商品説明
人を恋うること、愛すること、別れゆくこと……。千年の時を超えてもなお変わらぬ思いを、生き生きとした歌に残した万葉の人々。万葉150首について、その背景や人びとの心の情景を、作家ならではの目で読み解いたエッセイ。
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紙の本
「万葉集」秀歌の散歩(味わい深い鑑賞)にウットリ
2021/01/30 12:44
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:永遠のチャレンジャー - この投稿者のレビュー一覧を見る
巻末の解説(田辺聖子文学館館長、中周子氏(大阪樟蔭女子大学教授)による経緯説明)によれば、本書は、かつて月刊誌に連載された作家田辺聖子の随筆が基になっているらしい。
てっきり本文は大阪弁の文章かと思ったら、なんと全篇、標準語やった。「万葉」秀歌の大真面目な鑑賞本やから、大阪弁遣うのやのうて余所行きの表記になったんやろなぁ、多分。知らんけど…。せやけど、散歩(鑑賞)の味わい深さにウットリさせられるわ。
「古今和歌集」以降の勅撰歌集は、宮中歌合せという公式のお披露目会で職業歌人が詠んだ技巧勝れる歌が多くなるのに、漢字と万葉仮名(借音文字)を用いた「万葉集」はそうではない。
奈良時代に幾人かの編者の手を経て編まれた最古の和歌集「万葉集」には、上は天皇から殿上人の貴族や官人官女、下は西国九州に徴兵された防人(さきもり)、庶民の詠み人知らずや東歌まで、身分に関わらず数多くの歌が収録される。
洗練から遠く優美さに欠ける反面、大らかな表現で素直に己の気持ちを詠んだ詠み人知らずの歌や枕詞序詞を使った歌は、声高に読みあげたくなるほど明るく調子が良い。額田王や柿本人麻呂の情熱的な恋歌や、山上憶良の家族愛が滲む長歌、反歌は、学校で習ったうえに馴染み深いものがある。
「源氏物語」などの王朝文学に精通した田辺聖子らしく、自由奔放な詠み振りの恋の歌に魅せられ、明快な現代語訳でもって詠み人の心情を汲みとり、歌の情景を巧みに再現してみせる。
また、戦中派作家として、国威発揚や忠君精神での国粋主義に利用された戦前の万葉解釈に染まった時代を知る者として、「人間性を解き放つ」「心のよりどころ」として親しんだ「万葉集」への愛着を吐露して止まない。
それ故、田辺聖子が「美しい芸術品」だと「嘆賞のためいき」を洩らした(八頁)という「萬葉百首繪かるた」(万葉百首絵歌留多)の実物写真が、掲載されず仕舞いなのが惜しまれる。
ビジュアルが披露されていたなら、読者の共感はどれほど高まったか知れない。投票で昭和初年に選出された萬葉秀歌百選に画壇お歴々の繪かるたがコラボしたなんて、すこぶる素敵な話だもの、すごく残念だ。
紙の本
万葉散歩
2021/11/22 20:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
令和の出典ともなった万葉集。名前だけしか知らない私でも、田辺聖子さんの優しい語り口で万葉の世界に魅せられました。今と変わらない人の心が感じられてとても良かったです。