる都会から少しばかり遠い場所なのか。
記憶はやがて薄れるものではなく、次第に好きなように姿を変えるものである。どこか本棚の隅にしまい込んだはずのパタゴニアの大地の写真は、到底自分が自分の脚で歩いて撮ったものでもなく、雑誌の付録としてあったグラビア印刷の広告だった。その荒涼とした大地には確かに道であると脳の奥でだけわかる砂利の川が流れ、特段憧れるような美しい風景が写っているわけでもなく、ただその見慣れない風景に漠然とした憧れのようなものを感じたのだった。同じ名前のアウトドア・ブランドに少しだけ惹かれていたということもあった。実際、それがどんな写真だったかも覚えていないが、ただひたすら月に降り立ったかのような異空間は、やがて機会があれば一度は見てみたい場所となったのだった。
暫くして再会したパタゴニアは、その南の隅にあるウシュアイアという街となってテレビの中に現れた。南極に向かう船の出発点として、そこはどこか他人事のような風景を引き摺ったコンクリートの街だった。きっと南極に向かう船が眩しかったのだろう。まさにそこにいて頑強な灰色の船に乗り込んだ知人は、ただ美しいと言って多くを語らなかった。それがパタゴニアの習いというものなのだろう。もちろん、一度も行ったことのない遥かな憧れとして。
旅行記の新たな地平を切り開いたとされるこの作品は、現実と幻想がどこかで交錯するフィクションでもある。そこでは時間までもが行き来する。それでいて、それは疑いようもなく紀行文である。読者はいつのまにかパタゴニアを放浪し、太古の時代から現代までを見晴るかす。時に強風に潮がセールをもぎ取って行く海峡を超え、時に銃弾の乾いた音に身構える。そうやって読み終えた時、遠いパタゴニアはそこにある。
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語りが淡々としていて、基本はじいちゃんばあちゃんの興味ない昔話を聞かされているような気分になる。が、ときどきふっと、自分の生が人類の限りない営みと接触して、自分の中に人類の歴史が流れ込んで来るかのような何とも言い得ない複雑な感動が味わえる瞬間がある。
南米は文明と非文明が衝突した土地なんですね。こんなに悲しい歴史があったとは知らなかった。しかも、それほど時間差なく(もしくは並行して?)文明と文明の衝突にも巻き込まれている。欧米や日本にはない種類の深い悲哀を感じずにはいられない。
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話が大分、広範囲に及んでいるので、ほんの一部しかついていけなかったのだが、大好きな映画の「明日に向かって撃て」のブッチとサンダンスの登場にはテンションが上がった。映画の中では大きな期待を持って向かった先がボリビアだった。(駅前は閑散としたど田舎だった)
ボリビアからもう少し南下すればそこはそこはパタゴニアだ。
いつかパタゴニア地方に行ってみたいな。
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憧れのパタゴニアに旅しながら読んだ。アルゼンチンの歴史を語る本って中々見つけられなかったのだが、友達に勧められて手に取った。今回は行けなかったがウシュアイアとか行ってみたいな。パタゴニアの事が昔のエピソードを中心に知れて良かった
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旅行記というか随筆。著者の興味に沿って挿話がたくさん入る。パタゴニアに関わった何人かのアウトローたちの伝記を綴り合わせたような本。荒凉とした平原を移動、ふっと立ち上がる回想ドラマ、また荒凉とした平原…を繰り返して、最後の長い挿話は著者の大伯父の伝記、旅の目的を果たして帰路へつく、という構成。
相互に関係の薄い脱線が全体としてパタゴニアという土地の雰囲気を表しているような、しかしこれは著者の頭の中だけのパタゴニアであるような。発表当時は旅行記としてかなり独特のスタイルだったのではと思う。
ちなみに挿話のそれぞれの語りは淡々としているものの、内容は波乱万丈で人間の運命を考えさせられるところがあり、面白かった。どれだけ「盛って」るか不明だけど。
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まるで物語のような紀行文。現地の人たちのたくさんの話をベースに、現実と空想の間をさまよいながら著者がパタゴニアの大地をあるき続けていく感じ
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2018/05/14 読み終わった。
ちょっと長い。その分、荒涼とした、パタゴニアの風景を感じられるかも。Googleマップを片手に読んだ。
いろんなルーツの人が出てくる。イギリス、ドイツ、北欧。アフリカ系や、中華圏もいたかな。新大陸だと実感する。
Googleマップでアルゼンチンの街並みを見ると、どこも綺麗な碁盤目になっていて、中にはほぼパーフェクトな街並みも見られる。シムシティみたいで面白い。
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嘘とも真ともつかぬエピソードが次から次へとくりだされる。なんと自由奔放なことか。池澤夏樹による解説もよい
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はじめのうちは、削ぎ落とされた端正な文や、自分の持っていない常識(わからない言葉や地名など)に気後れしていたのですが、中盤、ブッチ・キャシディ話のあたりで衝撃的に面白くなり、読了まで最高でした。物事の結びつけ方が奔放で力強く、他人への視線が思慮深くあたたかい。この先何度も読むことになりそうです。
読むのに少し知識を要求されるのですが、わからないところは別に読み飛ばしてもいいし、ブルース・チャトウィンも1940年生まれと今のおじいちゃんくらいの人なので、ちょっと調べれば普通にわかることが多いと思います。
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祖母のプロントサウルスの獣皮と
一角獣の寓話から始まるエッセイ
難攻不落な構成は
波乱に満ちた作者の人生に似ている
南米最南端を形成した
喧喧囂囂なアウトローたちと
その文明の衝突
どこかで誰かと
繋がっている様な…
懐かしい親和性を覚えた
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パタゴニアと聞くと有名ブランドとともに雄大な自然をイメージしていたけど、結果、真逆。ほんと人の物語。場面転換が多いので話に入っていけなかった感。どこであろうと自然美なんてものはなく、人のドロっとした生活があるんだなと感じた。
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次々に出てくる登場人物や突如過去にあった出来事の解説が挟まったりする点などが分かりにくく、脈略がない。アルゼンチンやパタゴニアに住む人を理解できたという点は良いが物語としちゃどうかなと思った。