読割 50
電子書籍
全身翻訳家
著者 鴻巣友季子
食事をしても子どもと会話しても本を読んでも映画を観ても旅に出かけても、すべて翻訳につながってしまう。翻訳家・鴻巣友季子が、その修業時代から今に至るまでを赤裸々かつ不思議に...
全身翻訳家
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全身翻訳家 (ちくま文庫)
商品説明
食事をしても子どもと会話しても本を読んでも映画を観ても旅に出かけても、すべて翻訳につながってしまう。翻訳家・鴻巣友季子が、その修業時代から今に至るまでを赤裸々かつ不思議に語ったエッセイ集。五感のすべてが、翻訳というフィルターを通して見える世界は、こんなにも深く奇妙でこんなにも楽しい。エッセイ集「やみくも」を大幅改編+増補した決定版。
目次
- 1 言葉が気になる/顔見知り friend & acquaintance/ムズムズする訳 mechanism & apparatus/女が体温を計るとき period/訳せない単位 Kas & Ofr/ジェーン・オースティンの料理法 pride/ぼくを探しに It was missing a piece./なにもないことの恵み gift of nothing/スカーレットと江戸ことば Tomorrow is another day./父の江戸弁 したたき/気っ風のいい略語 ジョンマクとテリマク/我的豆莢 iPod/アンチ・バベルの図書館 long tail & long tale/2 胃袋を満たしてから/臨月のシフォンケーキ/大蛸で世界をめぐる/暴力弁当/迷宮の味/雨の日のトリュフ/味噌の解禁日/巻きたくなってきた/酒は深くて容赦がない/3 足腰を鍛える/翻訳家への長い長い序走/フラヌーズになりそこねた夜/スキーをする私/カヌーイストの夏/愛しの下高井戸シネマ/父が教えてくれたこと/単純力と読書/この本を丸ごと訳したい/ジュディ・アボットの愛読書/4 道草を食う/イパネマの娘/猫を借りる/空から見る世界/レムールの午後/ヤマダさんの煙草/間違い電話/ジンジャブッカク/おひとりさまごっこ/ボレロ夢想/カブミ/横暴な偶然/テセウスの指輪/老婆 ボードレールに/翻訳家、穴に落ちる/5 さあ仕事をしよう/翻訳者気質/翻訳の魔宮へ/新訳は名作の証し 愛ちゃんとアリスのあいだ/他者のことばを生きる/たがいの物語を聴く/六万時間の孤独/「つかまれる」感覚/チャドリの奥の黒い双眸/仕事場への遠い道のり/ピアノは鼻で弾く/真夜中のしめきり/雨に想う人/文庫版あとがき/解説 「ヴー」から「ぬか漬け」まで 穂村 弘
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紙の本
名翻訳家の名エッセイ集
2011/09/23 21:11
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Yosh - この投稿者のレビュー一覧を見る
『嵐が丘』『灯台へ』の新訳等で知られる鴻巣友季子氏のエッセイ集。2007年刊『やみくも』(筑摩書房)に加筆・訂正し、多数のエッセイを追加収録した<リミックス>版。
一般読書人には余り知られていなかったであろう「Mainichi Weekly」連載エッセイ(毎日新聞さん、御免なさい!)も熟読玩味していた自称鴻巣ファンからすると、この半・新刊は美味しいエキスが充満した(自称他称)読書通が舌なめずりする一冊である。
まず、文章が上手い。これ見よがしの技巧過多のそれではなく、日夜横文字を縦文字にすることに腐心されていることで到達されたであろう、くどくなくサラっと読めてスッと頭に入ってくる達意の文体で書かれている。一例を挙げると、『真夜中のしめきり』中、娘さんが通っている保育園の「連絡ノート」を書く件:先日は、「お風呂で子どもが急に『ママ、お顔が汚れているからふいてあげるね』と言って、タオルでごしごしやってくれました。ただ、それは汚れではなく肌のシミだったのです…」という自虐ネタを書いたのに、先生から反応のコメントがなく、密かに傷ついた(『真夜中のしめきり』)。こういう文章は書けそうで書けない。今谷崎が生きていたら「新文章読本」に引用するんじゃないかと思える程。
次にネタが豊富。勿論翻訳に絡む話題は多いが、それだけにとどまらず、日常生活や食べ物・お酒等々、身辺雑記として池波正太郎や向田邦子に充分肩を並べる多彩さとそれに見合ったクオィリティの高さに唸る(左党の筆者は、幾つかのエッセイでもう喉が鳴ってたまらなかった)。
この面白さは実際読んでいただくしかないのだが、筆者が最も共鳴した作品を二つ挙げておく。一つは『なにもないことの恵み』--子どもを持つ親からすると、最後の4行に涙がこぼれそうになった。もう一つは『他者のことばを生きる』--翻訳家としての決意と矜持がさりげなく、されど明確に示されている。
ああ、自分ももっと言葉を磨かねば!
電子書籍
翻訳家
2023/08/20 01:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
四六時中、翻訳家は翻訳のことで頭を満たしてるんですね~それが、意外というか。いろいろと、楽しいエピソードもお書きになっていますけど、中には一般人には、えー、と叫ぶようなところも。