紙の本
小説を書いて売るをテーマにした小説って案外なかったかも。
2020/03/29 21:41
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
幼馴染の編集者と作家が、片や文芸誌休刊の危機を、片やは売れないまま消えてゆく不安を抱え、その逆境をバネに大逆転を図ろうと苦悩する物語。小説を書き、売るをとりまく話は、読書好きには面白すぎるテーマ。実際、期待を裏切りませんでした。ただ、そうして書き上げた小説を読みたいと思うのですが、それがかなわなかったのがちょっと不満ではあります。
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うーん。
出来過ぎかなぁ。
豊隆のキャラクターがなんだか最初と随分違っていて、読んでいて落ちつかない。
決して成長して人が変わったとかそーゆー感じではないんだよなぁ。
俊太郎と似てるのか?書き手と編集側がごっちゃになってる気がする。
あと、この手の本に出てくる架空の作品って、それこそその本を読みたい!と思うのにそれが一切なかった。
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鳴かず飛ばずの作家、その小学生からの友達の編集者が奮闘する熱きお話。
書けなくて苦しむ小説家、本が売れなくて苦しい出版界。そんな現状を打破出来るか?
面白い、感動した、でも・・・
この熱さをあのキャストで、上手くドラマ化できるかな?
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学生デビューしたもののヒットに恵まれず崖っぷちの三十路作家とその旧友の編集者コンビが、起死回生の逆転劇に挑む。
これは面白かった!前作は重い話だったが、今回はエンターテイメントに徹した軽快なストーリー運びで爽快感あり。キャラクターも立っていて楽しい!
ひねくれものの皮肉屋で、婚約者に「小説のためなら君の母親とも寝るけどいい?」と豪語する豊隆と、そんな豊隆の才能を一途に信じ続け、陰に日向にサポートする俊太郎。豊隆の先輩や同期の作家、俊太郎の上司も個性的!小説のことなんか何もわかっちゃいない嫌なヤツと見せかけて実は……というある意味王道展開だけど、だがそこがいい。横暴な態度と尊大な厚顔の裏に隠れた、小説への真摯な愛情に打たれてしまった。
出版社のみならずIT会社、女優やマネージャーとも連携し、小説を売り出そうと各自知恵を絞りアイディアを練っていく一体感はとてもいい。「面白い」は快楽で、面白い作品は絶対的に正義だという普遍的な真実を思い知らされる。
ながらく冬が続く出版業界だが、面接に来た青年の、「出版社の面接では面白い人に出会わなかった」にはギクリとする。声高に不満をたれる前に自分はそれに足る人物となりえているか、自問・自省したくなる。
惜しむべくは豊隆の執筆に重点がおかれ、肝心の小説そのものにあまり言及されなかったこと。豊隆が書いてるシーンは何箇所か抜粋されるが、詳細なあらすじや、欲張りというなら作中作として一端を垣間見たかった。これは内山や野々宮にも言える。特に野々宮は初登場からインパクトを与える強烈なキャラクターなのに、その後ほぼ出番がなくフェードアウトしてしまったのが惜しい。豊隆の中学時代の恋人なども、意味深な登場をした割には本筋に絡まなかったので、どうなったのか少し気になる。
俊太郎と悠の微妙な親子関係も微笑ましい。俊太郎と豊隆を支える妻は対照的だが、小説家の妻として、あるいは編集者の妻として、腹をくくった姿に好感が持てた。
次代を担う新人作家が終盤に登場するも、ほぼ名前のみの記述なので、どんな作品を書いたのか知りたくなる。続編があるとしたら悠や次世代の作家の物語になるのだろうか?
プロアマ問わず小説を読むのが好きな人、書くのが好きな人はぜひ読んでほしい。自分は「なんで小説を書いてるの?」と問われた豊隆の回答におもいきり共感してしまった。完結した時の気持ちよさは体験した人にしかわからない……。
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良かった。熱かった。クリエーターものはこうでなくちゃ。余計なご都合主義も無い。読み終わってからイノセント・デイズの作家さんだと気づく。その振れ幅たるや。
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タイトルに惹かれて読み始めた。設定はいいけれど、ちょっと中だるみ感ありで終盤は流し読み。
今春、テレビで放映されたらしく予告を見てみたが、これを先に見ていたら買わなかった。お仕事小説って好きなのに。
結婚式、息子の誕生日、文芸賞の発表日を同じ日に設定していて、これは賞獲るんだろうなーと思ったものの、そうは進まないところはよかった。
主人公が「書けない」と煩悶する場面で
p33 このとき、俊太郎は自分が「夢」に守られているだけだったと思い知った。~夢にすがっているだけで、せめてそのフリをしているだけで、とりあえず「いま」を留保することはできるのだ。
p241
いったい自分はいつまで゛いつか”のために゛いま”を保留しているのかってずっとムカついていたから。
p243
成功する作品ってやたらと゛当事者”が多いんです。これは俺の映画だ、私の作品だ、みたいに言い切っている人がすごく多い。逆に失敗するものにはそういう人が極端に少ない。
↑
JRのコピー「そうだ京都行こう」に自分が携わったと言う人がむちゃくちゃ多いと電通の人が言っていたのを聞いたことがある。然り。
ゲラを読んでほしいと伝えたかつての同級生が、「これで時間がつぶせそうだ」と言うのに対して
p273
たしかに俺たちってヒマの奪い合いをしているんだよね。貴重な休みに読んでもらえるんだもん。それはお金をもらっていることと等しいはずだし、感謝してる。~できることなら、ヒマつぶしの先に何かを感じてもらえることも願ってる。
p300
「うん。そんなことに悩んでる自分にも失望する」
p302
そんなふうに毎日正しく悩んでいたら、いつか何者かになれるんじゃないかとは思っていた。それは単なる精神論じゃなくて、なんていうのかな、傲慢な言い方に聞こえるかもしれないけど、自分に対する信頼だったんだと思う。~そうやって真面目に原稿と向き合っている自分の未来には期待できた。~書くことでしか切り拓けないっていうのはそういうことなんだと思う。
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作家と編集者。私にはわからない世界だが、この関係と本を作り上げる情熱が、今こうして私の手元で脳内で物語を繰り広げてくれていると思うと胸が熱くなる。実際はどうなのかは分からないが、そうであって欲しいなという率直な気持ちはある。出版社、編集者、作家。良い世界を垣間見れて読了後も清々しい気持ちになれた。
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内容の前に、大変にリーダブルな小説だということを、まず強調したいです。
相性もありますが、これほどスイスイと読める小説は滅多にない。
食事が終わって「そろそろ食後のコーヒーが欲しいな」と思った次の瞬間にコーヒーが運ばれてくるようなジャストインタイムな読み心地。
これは高い技量がなければ出来ないことだと思うんです。
早見和真さんの作品は初めて読みましたが、相当な巧者だということが最初の2~3ページを読んだだけで分かりました。
つまり、小説家として信頼できる。
そしてそのことは、「小説家」を題材にした本作を書く上で、とても大事な資質だろうと思いました。
本作は、華々しいデビューを飾ったものの瞬く間に落ち目になった作家・豊隆と、豊隆とは幼馴染で大手出版社に勤める編集者・俊太郎が主人公。
二人三脚で「いい小説を世に送り出そう」と奮闘する感動作です。
一度でも小説を書いた人なら、2~3ページに一度は心を動かされる箇所に出合うに違いない。
私は、気になる箇所があるとページの下端を折る癖がありますが、折り過ぎて下の角だけ厚くなってしまいました。
たとえば。
「直前まで恐怖の対象だったはずの『書けなくなる』ことが、途端に『もう書かなくてもいい』という希望に化けた」
「夢にすがっているだけで、せめてそのフリをしているだけで、とりあえず『いま』を留保することはできるのだ」
「どうして目の前の一作にこそ全精力を込められないのだという不満を、多くの作家に対するのと同じように、俊太郎は豊隆に対しても抱いている」
『申し訳ないですが、吉田さんの小説はテクニックばかりで、ひりつくような熱を感じません。率直に言わせてもらえば、読者が期待しているのは〝人称〟の問題なんかじゃないんです」
「小説にかかわることでしかもたらされない孤独は、書くことでしか解消されない」
「物語がなかったら人間はもうとっくに滅んでいるよ」
「もはやよほどの売れっ子か、資産家、あるいはパートナーにしっかりとした稼ぎがあるか、パトロンでもいない限り、専業作家など成り立たないと気づいていた」
「作品を読んでもらうことってその人の時間をもらうのと同じことなんだ。自己顕示欲が先立ってしまっている彼らにその覚悟があるとは思えない。少なくともプロはそこに対する自覚はあるよ」
「メインキャラクターの人物造形を変えていくことは、決して簡単なことではない。それでも絶対的に良くなるという確信がある以上、どんなに手のかかる作業だとしてもやらないわにはいかない」
「読者の心を捉えるのは、誰かが書いたそれっぽい美文ではなく、本人が記す熱しかない。同じ『おもしろい』の一語であっても、本気で思っているのとそうでないのとでは伝わり方がまったく違う」
「考えてみれば、デビューするまでは父に対するエネルギーだけで書いていたのだ。それがいざデビューしてみると、今度は読者や編集者の評価ばかり気にするようになり、怯えながら書いてきた。編集者たちに散々ぶつけられた『自分をさらけ出していない』という指摘は、きっとこのことに起因している。傷つくのが���わかった」
「俊太郎自身は早く書き始めることが正しいとは思っていない。中学生には中学生の、高校生には高校生の〝経験しなければならないこと〟があるはずだ」
「ある程度じゃダメだ。もうこれ以上直しようがないというところまで追い込んで、追い込んで、それでも直すところがイヤになるほど出てくるのが小説だ。ある程度なんていう失礼なことは許されない」
「太陽が昇っていく様を心の中で描写してみろ。カメラには切り取れない美しさが絶対にあるはずで、それをお前自身がフィルターになって映し出すイメージだ。本当に作家になりたいと思うなら、これからそういうクセをつけるんだ」
「そうなんです。書いている最中から、自分はどうしてこんなに日本語に不自由なんだろうって、どうして伝えたいことを素直に書くことができないんだろうって、そんなことばっかり思っていて。それで次はもっといいものを書けるはずだと思っちゃって」
「脱稿した瞬間だけは信じられないくらいの快感があるんだよね。そのときだけは何ものにも代えられない喜びをいまでも感じる。ご褒美のようだし、麻薬のようでもあって。実は信頼している編集者とさえ共有できないものなのかもしれないけど、その気持ちを覚えているからまた書こうって思える気がする」
「最後にもう一つだけ言わせてもらえるなら、書くことはやっぱり楽しいよ。やっぱり書いて生きていきたいと感じて、自分の人生を背負えると思える日がいつか来たらこっちに来ればいい。楽しいよ」
「出版社など編集も営業も関係なく、しょせんは本好きの集まりだ。これは……と思える作品に出会いさえすれば、何かしたくなるに決まっている。会社に対する不満は少なくないが、その点に対する信頼は強くある」
「小説家は書き続けるしか道はない。休むのは干されてからいくらでもできる。いいわね、書きなさい」
「とりあえず今日だけ生きてみようと思いました。明日もそう思える気がします。吉田先生の次の作品が楽しみだから」
「小説にとっての春はすぐそこまで来てるよ。また物語が必要とされる時代は、たぶん僕たちが思うよりもすぐ近くにまで迫っている。だからみんな急いで準備しなくちゃいけないし、焦らなきゃいけないんだ」
キリがないですね笑。
書き写しながら、胸が熱くなりました。
そして、早見さんに対する信頼がますます増しました。
小説を書いている人、これから小説を書こうとしている人、そして何より、心から小説を愛する全ての人たちに読んでほしい小説です。
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小説の売れなくなった時代に、編集者と作家が小説に魂を捧げる様に、編集者は支え、作家は書く。
この時代にどう売るか。
作家は売るために書くのではないと思うが、売れなくては生きていくのも難しい。
その中読み手は、これ面白いという作品に出会いたいだけなのかな。
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売れない作家と三流編集者。逆境の中でも互いの才能を信じる二人がタッグを組んだ時、奇跡の証明が生まれる。出版不況をリアルに描き、業界に一石を投じた問題作。
何故、日本人は小説を読まなくなったのだろう。本好きからすると理解不能だが、結局はクリエイター側に一種の驕りがあることに一因があると思う。本作の主人公二人のように、すべてを一旦リセットする気構えが、業界全体に求められているような気がする。
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小説家が書く小説家の物語。出版不況の現状と、暑苦しくもロマンあふれる創作の現場を描く本書は、小説好きを語る以上は避けて通れない一冊ではないかと。
小説を書く人、作る人、売る人、読む人。
その最後にいる私はプロの書評家でもなく、ただ単に本が好きで気の向くままに読みたい本を読み、気軽に感想を書いたりしている一読者ですが、この小説を読んで、小説というのは途方もない忍耐とロマンの塊なのかもしれないと思いました。
主人公は、10年前に文学賞を受賞して以来鳴かず飛ばずの作家 豊隆と、その幼馴染で文芸編集者の俊太郎。出版不況が叫ばれる中、十数年ぶりに再会したふたりは、日本の文芸界を変える一冊を目指して二人三脚で奮闘していく。
小説家が小説家を描くというテーマは斬新なものの、ストーリー自体は比較的単調で、主人公の二人が一冊の小説を通して成長する過程やその結末も、そこまで新鮮味のあるものではなかった、というのが正直な感想です。
ただきっとこの本は、作家や編集者だけでなく、文芸に携わる全ての人を代弁するような小説なのではないかと。だからきっとドラマ化、漫画化までされたのではと思います。
巻末の解説で森絵都さんも触れられていましたが、この本を読んで一番歯がゆいのは、豊隆と俊太郎がこれほどまでに情熱を注いだ小説『エピローグ』を読むことができないこと。数年前に流行った漫画「響」の『お伽の庭』に対してもそうでしたが、実在しない小説とわかっていながら、作中でその本を手に取った読者に嫉妬してしまいます。
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レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。
前半は、小学校の同級生だった編集者の小柳俊太郎と小説家の吉田豊隆が、二人でなんとか豊隆の小説を連載に持ち込もうと奮闘する過程で、はっきり言って少し前の青春ぽくて、退屈気味でした。
しかし、中盤で、豊隆が文壇バーのホステスだった晴子と結婚し、豊隆の小説『エピローグ』が完成したあたりから、物語は、さまざまな展開をみせて面白くなりました。
そしておそらく小説好きな方なら頷けるような名言、名場面がたくさん盛り込まれています。
俊太郎の中学生の息子の悠(しずか)も小説を書き始めているし、豊隆の元カノで女優の大賀綾乃も、豊隆の小説『エピローグ』の映画の主演が決定して、大活躍します。
私は、好きな作家の方に単行本についているアンケートはがきに「○○さんの小説で、世の中を変えてください」と書いて送ったことがあります。
世の中を変えるのは小説ではなく、政治かもしれないけれど、小説の歴史をたどると、小説にもそういう力が絶対にあると思います
以下ネタバレですが、心に残った登場人物のセリフ。
「いい小説とは何か。『すごい小説』という評価に優る物はきっとない」
「小説って何なの?誰が読んでるの?」
「小説なんて誰のものでもないからな。読んでくれる人だけのものだ」
「だとしたら俺たちは盛大に失敗しているよ。世界は1ミリも動いてないぞ。革命はいまのところ失敗だ」
「自分たちの書くもので世界をひっくり反すんだって。これはペンによる革命だって」
「確証があるわけじゃないけど、物語が必要とされる時代はきっと戻ってくるはずだから。つまりいまある物語が通用しなくなる時代ってことだ。終戦直後のように、みんなが共有していた指標を一気に失うとき」
「じゃあ、どうして書いたの?」「誰かが必要としてる気がしたから」
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中盤から一気に読み進めてしまった。普通の状況で聞いたら何とも思わない言葉の数々が、この本の中ではとても輝いており、魅力的にみえます。
私はいつも心に残った言葉を都度フレーズ登録しているのですが、この本に出てくるフレーズでそれをやろうとすると切り取った瞬間、魅力がなくなってしまう。小説から切り離すと駄目な言葉ばかりでした。
フレーズが格好良くて面白く、心に残る小説に巡り合うことも貴重ですが、このようなタイプの本には更に巡り会うことは少ないので嬉しい読書体験でした。
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新年最初の本は帰省帰りの新幹線の中でスタート。指定席の通路にまで立つ人があって少々落ち着かず。
売れない小説家の豊隆と、小説家を目指しながらも編集者となった俊太郎の幼馴染み二人。
彼らの屈託が描かれる前半は、多少かったるいけど、本が売れない現実と書くことだけでは食べていけない作家の現実がよく分かる。
115頁にある書き下ろしと連載の話など分かり易いが、本を書く人は本当に大変。こんな文章で面白いとか面白くないとか軽く片付けてしまってごめんなさいな。
二人に出版社の斜陽が襲い掛かる中盤からは、本を作り上げる熱さに加え家族の重みとか子どもなりの悩みの話なども加わって、まずまず面白く読めた。
周りの女性たちは出来過ぎているし、少々うまく行き過ぎの展開ではあったが、底にある作者の熱さや苦心はよく知れた。
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2020.1.21
成功する作品ってやたらと“当事者”が多い。
この言葉にとても衝撃を受けた。
解説の森絵都さんの熱にもビビった。
小説ってやっぱすごい!
今後これぞという作家さんの本は新刊で買います。