紙の本
ひとりで出版社を立ち上げてからの10年間の話。
2020/04/26 21:21
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
編集作業はもちろん、営業・事務作業ももちろんひとり。本が出来上がれば、その発送作業も自らの手で行う一人出版社。最近、そんな出版社がささやかに増えてるみたいだけれど、著者もそのひとり。本書は、そんなひとり出版社「夏葉社」を創立してからの10年間のことを描いた。ひとりで出版社を!?と、少し驚くけど、「定番的な本を丁寧に作り、長期的な利益を確保」を指針とし、そのため、夏葉社を応援してくれる本屋さんを全国に100店舗開拓⇒その100店を重点的に営業するというやり方は、出版社として新しく、図体の大きさを持て余し、ややもすると本・雑誌の自転車操業状態になっている気配もある既存出版社より理にかなっているかも。まさに、古くからある出版という業態の新しいやり方。いろんなことが描かれる深味のある一冊だけれど、この出版の新形態の話が面白かった。
紙の本
『古くてあたらしい仕事』
2020/08/11 19:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2009年創業
従業員ひとりだけの“ひとり出版社”「夏葉社」のモットーは二つ
《自分が欲しくなるような本をつくる》
《できるだけ他社がやらない仕事をする》
編集、営業、事務、発送、経理……すべてをひとりでこなしながら、文芸書を中心に年に3冊ほどを刊行している
出版から10年間の収支は7勝3敗という
「転職活動がうまくいかなくて、会社をやるしか選択肢がなかったんです」
事故死した従兄とその両親のために1冊の詩集をつくりたいと思ったこと
和田誠に装丁をしてほしくて、荒川洋治に巻末エッセイを書いてほしくて、庄野潤三の撰集を出版したくてその遺族に、長文の手紙を書いて依頼したこと
悩みながら、迷いながら本をつくりつづける経営者が、出版社を立ち上げるまで、立ち上げてからを綴った“生き方”と“本”の本
大きな会社がやらない仕事に活路を見出す出版人の書き下ろしエッセイ、新潮社から
紙の本
考えさせられます
2022/06/21 13:04
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投稿者:lucky077 - この投稿者のレビュー一覧を見る
一人で出版社を立ち上げ、出版から営業までこなしている著者。本を取り巻く環境が変わり、システム化が進み、売上を追求するやり方が変化してます。その中で、仕事ってこういうことだよね、と著者が考えていることを経験を通じて語っています。
私が社会人になる時、人(世の中)の役に立つ=社会人と意識したことを思い出しました。考えさせられる本です。
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夏葉社の島田さんの、ひとり出版社を立ち上げるまで、それから10年経って今思うこと。
淡々と語られる出来事の裏に、喜びや悲しみがきっとあった。そこに思いを馳せると胸が熱くなる。
こうして作っている人の思いを読むと、出版される本がまた違って見えてくる。
一冊一冊からその本を作った人の気持ちが立ち上ってくる。
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島田さんの、本と本に関わる人たちへの愛が感じられ、本ってステキだな、私もなんやかんや頑張るぞーという気持ちになれた。誰かに必要とされることに感謝しよう。
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あとがきで、この本は2014年に生まれた息子に伝えたいと思って書いた、と書かれている。
誰かに届く仕事をすることを、いかに大切にしているかが、丁寧に真心込めて書かれている感じがしたのは、息子さんへのメッセージだったからかと納得。
働くことの意味が分からなくなってしまった大人や、これから社会に出る若い人たちにおすすめしたい。
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ノウハウだのハウトゥーだのといったビジネス本はすべて捨てて(1冊も持ってないけど)、この本を読めばいい。読書とは、仕事とは、時代とは、にとどまらず、生きるとは、について、大切にしたいこと、忘れてはいけないことがやさしく書いてある。著者の意向には合わないかもだけど、中学校あたりの国語の教科書に採用してほしい。
ちょっとの邪念や欲も、時には受け入れながら笑い飛ばしながら、そういう類の人たちにも理解を示しながら、自分は自分の道をゆく。これ、と決めたものや人には、精一杯の愛情を注ぐ。そのためならなんでもする。そんなふうに生きていきたい。人生迷子になったときは、この本を読み返したい。
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空気のおいしいとこまで行かなくても、自分が何を好きで、何を選ばないかを考えることはできるなあと思った。
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ニッチな仕事の考え方がわかる。
著者は最初からある程度狙いを持って実践してうまくいったところはあったかと思うが、その後はひとりひとりのお客様や関係者に支えられて続けてこれたというのは本当のところではないかと思われる。
アマゾンでもしっかり売っているところも隠さずにサラリと述べているところもよくよく知っておく必要はありそうだ。
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この本の存在を「光」と捉える人がいっぱいいるのではないでしょうか?会社への就職という働き方にうまく適応出来なかったけど「ひとり出版社」を興し「好きなこと」を「仕事」にすることが出来た人の幸せな物語です。「働き方改革」をみんな口にするけど、それは「働かせ方改革」「働かされ方改革」でしかない、と感じてきました。しかし、本書には仕事と人生を自分で重ね合わせる本当の「働き方改革」について書かれているように思います。生活のためには仕事をしてお金を得なければならない、という「働かざるもの食うべからず」概念からの脱却が小沢健二の朗読会というのには意表を突かれましたが、でも働くという行為において「should be」の時代から「will be」の時代へのシフトは確実に起こっています。たぶん来るか来ないかわからないけどベーシックインカム時代における働くことの意味の再定義もその文脈にあるのだと思います。急に思い出しましたがバブルの頃のananの特集に「好きな仕事で甘い生活」(記憶不鮮明)というものがありましたが、今は「好きな仕事で長い人生」なのかも…だから、ひとりひとり自分の好きなことをしっかり人生資産にする力が必要になり、それは自分の好きな人と繋がりをもつ力と同じ意味になるのです、きっと。だって著者の起業のきっかけが、好きな従兄弟の死に対して、好きな叔父叔母に寄り添うために、自分の好きな詩を、好きな本にして手渡す、というところから始まっているのですから。著者が庄野潤三の家族に向かい入れられ、和田誠とも深い親交を得えたのは、運ではなく能力でもなく、生き方なのかもしれません。和田誠死去の前に出版された本ですが、彼はこの本を愛したように想像します。夏葉社って初めて知った気になっていましたが、実は夏葉社の本は読んでいたし、積読にも入っていました。キュレーターとしての出版社、もっとチェックしなくちゃ、とも思いました。
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読書愛、書店愛に溢れた一冊でした。ところどころに自分自身を指摘されてるような文章に出会ってドキッとさせられたり、そうなんです!とうなづかされたり。本に出てくる夏葉社の書籍を読みたくなりました。良い本に出会えてました。
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「本を読むということは、現実逃避ではなく、身の回りのことを改めて考えるということだ。自分のよく知る人のことを考え、忘れていた人のことを思い出すということだ。」
「素晴らしい作品は、いつまでも心のなかから消えず、それは内側から生活するものを支える。」
まさに、この本がそんな作品になったなぁ。
社会人になる前、社会人1年目、3年目、仕事が楽しいとき、悩んでいるとき。読むときによって感じ方が違うだろうから、これから何年もかけて読み返すのが楽しみ。
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「良い人に、出会った」と思った。
実際に会ったことはないが、本の中で出会った人に、励まされた気持ちになった。
ひとり出版社「夏葉社」の島田潤一郎さんの著書「古くてあたらしい仕事」は、
島田さんが、これまで取り組んできた仕事について書いたエッセイ。
出版社を立ち上げたきっかけや、最初に出版した本、著者や装丁者、出版社や書店の人のことに触れながら、
「何を大切にして、仕事をしているか」について書いている。
読み終わった後に、書籍のタイトルを見直して、
今も、昔も、仕事において大切なことは変わらないのかもしれない。
古いと思っていることが、実はあたらしいことでもある気がしてきた。
本書では、「本を読む」ことについて、次のように書かれている。
本を読むということは、現実逃避ではなく、身の回りのことを改めて考えるということだ。
自分のよく知る人のことを考え、忘れていた人のことを思い出すというだ。
世の中にはわからないことや不条理なことが多々あるけれど、
そういうときは、ただただ、長い時間をかけて考えるしかない。思い出すしかない。
本はその時間を与えてくれる。ぼくたちに不足している語彙や文脈を補い、
それらを暗い闇を照らすランプとして、日々の慌ただしい暮らしのなかで忘れていたことを、
たくさん思い出させてくれる。(本書P112)
本を通して、自分を見つめなおすことができたり、自分のことを少し客観視できた経験がある。
読書が、囚われていた観念や感情から自分を解放するきっかけになったこともある。
読書を通じて、著者と出会い、言葉や思いを交わしたような気持ちになることもある。
「古くてあたらしい仕事」は、
自分自身の仕事や、時間の使い方、人との関わりについて、
改めて見直す機会をくれた一冊だった。
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【いちぶん】
必要なのは、知性ではなく、ノウハウでもなく、長い時間だ。現実に流れる時間とは異なる時間を、自分以外のどこかに求めること。そうすることで生きることはだいぶ楽になる。素晴らしい作品は、いつまでも心の中から消えず、それは内側から生活するものを支える。
(p.193)
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これすごい好きだな。あっという間に読んでしまったけれど、この先何度もふと読み返してしまうと思う。
きっとその度に、その時々の自分の身の回りのことに思いを馳せながら。確かに…本を読むというのがどういう事かを、初めて言葉で認識したような気がする。そして私も読むこと云々の前に、本のあの見た目が、佇まいが好きだな。