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限界を認識したうえで
2020/02/10 09:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:魚太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
リベラリズムには限界がある。従来からの社会的規範や功利主義など、事案によってはリベラリズムはその下位に位置するしかない。例えば所得の再分配を徹底せよとリベラリズムが訴えても、財源問題に口をつぐんでいたのでは説得力がない。そこに限界がある。リベラリズムと右翼が対立するという構図は、実は存在しないのだと教えてくれる。冷静で公平な思索が必要である。
紙の本
リベラリズム批判だが
2022/03/23 16:25
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつてニュース番組にもよく出ていた著者。比較的バランスが取れた人だと思っていたが、こんな主張をする人だったっけというのが率直な印象。
リベラリズムの限界についてはよく分かるのだが、リベラリズム批判のための批判になっていて、せっかくの論が良からぬ方向に利用されかねない気がした。
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どこまでもロジカル
哲学って役に立たないって言われるけどこういうロジカルの訓練ハンパないのだろうな
同性婚は問題なし一夫多妻はギリギリでも近親婚まで認めないとリベラルじゃないなんて
難しいねサッちゃん
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リベラルな思想とリベラリズムの違いがよく分かる。
ただ、文体はかなり読みにくく、個々の事例を否定してるだけなので読後感は悪いです。前向きな提案や事例が書かれて欲しかった。
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リベラル的な人々が嫌われる現象がすごくよくわかる。
著者のいうリベラルの限界という補助線を用いると、ツイフェミとオタクの論争や少し前のベルクの喫煙論争におけるリベラル的な人々の欺瞞とそれに対する普通の人々の嫌悪感がよく説明できる。
分配の限界という補助線を用いると経済政策が弱いことの致命性が見えてくるし、マクシミン戦略の誤謬という補助線はリベラル的な人々がネトウヨを嘲る際の「想像力が足りない」という紋切り型が表層的であることを看破させる。
著者が意図した以上にリベラルが自らを省みるのに役に立つ本である。とりま、立憲より左の方の人たちは全員読むべき。左に行けば行くほど読むべき。だがこういう本当のことを看破する内容の本は左に行けば行くほど読まれないだろう。
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リベラリズムとリベラルの違いがよく分かる良書です。
同性婚と一夫多妻に対する二重基準が特に納得しやすかったです。
半面、問題点を提示しつつも、その解決の糸口が示されていない点が残念です。
また、本書ならびに著者に対する排外主義という中傷も
本書に記載している排外主義の前にある問題意識を
(故意か過失か分からないが)無視しているという点で皮肉なところも面白いです。
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功利主義とロールズの正義論。
仰る通り、と首を頷きたくなる部分は多い一方で、批判だけして終わってしまった1冊なのが残念。
そこまで言うなら、じゃあどうするの、の筆者なりの考察があっても良いのでは…と感じてしまった。こちらも偉そうですが。。
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萱野稔人(1970年~)氏は、早大文学部卒の、政治哲学、社会理論を専攻する哲学者。津田塾大学教授。
本書は、近年「リベラル」といわれる人たちへの風当たりが強くなっていることに対し、その現象の本質は何なのかを明らかにしようとしたものである。
本書のおおまかな内容は以下である。
◆「リベラリズム(自由主義)」とは、哲学史上はジョン・スチュアート・ミルが体系化した、「他人に迷惑や危害を与えない限り、たとえその行為が他人にとって不愉快なものであったとしても、社会は各人の自由を制限してはならない」という哲学的原理のことである。しかし、リベラル派と呼ばれる人びとでも、その多くが、(今日では)同性婚を認めることはできても、一夫多妻婚を認めることができないように、どの範囲までリベラリズムの原理を適用するかを決める規範意識が、リベラリズムの原理よりも先にあるという点において、リベラリズムには「限界」がある。
◆リベラル派が批判されるのは、人びとが右傾化したためだと一般に言われるが、リベラル派への批判が高まってきたことと人びとが右傾化してきたことは、同一の事態における表裏の現象であり、因果関係にはない。右傾化といわれる現象のもとにあるのは、経済成長が鈍化してパイが縮小するという危機意識で、その言動は限られたパイを死守しようとするものであり、右・左という政治的立場の選択というより、功利主義(全体的な利益を考慮して、その全体的な利益が最大になるよう行動するべきだと考える立場で、ジェレミ・ベンサムが体系化した)の拡大と捉えるべき。一方、現代におけるリベラリズムはパイの配分を手厚くするべきだという立場(ジョン・ロールズが理論化した)に立つ。よって、現代の右傾化といわれる現象と、その周りで生じている対立は、(現代の)リベラリズムと功利主義の対立というべきである。
◆ただし、ロールズのリベラリズムには、パイの分配には「経済が持続的に発展する」という条件・前提がついており、パイの拡大が見込めない現代において、リベラル派の主張には根本的な欠陥があり、人びともそれを見抜いている。
◆また、そもそもなぜ現代の(ロールズの)リベラリズムはパイの分配を手厚くすべきだと考えるのかを突き詰めると、パイの配分を(ミルの)リベラリズムによって正当化することは実は極めて難しい(むしろ、功利主義などで説明する方が容易)のだが、リベラル派はその「限界」を自覚できていない。
上記の通り、著者は、現代リベラリズムの限界を二つ挙げており、その論旨は明快である。前者は、おそらくリベラリズムの本質に係る問題であり、本当にリベラリズムを主張するなら乗り越えていかなければならない問題といえる。一方、後者については、パイの再分配をどう考えるか、即ち、経済的格差をどう考え、どう手を打つかということであり、理論的根拠をリベラリズムに求めるか否かにかかわらず、現代世界の究極の課題のひとつである。
そして、後者の問題について、著者は、日本の歳入・歳出の統計等を示して、拡大しないパイの配分を厚くすることは現実にはできないと述べているのだが、私は疑問に思っている���事実、米国では、上位1%が持つ資産は下位90%が持つ資産の総量よりも多いというし、米国の株価指数は、今でも史上最高値を更新し続けている。世界全体で見た場合の、様々なレベル(国の中、国々の間など)での格差は歴然としているし、再分配するだけの原資はいくらでも存在するはずだ。私は、世界中で進む内向きの風潮は言うに及ばず、宗教・民族間の対立の根本的な原因さえも「格差」にあると考えている。格差を縮小する政策は、地球温暖化を止める対策と同じくらいに、われわれの将来を左右する重要テーマである。それは、リベラル派であろうとなかろうと真剣に考えなければならないことなのだ。
(2020年1月了)
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リベラル的な人々が嫌われる現象をロジカルに分析した本。
欧米でリベラルが退潮な理由の一端をよく表している。
リベラル=理想、保守=現実という風に見ると、リベラルは理想を通り越して「お花畑」「夢想」の域まで行っちゃってる事例が多いと考えます。
本の中で書かれてませんが、日本の場合は民主主義を破壊する社会主義・共産主義的な人間が「リベラル」を名乗ってしまっているので、前提が成り立たない部分があると考えます。
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著者とは、ほぼ同年代。
マスメディアで扱われる政治情勢、学校教育で伝えられた政治情勢。苛つく内容が多く含まれていた。
そうした違和感を、明確に文章の形で、掘り起こしてくれている。
様々な受け止めは、時代、年齢にも大きく影響を受けるものだろうか。
そんな疑問を持つほど、書かれている内容が、自らの感覚と近い。素晴らしい。
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リベラリズムについてよく纏まっている。
なぜそう考えるのか、他の考えとの比較、考察など十分。全体最適のまずさ、功罪についても深く理解できた。
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読みやすい
身近な例がたくさん載っているので、学生にもわかり易かった!
たしかに、同性婚ばかり取り上げられて一夫多妻などの結婚形態について言及していかないのか?など、リベラリズムの限界について学ぶこと、改めて考えることができた。
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現在のリベラル派言論が抱える課題(というか欺瞞)について、結婚制度(同性婚に対して寛容であるにも拘わらず、なぜ一夫多妻制には否定的なのか)と、「弱者」への富の再配分(配分のパイ自体が縮小している状況における再配分には無理があるにも拘わらず、なぜそれが可能なように振る舞うのか)の二つを取り上げる。特に後者はクリティカルな問題であるにもかかわらず(取り分けリベラル側から)語られる事が少ない事について違和感を持っていたため、テーマとしては非常に興味深かったが、新書の紙幅もあってか、尻切れ感があった事は残念。
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最近目に、または耳にする機会が増えた保守派(ナショナリズム?)の人たちのいうことに納得できない部分があったので、自分はリベラルだと思い込んでいたけど、そうではなく、私も立ち位置は彼らと同じで、違いはマインドの質だけだと気がついた。そして本書を読んで痛い所をたくさん突かれたような気持ちになった。
考え直す機会ができた。
読んで良かった。
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第1章 私達はリベラリズムをどこまで徹底できるのか
リベラルがやりがちなダブルスタンダード
第2章 リベラリズムはなぜ「弱者救済」でつまづいてしまうのか
リベラルは給付を厚くするよう主張するが、その原資(増税)については触れない