- カテゴリ:一般
- 販売開始日: 2018/10/05
- 出版社: 小学館
- ISBN:978-4-09-394239-3
猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」第9巻 唱歌誕生 ふるさとを創った男
著者 猪瀬直樹
文部省唱歌という「新しき伝統」はいかにして生まれたのか。明治の「夢」を追う。収録作『唱歌誕生』(1990年6月日本放送出版協会刊、1994年5月文春文庫、2013年5月中...
猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」第9巻 唱歌誕生 ふるさとを創った男
06/27まで通常1,100円
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商品説明
文部省唱歌という「新しき伝統」はいかにして生まれたのか。明治の「夢」を追う。
収録作『唱歌誕生』(1990年6月日本放送出版協会刊、1994年5月文春文庫、2013年5月中公文庫)は、明治期に志を抱いて上京した、あるいは大陸に渡った人々の絢爛たる群像の中に、唱歌「故郷」誕生のドラマを描き出した抒情的手法が光る作品。
長野県の小学校教師だった国文学者・高野辰之と、鳥取県の没落士族の家に生まれた作曲家・岡野貞一。この二人の偶然の出会いから、「故郷」をはじめ、「春がきた」「春の小川」「朧月夜」など多くの名曲が生み出されていった。文部省唱歌という「新しき伝統」はいかにして生まれたのか。人々を衝き動かした明治の「夢」とは何だったのか。二人の生涯をたどる旅を通して、明治という時代を浮き彫りにし、日本人の心に迫る一作。
本書には巻末に文庫にはない、猪瀬が郷里・長野の母校で行なった講演で、同郷の高野辰之にも触れた「国際化時代と日本人の生き方」(1996年10月12日「信州大学教育学部附属長野中学校五十周年記念講演」)のほか、本書の登場人物、大谷光瑞について語った「アジアという夢に取り憑かれた男」(『太陽』1991年6月号初出)を収録。作品解説としては、船曳建夫氏「ものを語る猪瀬直樹」(2002年刊『猪瀬直樹著作集第9巻』解説)と、高橋秀夫氏「作家的幸運と天分との融合」(文春文庫版解説)を収め、また、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、井上章一、河村湊、池田満寿夫、音楽評論家・細川周平、作曲家・柴田南雄の各氏による書評も収録する。
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日本人の志とは何か
2002/11/15 10:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:1975の男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
盆暮れ正月、家族で帰省するのは都会に暮らす日本人の常だろうが、祖父の代から東京に暮らす私には経験がなかった。幼いころ、夏休みになると極端に遊び仲間が減ることに、いささか退屈な気分だったと記憶している。にもかかわらず、「兎追いしかの山」ではじまる唱歌「ふるさと」はしっかりと脳裏に刻まれているから不思議だ。この唱歌の魔力と、その歌の誕生の謎に迫ったのが本書である。
本書によれば「ふるさと」は、信州を飛び出し国文学者となった高野辰之が歌詞を書き、岡山のキリスト教会で思春期を過ごした作曲家岡野貞一が曲を創った。国定教科書策定という国策を遂行するスタッフとして、ふたりは東京で無造作に出会い、「ふるさと」のほかにも「朧月夜」や「紅葉」を手がけていく。日本は近代国家として急激に離陸の速度をあげ、膨張を始めていた。共通の「国民意識教育」が必要だった。
たしかに唱歌は日本の近代国家形成の産物だったのだろう。だが、ふたりが匿名で残した作品群は彼らの生きざまを色濃く映しこんでいた。だからこそ「官製品」という制約をもちつつも、幾世代も歌い継がれる響きを持ちえたのだ、と筆者はみる。「志を果たして、いつの日にか帰らん」という歌詞と郷愁を誘うメロディーに、刻み込まれた思いを彼らの生涯から読み取るのである。
いま、先行きの見えないこの国の現状をみるにつけ、日本人の「志」とはどこへ向かうべきなのか。自らを省みるとき、「唱歌誕生」は多くのヒントを与えてくれるだろう。