「遺体」という視点で描かれた異色震災ルポ
2020/02/29 16:39
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
「遺体」という視点で描かれた異色震災ルポです。
3月11日の震災発生、遺体の安置所までの搬送、身元確認の基礎となる遺体の検案や歯形確認、読経、3月下旬の初めての火葬に至るまでの釜石の様子が描かれています。著者の感情は一切はさまず、当事者たちの緊迫した苦闘を時々刻々に描くことで、見事なルポに仕上がっていて、想像を絶する苦労があったことが分かりました。私が読んだ震災関連本の中では秀逸でした。年月が経過することで記憶が確実に風化していく中、記憶の断片にとどめることこそが、復興を支えることになると意を強くしました。
復興の過程で、世界へのアピールという形で政治利用されてきた東北。東京オリンピック誘致で復興は二の次となっても、何とか浮上しようともがいてきた東北。復興が遅れる最大の原因となった東京オリンピックが、皮肉にも危機に瀕しています。東北の方々はどう思われているでしょうか。
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投稿者:HIRO - この投稿者のレビュー一覧を見る
震災後、みなさんで本当にささえあった事実がここにある。
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投稿者:右ソルデ - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は東日本大震災を東京で経験したけど、東北の方々がした経験とは比べ物にならない。
たくさんの死者がでたことも知ってはいるけど、それはテレビを通して膨大な数として知っているだけで、亡くなった人、残された人の個人としてのストーリーではなく、実感が伴っていなかった。
本書を読み、言葉を通してだけども亡くなった人個人や残された人個人に想いを馳せることができたと思う。
話は飛躍するかもしれませんが、日本は死を悪いこととして解釈しすぎていて、遠ざけすぎていると思います。死は悲しいことかもしれませんが、決して悪いことではなく、また誰にでも訪れることです。私はこの『遺体』が図書としてだけではなく、映像でも伝えられた方が復興やまた日本全体としての大事な価値観形成にも良いというか、大事だと思います。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
現在生きている人生の中で最大の犠牲者がでた震災。津波さえなかったら、ここまでの被害にはならなかっただろうに。
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2011年3月11日。40000人が住む釜石を襲った津波は、死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。膨大な犠牲者を前に立ち止まることすら許されなかった人たちの記録です。壮絶すぎて言葉がありません。
石井光太さんのルポルタージュは毎回読むたびに心のここから打ちのめされて、ほかの事が一切手につかなくなってしまうことが多いのであまり万人に勧められるものではないのですが、ここに書かれてあることは震災を経た日本人すべてに読んでいただきたい壮絶な記録です。内容を簡単に申しますと、釜石市でご遺体の収容、身元確認、葬送に当たった人たちへのインタビューを丁寧に積み上げた一冊です。民生委員。歯科医師とその妻。釜石市職員。陸上自衛隊員…。
彼らの語られる『遺体』の描写が、今もYoutubeなどの動画サイトに生々しいまでに残っている津波の暴力的な破壊力がいったい何をもたらしたのか、ということが痛いほどに伝わってきて、ページをめくる手が時々鈍ってしまったことをここに付け加えておきます。僕が読んでいて印象に残ったのは総ての医療機器が津波によって流されたときに役遺体の身元判別に立つのは人間の歯形である、ということでした。『沈まぬ太陽』の中にも遺体を区別するのに歯科医師たちが死臭と線香の臭いでむせ返る体育館の中で歯形を調べる、という場面がありますが、それとほぼ同じ描写が繰り広げられ、中にはあまりの惨たらしい犠牲者の変わり果てた姿や、生後間もない乳飲み子の遺体が遺体安置所となった体育館に運ばれ、横たえられ、駆けつけてきた遺族が遺体の前で慟哭する姿には『絆』ですとか『復興』という言葉がいっぺんに吹き飛んでしまうくらいに生々しく、壮絶なものでした。
さらに、目の前で津波にさらわれ、後日遺体となった肉親と対面しなければならなかったという方の話には本当に今思い出しても胸が詰まりました。筆者は最後のほうで、『復興とは家屋や道路や防波堤が修復して済む話ではない。人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、それを一生涯十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ』という言葉は、あの震災が起きてすぐに、未曾有の現場を体験し、被災した人たちに丹念に寄り添ったからこそ、かける言葉だなと読みながら感じました。僕は大手メディアが遺体を写さなかったのかについての是非をここで云々するつもりはありません。ただ、この本を読むことによって多くの『死者の声』『声なき声』に耳を傾けていただければ、幸いに思います。
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震災の犠牲者と一口に言っても、それは単なる数字の積み上げではなく、当然ながら、一人一人がそれぞれの人生を生きていた人々なのだ。
最後の瞬間まで、人間としての尊厳をもって遺体を扱う人々の尽力には、本当に頭が下がります。
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2011年3月11日14時46分
この日まで、日常が、当たり前に続くと思っていた。
大きな地震が来て、津波をもたらし、多くの犠牲者を生んだ。
その二日後に筆者が釜石市に向かい、地元の人たちの遺体回収現場に立ち会い、話を聞いて記した本書。
映画化にもなったようですが、観に行かなかった。
民生委員、歯科医、内科医、市の職員、自衛隊員、海上保安庁、葬儀会社。
それぞれ被災地の人たちが、自分の町の現状を見つめながら遺体と向き合った三か月の記録。
単行本として刊行されたものが、東日本大震災三年目で文庫化されました。
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東日本大震災では多くの死者が出て、心を痛めた。ご遺族、そして被災された方には、心からお見舞い申し上げます。
以下、自分の語彙が少ないため、不適切な言い回しがあるかもしれないこと、予めご容赦を。
人が亡くなれば、お葬式をする。それができない状況ででの対応が、いかに厳しいことだったかが、よくわかった。
数値として出ている被害の規模は表面的なことだと、本作品を読んで改めて感じた。
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所々で涙が止まらず。亡くなった人々を数字で置き換えるだけでは、想像力が止まってしまう。それぞれにそれぞれの人生があったわけで。この本の中に出てくる人々はほんの一握り。それを知るだけでも意味のある行為だと思う。震災を心の片隅にとどめておくためにも是非一読を。
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死者数を数字として並べてみてもそれは実態を伴わない。
ひとつひとつの遺体を目の前にしなければわからない真実というものがあるのだと思う。
遺体と向き合うことは人生と向き合うこと。
世界は不条理。
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単行本以来の、再読。
やはり生々しい。石井さんの著作のなかでも、本気の一冊だと思う。被災地をこんなにも近くで見て、書いたものは、ほとんどないのでは。
この本の執筆は、祈りというべき作業であった、と著者はいう。わたしはこんな石井さんの本気さが大好きです。
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自らも被災者である関係者たちが、大震災で犠牲となった余りに多くの遺体に戸惑い、悲しみを飲み込み、それでいて尊厳をもって接する姿とその心の内に、尊敬と感謝するばかりであった。
耳に入る身内の遺体を前に慟哭する声を一心に手を動かし耐える姿に、その苦しさが強く胸を打ち涙がこぼれた。
大災害の際は生存者を如何に保護し支援するかに焦点が奪われがちになるが、犠牲者とその親族の対応について国や自治体だけでなくボランティアも含めて備えておかなければならないと強く感じた。
また、僅か1~2キロ先の津波の情報が地域全体に伝わりきっていなかったことにも驚いた。
本書は、3.11を伝えるノンフィクションとして貴重な一冊であると感じたが、一方で小説風のプロローグと下手な情景描写がリアリティーを失わせていた。
似たテーマを扱った作品として日航123便事故を題材とした「墜落遺体」を読んだが、当時の担当刑事の飾らない文章がよりリアルであった。
東日本大震災からの早い復興を祈願するとともに、犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。
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テレビや新聞だけでは詳しく知ることができない釜石の方達の最期を知ることができました。
遺体に触れるには、正直なところある程度の覚悟や心の準備がいると思うのです。
ただ、あの震災の場では、それらを用意する間もなかったことがよくわかりました。
人の死はたいがい突然やって来るのですが、あまりにも多過ぎました。感情のぶつけようもなかったのだろうと想像するしかありません。
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2014年3月11日、乗換がうまくいかずに立ち寄った駅ナカの本屋で偶然目に留まった一冊。真っ白な表紙に『遺体』の2文字。帯に目を移せば、東日本大震災のルポだとわかった。
この日に見つけたのも何かの縁だろうと思い、その場で購入した。
内容は実に衝撃的だった。ボランティア活動にも行っていなければ、基本的に情報源はラジオという生活を送る我が家ではテレビもあまり見ることがなく。被災地の現場の様子はほとんど目にせず3年間過ごしていた自分。
自分が学ぶ資源やエネルギーの話として、原発については大学でも話題になっていたが、被災地の復興という部分にはほぼ目を向けてこなかった。
大地震とそれに伴う火事、津波。大きな被害と死傷者、大量の土砂やヘドロ、倒壊した家屋、瓦礫の山。写真はなく、数人の当事者のさまざまな視点から、見て感じたこと、当時の実際の動きについて記録されている。
想像するだけでも壮絶な現場。重たい。
でも、この本にかかれていることは、心に刻んでおきたいと思った。
この本を通じて、一人でも多くの人が当時の現場の様子を少しでも知ることができればと思う。
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東日本大震災の遺体安置所に関わる人たちの話。もし自分の家族や恋人が遺体安置所に寝かせられていたらと考えると、やはり火葬にしたい、早く埋葬してあげたいという気持ちもよくわかった。ただ、いつまでも置いておくと病気が蔓延してしまう恐れがあるという自治体の土葬の言い分もわかったので、火葬場が間に合って全員を火葬することができてよかった。