紙の本
世界が赫に染まる前に
2024/04/05 15:12
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生の櫂は、いじめの加害者に復讐するために、文稀と共にその予行演習として、他のいじめ事件の加害者達を私刑していく。
ごく普通の常識と正義感を持った櫂が、普通に文稀と友達になれたら良かったのに。2人の復讐旅行も、ただの、親友との楽しい旅行だったら良かったのに。時々みえる中学生らしさが、悲しかった。
いじめの被害者は、心身の傷や後遺症にずっと苦しんでも、加害者はその後、社会に紛れ込める。この小説では、その理不尽さを強く感じた。
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表紙絵と帯で購入。完全なジャケ買い。
社会に絶望を感じている二人の少年の邂逅。
一人は従兄弟が理不尽ないじめのため人生を狂わされたことに、一人は両親のために自身がおかれた境遇に理不尽さを感じ、通常の生活に馴染めなくなっていた。
その二人が少年法と事なかれ主義の社会に守られて正当な罰を受けていないと思われる者たちに報いを与えるという行為で、ある種の友情を育みながら社会の構成員としての自覚を持っていく。
今の世の中にあるイジメ問題や少年犯罪の裁きを捉えた作品であると同時に青春小説である。
二人の行為がリアルで、読んでいて恐怖を覚えた。また行為を受けた者はそのような報いを与えられる行為をし、かつ納得する裁きを受けていないという現実にも慄然とする。
主人公たちの行為、報いを受けた者が行ったことが現実に蔓延しないことを願いたい。
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登場人物も少なくストーリーも分かりやすい。
私はもう30歳を超えた立場なので達観した気持ちで
読み終えることができた。
学生の時に読んでいればまた違った感想を
持っただろう。
従兄弟の復習を、接点のないクラスメート共に
遂げていく計画。
2人は徐々に友情を深めていくが、、
従兄弟の回復と共に復習に対して気持ちが
揺らいでいく。
毒親をもつフミキ。誰からも必要とされていないと
知り自暴自棄となり、1人でも計画を確実に遂行してゆく。
愛されていないと思っていたが、
父が彼の生きていることを望んでいることが分かる場面があるが、本人はそれを知ることが出来ないという部分が
切ない。
文章自体は、難しい表現もなく、
淡々とすすんでゆく。
時間があれば読んでみてもいいかと。
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勧善懲悪を主軸としたシンプルな話の展開で、読んでてスッキリするからか、1日で読了。
法で裁けない悪ってのがあって、人は一定数イカれてて、その中で集団として生きていかなきゃいけない限り、やるせない事件は起こり続けていくんだろうなあー、って他人事のように思うけど、こういう理不尽が自分にいつ降りかかってきてもおかしくないワケで。
小説の中の出来事だけど、現実に起きててもおかしくないし、きっと起きてるんだろうな、って考えると怖いし悲しいし、何よりやるせない。
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中学3年生の緒方櫂は夜の公園で出くわした高橋文稀に申し出た。「自分を手伝ってくれないか?」とである。何を手伝うのか?“復讐”であった。
緒方櫂には実の兄弟も同然に育った、1歳下の従弟、更に1歳下の従妹が在った。従弟達は別な中学校に通っていた。そして深刻な“いじめ”を受けてしまっていた。従弟は酷い暴行を受けて、簡単に回復出来ないような重傷を負ってしまっていた。従妹も嫌がらせを受けて心に深い傷を負って祖父の家に引き籠ってしまっていた。それだけのことになって、加害者は厳罰に処されたとも言い難い状態であったのだ…
緒方櫂はその加害者に“復讐”でもしなければ気が済まないという思いで、気持ちのやり場に困っていたのだ。高橋文稀は、この緒方櫂の申し出を受け入れた。
高橋文稀は、最初から本命の「従弟達への加害者達の首謀者」に手を出すのでもなく、“予行演習”が必要だとする。緒方櫂はそれに得心する。そうして、方々で“いじめ”の加害者であった者達について調べ、襲撃を重ねるのである…
この襲撃の顛末、緒方櫂と高橋文稀との奇妙な連帯の行方、或いは2人各々の心境の変遷というようなことが本作の物語だ…
“いじめ”によって回復困難な重傷を負う、命を落とすというような事例は随分と以前から尽きない。そういう中で“復讐”を想う人達は在ることであろう。或る意味で、そういう問題に向き合っている物語だが、他方で独特な歩みで独特な個性を育んで現在に至っている高橋文稀の物語という感でもある。
何か「憑かれる」かのように、ドンドン読み進めてしまった物語だった…実際、休日の1日で読了してしまった。
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動機はシンプル、その後の仕打ちもシンプル。ブログの件(くだり)もシンプルだけど良かったな。粛々と粛清を。
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2020年、7冊目は、今年、既に3冊目の櫛木理宇。
緒方櫂、中学三年生。現在は家庭的事情で野球部を休部している。休部理由は、従弟が、上級生によるいじめの末、意識不明の重体に陥っているためだ。さらに、あまり公にはなっていないが、その妹も性的暴行を受けていた。持て余していたフラストレーションを、櫂は夜のランニングで発散していた。ある夜、ランニング中、公園でクラスメートの高橋文稀と出会う。文稀は、6ヶ月先の15才の誕生日までに自殺する願望を持つ。そんな文稀に、櫂は復讐の相棒を依頼する。
400p超だが一気に一晩で読めた。「イジメ、ダメ、ゼッタイ」だけで解決出来ないのも現実。キレイ事だけでは、済まされない事ってのもある。
ただ、暴力は暴力しか生まない連鎖もある。現実とフィクションの線引きが出来て、ある程度の暴力描写耐性がある方々だけ読んで欲しい。
まぁ、ある種の犯罪が起きて、TVのワイドショー系にかじりついて、あぁだ、こぅだ、と持論語る者の多くは、本自体読まないか……。
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同じクラスに居ながら、言葉も交わした事の無かった櫂と文希。偶然に出会った公園での夜をきっかけに、ある計画を実行することになる。
それは隠蔽されたイジメによって受けた暴力で、意識不明になっている櫂の従兄弟の祥太の為の復讐だった。
スクールカーストで表したら、真逆に位置する二人だが、復讐の予行練習を繰り返すうちに友情が芽生えてくる。
罪にならない悪、理不尽でやりきれない事件が確かにあり、ニュースを観ると仕事人が実在してもいいのではないか?とも思えてくる。
しかし復讐相手への暴力の描写はリアルで、苦しくなった。
自分が高1の時に、隣のクラスの子が自死した。原因はイジメや、恋愛、複雑な家庭環境など聞こえてきたが本当の所は解らない。
15歳の誕生日に死のうとしていた文希は、どうして最後にあんな行動にでてしまったのだろう。
少なくとも、今の文希には、櫂と二人で食べたかき氷や、公園での花火、寝袋に入って見上げた満天の星空の夢をみていて欲しい。
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主人公の従兄弟が酷いイジメを受けたことに対する復讐をすべく、予行演習として過去に犯罪を犯すも少年法に守られている加害者たちに、制裁を加えていく報復と復讐の物語。
主人公2人が因果応報とばかりに盛大に裁いていく展開を肯定する私と、被害者から加害者へ変わっていく2人を否定する私が、途中から対峙する始末。
前読の作品のテーマが刑法39条。
今回のテーマは少年法。
どちらも加害者だけが守られている印象が否めないのは、被害者の事情までフォーカスされた事件や作品を目にしているからであろうか。
初著者だったが、非常に読みやすく、文体も言葉選びも好みな作家。別の作品も読みたくなった。
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「少年法というのはもともと、戦後に町へあふれかえった戦災孤児に対する情状酌量措置として制定されたそうだ」
本を好んで読み、様々な世界に触れる日常を送っている私達は、想像する事が出来る。
相手に触れた時、どう感じるのか。
言葉を投げかけた時、どう考えるのか。
自分がこうした時、相手はどう思うだろうか。
どうしたら嫌がるのか、痛がるのか、相手の立場になって想像をする事が出来る。
それが当たり前の事ではなく、人の痛みに鈍感な人もいるのが現実だ。
法に守られ、のうのうと生きている加害者もいるのが現実だ。
たとえば自分の子供が櫂のように行動しようとした時、
あなたは間違っているなどと言うのだろうか。
何故あなたがそんな事をしなければならないのかと問うだろうか。
憎しみを忘れて新しい人生を歩んでほしいだなんて綺麗事を言うだろうか。
復讐をしても被害者の人生は元に戻らない。
体や心が癒されるわけでもない。
幸せへの道ではない。
私達はどんな言葉をかけてあげられるだろうか。
どうしたら救えるのだろうか。
どの道が正しいのかはわからないけれど、弱者が虐げられ泣き寝入りするしかない世の中を変えていくしかないのだと思う。
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緒方櫂と高橋文稀の復讐劇。
文稀のブログの意味に気付いた時、櫂のことを友達だと信じている文稀がいたんだって知って泣きそうになってしまった。
二人がやっていることは正義を振りかざしたとしたって暴力だし、犯罪だし、良いことではないんだけど、その間に二人の絆が確立していったんだなって実感した。
文稀が報われないなぁ。
母親がクズすぎて。
でも、こういう母親も実際いるんだろうなって思えてしまう世の中が怖い。
文稀が今後幸せになれるといい。
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トマトの花言葉は【完成美・感謝】らしい。
カバーイラストには少し崩れたトマトが描かれている、それが意味するものは…と。
読むと意味が通じるというか、ちゃんとカバーイラストにヒントがあったんだと思ったのはただの考えすぎか?
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誰にも見てもらえなかった文稀は、「復讐」という名目で、「自分を世に認識してほしい」という腹の奥底に眠る欲求を満たしているように思った。
「子どもは精神が未発達のため、少年犯罪の心理は明確になっていない」という様な文章があったが、少年犯罪の動機にはこのような心理があるのではないか、という一説を提唱しているようにも見えた。
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少年の復讐劇。少年犯罪やイジメについて考えさせられる。
素直に読んでいくと最後に「ん?」ってなる。
これも、ミステリー…なのかなぁ?
ジャンル分けが難しい…。
けど、面白く読めたのでそれが一番!
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かなりグロい復讐劇だったし、目を覆いたくなるような描写もあった。
だんだんかわいそうにも思えてきた。
でも、復讐劇が起こるということは、そこに原因があるはずで。
無垢な人間を傷つける方が悪いはずなのに、その首謀者がかわいそうに見えてくるほどの復讐を書き表していて見事だったと思う。
また、協力者同士で感じる同じ世界を共有しているドキドキ感にはピュアな青春すら感じた。
ただ、かなり暴力的!(^◇^;)