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迫るアジア どうする日本の研究者 理系白書3
著者 毎日新聞科学環境部
転落した科学技術国家・日本のこれからの戦略。弱いニッポンの再生法ーー2006年、中国人研究者の発表論文数は、米国に次いで世界2位となった。引用された論文数や引用回数では、...
迫るアジア どうする日本の研究者 理系白書3
商品説明
転落した科学技術国家・日本のこれからの戦略。弱いニッポンの再生法ーー2006年、中国人研究者の発表論文数は、米国に次いで世界2位となった。引用された論文数や引用回数では、まだ日本が多いものの、理学分野では、抜かれるのも時間の問題だ。工学分野においても、韓国をはじめとする電機メーカーに、シェアで抜かれている。日本人研究者は、いま何をすべきなのか?
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紙の本
科学技術政策の担当者に届いてほしい本
2011/09/02 21:29
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎日新聞の科学環境部は、ほかの新聞社の科学部とくらべて、扱う話題が果たして科学的な話題かどうかという点に、いい意味でこだわりが強い印象がある。だから読んでいて、面白い。
その毎日新聞・科学部所属の記者が「理系白書」という名の本をシリーズで出している。これは3冊目だ。新聞社らしく、根本に横たわる問題を次々にえぐり出す。
書名の通り、アジアに追い上げられ、危うい日本の科学技術というのがテーマだ。本書が書かれた頃は、日本人のノーベル賞受賞者が相次ぎ、山中伸弥教授らによってiPS細胞が発見されるなど、日本の底力に歓喜の声がわき上がっていたのだから、冷静に足もとの危うさを指摘する着眼点のよさが感じられる。
山中教授の偉業は、欧米で特許を取得するなど、このところ続々と海外で認められている。その背景事情から説き起こしているので、けっこうためになる。うまくいく可能性がはっきりしないのに、この研究に乗り出した動機など、異分野の者にも、考えさせるものがある。
本書の執筆時点では「今後のiPS細胞の特許をめぐる競争の行方は、なお予断を許さない状況だ」(p.41)とあるが、2011年の夏に晴れて、欧米で主要特許の取得に成功している。
ただし、第2章以降は、タイトルを見ただけで元気を失ってしまう。
第2章 「日本を猛追するアジア」
第3章 「人材を生かさない日本」
第4章 「進む道を見失った日本の戦略」
第5章 「日本は反撃できるのか」
第6章 「これからの日本のものづくり」
P.69にあるアジアのノーベル賞受賞者一覧(自然科学分野)では、日本が13人と他国を大きく引き離している。中国2人、インド1人、パキスタン1人というのが実情だ。ただ、受賞対象となる研究は、数十年前のものだったりするので、国を挙げてノーベル賞獲得を目指している韓国や、バイオ研究で有力な研究者を世界から集めているシンガポールなどに、もしかしたらいつか追い越されてしまうのかも知れない。その心配はたしかにある。
こうした日本の理系研究者のおかれた厳しい状況は、はなはだ心許ないし、こうした本の出版が、日本政府の方針を変えさせたりすることにつながればいいなと思う。
とはいえ、本書は2009年1月に刊行された本だから仕方ないとは思いつつ、2011.3.11の地震と津波、原発災害で弱っている日本人が読むには、ちょっとつらいものがあるというのが偽らざる心境だ。
震災から立ち直るまでは、明るい前向きなニュースが読みたいです。毎日新聞さんお願いします。ぺこり。