0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ順に読み進めてきたヴァランダー刑事もついに第7作目。
とにかく面白い。評価の高い『目くらましの道』よりも、個人的には好きだ。
夜読んでいると、もう一章、あと一章となってしまい、まさしく作中のイースタ署の面々のように、翌朝げっそりするほど読み続けてしまう。いや、お見事というほかない。
今作では、なんと長年の同僚スヴェードベリが殺害されてしまい、ヴァランダーが発見者となってしまう。仕事以外に個人的つきあいのなかったスヴェードベリだが、捜査の過程で、自分をよき友と周りに言っていたことをきき、他人の知られざる内面にこれから踏み込まざるを得ない状況に考え込む。さらに冒頭、あやうく居眠り運転で事故を起こしそうになったことから、自分の体が壊れる寸前であることを知らされるという最悪のタイミングで恐ろしい事件を捜査することになる。
前作以前から、異常に睡眠時間が少ないヴァランダーだが、本作では次々起こる残虐な殺人と、からくも難を逃れた少女が、ヴァランダーのまじかで殺害されるというダメおしまでついてきて、憔悴しきっていたところへ、天使としか思えないような行きずりの女性にあやうく倒れ掛かりそうになる。いままでも、つらいときに身近な女性に寄りかかる癖のある彼だが、今回だけはあまりの苛酷な状況に、それもありかとついうなずいてしまう。
いつも不機嫌なニーベリや何度も退職を考えるマーティンソン、優秀な弟子でもあるフーグルンドなどお馴染みのメンバーの描写も的確に、彼らの個性を際立たせている。
本当にスウェーデンが楽園だなんて、誰が言ったのか?というくらい、その抱える問題は深くそして普遍的だ。後編が楽しみ。
8月を暖かいと感じる国の事件
2011/08/19 22:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケルレン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴァランダー刑事の同僚スヴェードベリが頭を吹き飛ばされて殺された。同じ頃、友達と旅行に行った娘がいつまでも帰ってこないと何度も訴えてくる母親がいた。警察は事件性はないと考えて放置していたが、なぜかスヴェードベリは一人で捜査をしていたようなのだ。やがて娘たち3人の遺体が奇妙な状態で発見される。
殺人は計画的で異常なまでに緻密で、おまけに被害者たちが私生活の一部を注意深く隠していたため、動機や手がかりとなる人間関係がまったく浮かんでこない。死んだ若者の両親には責められるばかりだし、ヴァランダーは糖尿病にも苦しめられ、相棒の女性刑事は夫婦関係の危機にあり、実りのない捜査が続いてまともな睡眠も取れず、誰もが消耗していく。
今回は警察の仕事が肉体的にも精神的にもひたすらハードワークであることがリアルに描かれている。警官たちはまともに家に帰れないし、際限のない徹夜続きだ。上層部が政治的駆け引きをしている間、現場の人間が這いずり回って作業を進めているのは、どの国も同じということか。
投稿元:
レビューを見る
夏至前夜、三人の若者が行方不明になる。そしてその捜索を依頼されたイースタ署の刑事のひとりと連絡がとれなくなり……。
という事件の幕開き。
スウェーデンのクルト・ヴァランダー刑事シリーズの新刊。
相変わらず低調な男です、ヴァランダー刑事。これまでのシリーズも離婚した妻へ未練たっぷりで、年頃の娘のことは心配で、恋人との不仲に悩み、父親との確執にも悩み……、事件の捜査と愚痴に支配されている彼でしたが、ここにきてやっと諸問題に決着がついたかとおもいきや、今回は体調不良に悩まされることになったらしい。(それはメタボですよ、メタボ)
残酷で予測のつかない事件が展開しているのに、飽きもせず、くよくよと考え込んでいます、ヴァランダー刑事。
鬱陶しいはずなのに、つい、その愚痴につきあって、分厚い上下巻を読んでしまうのがこのシリーズの不思議なところだ。
(しかし、いくら落ち込んでいるからって、初対面の未亡人に抱きつきたいと考えるのはどうかとおもうよ、ヴァランダー刑事)
投稿元:
レビューを見る
文庫で、1200円とはビックリだが、その値段を越える面白さ!若くなく糖尿病で肥り、強くもなくいつも疲れている主人公の刑事、ただ犯罪に立ち向かう姿はいい。
投稿元:
レビューを見る
ヘニング・マンケルが描く刑事クルト・ヴァランダーのシリーズ第7作。
公園でミッド・サマー・イヴのパーティーをしていた若者が姿を消した。一方、出勤しないままの同僚スヴェードベリ。彼を心配して深夜にアパートを訪れたヴァランダーが見たものは・・・。
一押しの警察小説。今回はレギュラーの一人がまさかの退場。同じスウェーデンのマルティン・ベックの「笑う警官」を少しだけ思い出した。
さて、どうなる下巻。
投稿元:
レビューを見る
刑事ヴァランダー・シリーズ第7作。
全く身につまされる作品だ。
主役のヴァランダーは、バツイチ、母はとうに亡く前作で父も亡くなった。
姉と娘はそれぞれ離れた場所に住んでいて、日常的な連絡もとっていない。
恋人がいたが、もう何ヶ月も連絡を取っておらず別れたも同然。
友人らしい友人もいない。
50を前にして、糖尿病の宣告も受けた。
こんな状況で、同僚の刑事が殺されたことが判明する。
そして、今更ながら同僚の私生活を知らなかったことを思い知らされる。
中年男性の孤独とアイデンティティ・クライシスを見事に描いている一作だと思う。
投稿元:
レビューを見る
次々と展開する事件の中、ヴァランダーが、色々と個人的なこと―父親の件、父親の後妻の件、想いを寄せていた女性の件、元妻の件…―も手伝って、何か“孤独”を深めるような状況下、実に懸命に事件を追う姿が非常に面白い…
投稿元:
レビューを見る
「背後の足音(上下)」
夏至前夜、三人の若者が公園でパーティーを開いていた。18世紀の服装、料理、ワイン。彼らをうかがう目があるとも知らず・・・。ある日イースタ警察署に夏至前夜に友人と出かけて以来行方不明の娘を捜してくれという母親の訴えが出された。その捜査会議に刑事のひとりが無断で欠席する。几帳面な人物がなぜ?不審に思ってアパートを訪ねたヴァランダーの目の前に信じられない光景が広がっていた。(上のあらすじ)
作者はへニング・マンケル。現在63歳の大ベテラン、スウェーデン出身(私が出会った初のスウェーデン人作家です)。彼はクルト・ヴァランダー警部を主人公にした作品を書き続けているようで、この「背後の足音Steget efter」は1997年に発表されたヴァランダーシリーズ(現在最新作は「Den orolige mannen」(2009))です。
昔の作品ですが、当時の時代の空気を感じさせない作風になっています。魅力は推理小説の醍醐味の1つである犯人追求の過程です。ヴァランダーにくっついて行く私がいました。また犯人にも感じる点があります。90年代のはずなんですけどね、なるほど63歳恐るべし。
しかし、ちょっとヴァランダー警部シリーズ第1作目「殺人者の顔」を本気で読みたくなりましたね、これはw。また、この作品をきっかけに他の大ベテランの作家達の作品を読んでみたいと考えるようにもなりました。
63歳クラスの作家は誰がおりましたでしょうか?うーーん、ぱっと出てこない自分が悲しいw
投稿元:
レビューを見る
刑事クルト・ヴァランダー、7作目の本書では
50歳を目前に糖尿病になってしまった。
すぐにのどが乾くし、おトイレも近くなって捜査が
大変そう。リガにいる恋人との関係も終焉を迎え
元妻の再婚に心揺れる悲しきミドルエイジ。
長年ともに仕事をしてきた刑事が事件に巻き込まれ
あらためて職場である警察署内の人間関係にも
スポットが当たる。奇怪な事件の予想もつかない
犯人像を追いながら悩み苦しむヴァランダーの
孤独とそんなヴァランダーを影で支える仲間たちの
キャラクターもだんだん人間味を帯びてきた。
投稿元:
レビューを見る
読み手は刑事と同じものを見て、聴くことになる。頻繁に会議の場でそれまでのまとめをしてくれる。ミステリの王道ですな。
上巻読了しても謎は深まるばかり。
投稿元:
レビューを見る
始めの方はなかなか話しの本筋に入らないので進まなかったが、同僚の警官の殺人事件あたりから引き込まれた。
投稿元:
レビューを見る
昨年夏翻訳発行の最新作。
スウェーデン南端イースタ警察のクルト・ヴァランダー警部のシリーズ。7作目。
前の事件から2年後。
リガに住む恋人バイバとは4年間断続的に付き合ったが、やはり国が違うために結婚は出来ないと断られてしまう。
一方、亡くなった父親の家は、売りに出すことになります。
ヴァランダーは体調が悪く、離れて暮らす娘のリンダとせっかく出かけてもあまり疲れている様子に驚かれる。
さすがに病院へ行くと、血糖値が高いとわかり、動揺することに。
真面目な警官であるカール・スヴェードベリが連絡を寄越さずに休み、おかしいと気づいたヴァランダーは夜中に一人で彼の家へ。
死体を発見してしまいます。
誰とも深い付き合いのなかった彼が、唯一仲の良かった看護師の従妹イルヴァに、ヴァランダーを友達と言っていたと聞いて驚く。
スヴェードベリの意外な一面、そして不審な行動がしだいに明らかに…
若者3人が夏至の前夜、仮装パーティに集まったまま旅行に行ってしまったらしい。
行方が知れなくなっていて、母親は心配しているのですが、旅行先からの葉書も来ているので、捜査にはかかっていないという案件もありました。
ところが、3人の遺体も発見される。
現場の様子には不自然さが有り、理由もわからない。
パーティに参加するはずだったもう一人の女の子イーサを訪ねたヴァランダー。
イーサの両親は裕福だが、連絡しても旅行先から帰っても来ない冷たさ。孤独なイーサは、何か隠している?
犯人側の視点も少しだけありますが、正体や動機が全くわからないので、怖さがあります。
後ろから迫って来るかも知れないような。
相変わらず不健康なヴァランダーですが、事件には没頭。
のめりこみ&ひらめき型なので、読んでいる方も引きこまれていきます。
有能でも、事件を防ぐ所までは出来ないのが苦しい所。
中年男らしい悩みでいささかみっともない状態になるのも続いています。これは人間味?
女性署長や娘とだんだん上手くやっていけるようになったようなのは、少しだけ成長したかも。
作家の筆は、冴え渡っています。
1997年の作品。
投稿元:
レビューを見る
私の評価基準
☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
☆☆ 普通 時間があれば
☆ つまらない もしくは趣味が合わない
2012.8.13読了
評判のシリーズ物の第七弾。当然、面白い。
ただ、このシリーズを好きだったり、味わい深いと思うかどうかは、刑事ヴァランダー本人を好きかどうか、そこに入り込めるかどうかに寄る。私は好きですよ 少々、身につまされるような所はありますが。
でも、本作で本当に考えさせられるのは、書かれた1997年当時で、スウェーデンの社会と個人の状況が、作者によって、今の日本と同様に認識されているということです。
今、政治の場で、社会保障に関しては、ひとつの方向のモデルとして考えられている北欧でも、結局、同じような問題が起こっているのか、なんて事まで考えさせてしまうこの小説は、なかなか奥行きがあるんではないでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
ヴァランダー警部シリーズ7作目。今回は初めからなかなかおもしろく読めた。脇役の一人がいなくなったのは残念。
投稿元:
レビューを見る
糖尿病と鬱屈を抱えた中年刑事ヴァランダーが、今回は同僚と若者四人の惨殺事件を追う。
まったく動機が読めず、ぐんぐん読ませる。素晴らしい。