カイマナヒラの家
様々な人が共同生活を営むその家は、サーフィンに魅せられハワイイに通うぼくの滞在場所となった。夕日の浜でサムに聞いた「神様に着陸を禁じられた飛行機」の話、伝説の女性サーファ...
カイマナヒラの家
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商品説明
様々な人が共同生活を営むその家は、サーフィンに魅せられハワイイに通うぼくの滞在場所となった。夕日の浜でサムに聞いた「神様に着陸を禁じられた飛行機」の話、伝説の女性サーファー、レラ・サンの死。神話を秘めた島々ハワイイが見せてくれる、永遠に通じる一瞬と失わなければいけない時を描いた、美しい物語。この物語の登場人物はすべて架空であり作者の想像の産物であるが、家は実在した……。海と向き合う写真家・ 芝田満之撮影によるハワイイの光と波との幸福なコラボレーション。
目次
- 神様に着陸を禁じられた飛行機/すべてのはじまり/カイマナヒラの家/冷蔵庫の中の写真/ドライ・レイク/カパルア・キュナード・ホテルの幽霊たち/ウィンド・サーファー/お春さん/海に葬る/カラミティー・ボーイ/「家に帰ったらおしまいでしょ」/カイマナヒラを出る
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素敵なことを教えてくれる。
2004/06/21 01:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:TOYOKUMA - この投稿者のレビュー一覧を見る
この物語の舞台はハワイイのダイアモンド・ヘッドの麓に本当に建っていたという古くて大きな一軒の家である。この物語の語り手である男は、この由緒正しい家を借りて住んでいる男と偶然出会ったことから、ハワイイに来るときにはかならずその場所で過ごすことができるようになる。とても素敵なことである。そして彼はその場所で、良い人々といっしょに良い時間を過ごす。
人には自分がいるべき場所とそうではない場所があるのだと僕は思う。自分がいるべき場所にいるときはとても居心地が良くて、どんなに長い時間を過ごしていてもちっとも退屈にはならないけれど、自分がいるべきでない場所にいると、息苦しくなったり、意味もなく眠くなってしまったり、肩がこってきたりしてしまう。そういう生活が長く続いてしまうといつの間にか生きていること自体が苦しくなってくるのかもしれない。そしてそうならないようにある人は大きな買い物をし、ある人は旅に出る。大きな買い物はしばらくの間はその魔力を発揮するがいつかは大きなゴミになる。そして旅は旅をしている間は大きな魔力を発揮するが帰って来たら魔法は消える。もちろん旅は思い出という目には見えない姿で心の中に残るので旅の魔力は細々と長く続く。あるものは魔力が無くなる頃にまた新たな大きな買い物をし、あるものは魔力が無くなる頃にまたどこかへ旅に出る。そんな風にして、自分自身の周囲に流れている空気を循環させることによって人は生きている。
一人のウィンドサーファーがいる。彼はこの物語の中で唯一、自分のいるべき場所を最初から最後まで見つめ続けている。彼の言葉を読むと僕はとてもうらやましくなる。こんな風に自分のいる場所について語ることができるようになりたいなあと。けれどもそれは努力したり懸命に探したりして見つける種類のものではないらしい。それはきっと誰もがちゃんと持っているものなのだ。そのことに気が付くか気が付かないかの問題なのだ。
池澤夏樹はハワイのことを書き表すとき、「ハワイイ」と書く。なぜそんな風に書くのかという理由もこの小さな本の中にはちゃんと書かれている。
そんなわけでこの本は、とても小さな本であるけれども、いろいろな素敵なことを教えてくれる。