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パールとスターシャ
著者 アフィニティ・コナー , 野口百合子
1944年、ユダヤ人の12歳の双子、パールとスターシャはアウシュヴィッツ絶滅収容所に家族とともに送られ、優生学研究に取り憑かれた〈死の天使〉、ナチス・ドイツの医師ヨーゼフ...
パールとスターシャ
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パールとスターシャ (海外文学セレクション)
商品説明
1944年、ユダヤ人の12歳の双子、パールとスターシャはアウシュヴィッツ絶滅収容所に家族とともに送られ、優生学研究に取り憑かれた〈死の天使〉、ナチス・ドイツの医師ヨーゼフ・メンゲレが集めた多くの双子たちとともに《動物園》と呼ばれる施設に入れられる。子供たちに自らを〈おじさん先生〉と呼ばせ、おぞましい人体実験を繰り返すメンゲレ医師の研究対象となった二人が、少女の純粋な目で見た恐るべき世界を叙情的な、それでいて力強い筆致で描いた物語。生命の尊さ、人間の言葉の力を描いた、そして人間の本質について深く考えさせられる一冊。
目次
- 第1部
- 1 世界の次の世界──スターシャ──
- 2 新入り──パール──
- 3 小さな不死──スターシャ──
- 4 軍時用資材、緊急──パール──
- 5 赤い雲──スターシャ──
- 6 伝令たち──パール──
- 7 さあ、わたしを楽しませて──スターシャ──
- 8 絶対に離れないと言ったのに──
- 9 百万また百万──スターシャ──
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紙の本
一面のヒナゲシ。
2019/07/28 04:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日読んだ『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』からのつながりで、これを。
あっちは<ノンフィクション・ノベル>だったが、こっちはフィクション。とはいえ事実を下書きにしてある。
あぁ、今更近現代史を学んでいるよなぁ・・・。
1944年、12歳の双子パールとスターシャは家族とともにアウシュヴィッツ絶滅収容所に送られたが、“死の天使”ヨーゼフ・メンゲレに目を付けられ<メンゲレの動物園>に二人だけ入れられる。殺される危険は遠のいたが、双子という存在にとりつかれた医師の実験対象としての日々が待っていた。パールとスターシャ、それぞれの視点から交互に描かれた恐るべき世界と、少女たちの純粋さの記録。
これもまたつらい話だが、パールとスターシャの強さと双子故の違いの大きさが牽引力となって一気に読了。現在進行形ではなく、ある時点から過去を振り返っているのだろうと冒頭から確信できたので、途中で二人が非業の死を遂げることはないと思えたのも大きかった。
少女独特の想像力と潔癖さって最強だな・・・と改めて感じさせる一作。何度も目から涙がこぼれそうに。
メンゲレは実在の人物ではあるが、悪魔のようなキャラにもなっているな、と。今回は二人の目から見たものだから余計に、ただ気まぐれに残酷なだけのイカレたやつでしかなく、腹立たしいことこの上ない。だから、人間性を失わない数少ない大人たちが尊く思えてしまう悲しさ。そんなことではダメなのに。
パール、スターシャ、それぞれの言葉に何度も胸を突かれたが、最も刺さったのはこれだった。
> でも、わたしとしては――自分が許したがっているとわかった。わたしを苦しめた者は決して許しを乞うまい――これは確かだ――それでも、許すのが自分に残された唯一の本物の力かもしれないと知った。
復讐するのが生きる糧だったのに、あるときそう考えるのだ。
13歳で!
私にはそう思えるかどうかわからない・・・。
原題の“MISCHLING”、本文中では「混血児(ミシュリング)」として出てきた。ミシュリングはルビとして。混血とは・・・ユダヤ人の血が流れている、という意味か? ナチス時代に制定された法的な定義らしいが(勿論、勝手な差別だが)、パールとスターシャが大好きな学者のおじいちゃんからは「すべての生きものの多様性」の素晴らしさとして教えられていて・・・。
赤いヒナゲシは流された血、倒れた人々の象徴なのだろう。
ヒナゲシの可憐さや美しさはそのままなのに・・・。